概要
病因
疫学
全てのSCIDが4万−7.5万人に1人の頻度で発生するが、ADA欠損症は全SCIDの約15%を占め、X-SCIDに次いで二番目に多い疾患である。また、常染色体性劣性型のSCIDのうち約1/3を占める
臨床症状
臨床的には他の原因のSCIDと区別は難しく、あらゆる病原体に対して易感染性を呈する。肺炎(特にニューモシスチス、サイトメガロ、真菌など注意)、体重増加不良などで発症する事が多い。著明なリンパ球減少(<500/μl)を認め、全てのリンパ球サブセットの著減を認める(T-B-NK-)。多くは生後間もなく発症するが、まれに遅れて免疫不全を呈する亜型も存在する
治療
他のタイプのSCIDと同様、合併している感染症に対する濃厚な治療とともに早急に根治的治療である造血幹細胞移植を実施する必要がある。時間的余裕がないため、ドナーとの調整が必須である骨髄バンクは現実的ではない。血縁者からまたは臍帯血移植が選択される。本疾患のユニークな治療としてポリエチレングリコール(PEG)-ADA酵素補充療法があげられる。週1−2回の筋注によって比較的安全で有効な治療効果が得られるが、経済的な負担が大きい。また、ADA欠損症は、人に対して初めて遺伝子治療が実施された疾患である。世界では既に40例以上に実施されている
合併症
約半数の症例で肋軟骨、椎体、腸骨稜など骨の異常を認め、発達の遅れや難聴、けいれんなどの神経症状を呈する事もある。遅発型では好酸球増多や高IgE血症を伴う喘息やアトピー性皮膚炎、甲状腺機能低下症、血小板減少症、溶血性貧血、糖尿病を併発することもある
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本免疫不全症研究会