診断方法
個体のエネルギー収支に関わらず、脂肪組織が全身性または局所性に減少・消失する疾患で、下記に分類される。
1 全身性脂肪萎縮症
- (1) 先天性全身性脂肪萎縮症(Berardinelli-Seip 症候群) 生下時より全身性の脂肪組織消失と肝腫大が認められ、10歳前後でインスリン抵抗性による糖尿病が顕在化し、しばしば黒色表皮腫が認められる。臨床的には、大基準3つ、または大基準2つと小基準2つ以上を持つ場合に極めて疑わしい。
大基準
- 体幹、四肢、顔面に及ぶ脂肪萎縮. 出生時から認められる。一部の患者では生下時には顔面は正常で、生後数か月の間に明らかになる。アスリートのような印象をあたえ、特に骨格筋の肥大があると目立つ。
- 先端巨大症様の特徴 過成長、筋肥大、骨年齢の進行、上顎前突、著明な眼窩上隆起、手足の肥大、陰核肥大、男子外陰部の肥大。
- 肝腫大 初期には脂肪肝により、末期には肝硬変による。
- 血中中性脂肪の増加 8000 mg/dLに及ぶこともあり、ときに高コレステロール血症を伴う。
- インスリン抵抗性 血中インスリン、Cペプチドの増加は乳児期からおこることもある。臨床的に明らかな糖尿病は10歳以降におこり、早期から外陰部、頸部、腋下に黒色表皮腫をともない、時に疣贅様となる。
小基準
- 肥大型心筋症 乳児期から認めるときも、以後に現れることもある。
- 発達遅滞または軽度 (IQ 50-70)から中等度の (IQ 35-50) 知能低下. BSCL2遺伝子異常を持つ者のおよそ80%は軽度から中等度の発達遅滞をともなうが、AGPAT2遺伝子異常をもつものでは10%に過ぎない。
- 多毛 前頭、後頭の毛髪線低位をきたし、ホルモン状態と関連しない。
- 女児の思春期早発 患者75人のうち女児3人に7歳未満の思春期が認められた。
- 骨嚢胞 8%-20%の患者にみられ、X線上多のう胞様である。長管骨の骨端部、骨幹端部にあり、10歳以降に主としてAGPAT2変異を持つ患者に発症する。
- 静脈怒張 皮下脂肪がないために上下肢に顕著にみられる。
遺伝子診断により、既知の遺伝子異常(AGPAT2(1-acyl-sn-glycerol 3-phosphate O-acyltransferase 2)遺伝子、セイピン(BSCL2)遺伝子、カベオリン1 (CAV1)遺伝子およびPTRF(Polymerase I and transcript release factor)遺伝子)を同定することでも確定診断できる。
- (2) 後天性全身性脂肪萎縮症(Lawrence 症候群) 小児期から思春期に発症する。若年性皮膚筋炎や若年性関節リウマチ、橋本病などの自己免疫性疾患に合併し、自己免疫の素因を持ち、後天性に発症する場合には診断を強く示唆する。
2 部分的脂肪萎縮症
身体の一部の脂肪萎縮をみる。先天性と後天性がある。
治療で補充療法、機能抑制療法その他薬物療法のいずれか1つ以上を行っている場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児内分泌学会