概要
多くは右室流出路起源であり、稀に左室流出路や、左冠尖、肺動脈起源などがある。以下の機序が知られている。
①アデノシン感受性心室頻拍(adenosine sensitive VT)
運動誘発性のものと,反復性で数拍の洞調律を挟んで一日中頻拍を繰り返すものとがある.多くは右室流出路起源であり,左室起源のものは10%程度といわれている.cAMPの関与する激発活動とされている.アデノシン,ATP,ベラパミルで停止する.電気生理学的検査では,刺激で誘発,停止が可能であり,entrainment現象を認めない
②プロプラノロール感受性心室頻拍(propranolol sensitive VT)
右室,稀に左室起源であり,カテコラミン誘発性自動能が機序である.VTはベラパミルで停止せず,ときにアデノシン,ATPで抑制され,イソプロテレノール投与,運動で誘発される.電気生理学的検査では,刺激で誘発も停止もされず,entrainment現象を認めない.突然死は比較的少ないが、稀に流出路型心室期外収縮を契機に心室細動が誘発される例が報告されている。薬物治療やカテーテル治療の適応となる。
病因
流出路に残存した自動能をもった心筋が発生原因と考えられる。
疫学
正確な発生頻度は不明である。学童心臓検診では0.002%心室頻拍が発見されるが、このほとんどは流出路型心室頻拍と考えられる。
臨床症状
動悸がほとんどである。運動に伴うものでは、運動中もしくは運動後に動悸を訴える。
診断
【心電図】
心電図では左脚ブロック,下方軸型VTが90%であり,右脚ブロックVTも10%存在する.
治療
頻拍の停止:血行動態が破綻している場合には、まずDCショックを行い、直ちに小児2次救命処置(PALS:pediatric advanced life support)に基づいた救命処置を開始する。
血行動態が不安定でなければ解離速度の速いNa チャネル遮断薬(fast drug)(リドカインやメキシレチンなど)を静注する。有効であれば点滴静注を持続する。
頻拍の予防
1)β遮断薬やCaチャネル遮断薬を投与するが,Na チャネル遮断薬(ジソピラミド,プロカインアミド,フレカイニドも有効な事が多い。
2)運動時や交感神経緊張時に出現するものはβ遮断薬やCaチャネル遮断薬を投与する。
3)カテーテルアブレーションは個々の症例について適応を考慮するが,単形性持続性心室頻拍はカテーテルアブレーションの治療成績,安全性が飛躍的に向上しているため,多くの症例で治療の第一選択と考えられる。
カテーテルアブレーションの適応
推奨のクラスI:
1.症状を有する特発性心室頻拍で薬物治療が無効または副作用のため使用不能または患者が服薬を望まない場合。
2.植込み型除細動器植込み後に除細動通電が頻回に作動し,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な心室頻拍
推奨のクラスIIa:
1.症状を有する基礎心疾患に伴う単形性持続性心室頻拍
2.クラスIと考えられる乳幼児症例
予後
突然死は比較的少ないが、稀に流出路型心室期外収縮を契機に心室細動が誘発される例が報告されている。
参考文献
1. 長嶋正實他.小児不整脈改訂2版. 診断と治療社2011
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会