概念・定義
発生初期の膵組織に類似し、小児期に好発する分化方向不明な上皮性膵腫瘍である。
疫学
10歳以下、平均4歳程度に好発する。稀に成人例も報告されている。男女比は1.3:1とやや男児に多い。また、小児がん学会全数把握事業の集計結果によると、2009年では全小児がん2095例中2例、2010年では2065例中2例、2011年では1802例中5例と極めて稀である。
症状
特異的な症状は無く、腹部腫瘤として気づかれることが多い。その他、腹痛、体重減少、下痢などを契機に発見されることもある。
診断
切除あるいは生検された検体の病理学的検索により診断される。
組織学的には幅の広い線維性結合組織で区切られ、不規則な胞巣状構造を呈する。腫瘍細胞は小さな腺腔を形成しながら腺房類似の組織構築を呈するものと、明らかな分化傾向を示さない充実性胞巣を形成するものとが認められる。扁平上皮様小体といわれる、扁平上皮類似の腫瘍細胞の小集団も認められる。また、稀に、軟骨や類骨組織を伴う。
治療
外科的全摘出が治療の第一選択となる。切除困難な症例や遠隔転移症例に対しては、化学療法や放射線療法が施行される。今までの報告では、cicplatinとdoxorubicinを含む多剤併用療法が効果的であったとするものが多い。しかし、その有効性は確立されたものではなく、各施設の判断のもとに施行されている。
予後
限局性の切除可能例の5年生存率は65%、切除不能例では0%であったとの報告がある。完全切除後でも18%は局所再発、26%は異時性転移をきたすとされる。
参考文献
小児腫瘍組織カラーアトラス 第5巻 肝臓・胆嚢・膵臓腫瘍(第1版). 日本病理学会小児腫瘍組織分類委員会 編集. 金原出版. 2010年
Morohoshi T, Hruban RH, et al. Pancreatoblastoma. In: Bosman FT, Carneiro F, Hruban RH, Theise ND (eds). World Health Organization Classification of Tumours: Pathology and Genetics of Tumours of the Digestive System. IARC Press: Lyon, France, 2010, pp 319-321.
信川文誠, 高瀬優, 他. 腺房細胞腫瘍/膵芽腫. 肝胆膵. 62(1): 101-107, 2011
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会