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乳児両側線条体壊死

にゅうじりょうそくせんじょうたいえし

infantile bilateral striatal necrosis; IBSN

告示

番号:64

疾病名:乳児両側線条体壊死

概念

乳幼児期に発症、錐体外路症状を主とする神経症状を生じ、両側線条体の変性・壊死を特徴とする疾患群。ウイルスやマイコプラズマの感染に伴い急性に発症するタイプと、遺伝性疾患に基づき亜急性ないし慢性に進行するタイプがある。ここでは小児慢性疾患の対象となる後者について述べる。

病因

種々の原因遺伝子が見いだされてきた。ミトコンドリア呼吸鎖に関係するミトコンドリアないし核の遺伝子異常によることが多いが、核膜孔複合体蛋白をコードする遺伝子(nup62)の異常や、サイアミントランスポーター2遺伝子(SLC19A3)の異常も原因となる。最近、Aicardi-Goutiéres症候群の原因遺伝子(ADAR1)の異常でも本症を生じることが報告された。原因遺伝子により、ミトコンドリア性または常染色体劣性の遺伝性を示す。

神経病理

両側尾状核及び被殻、時に淡蒼球に、神経細胞脱落、壊死、グリオーシスを認める。病変が左右対称性であることを特徴とする。上記以外の部位には原則として病変を認めない

症状

乳幼児期に、発達の停止・退行、ジストニア・コレアなどの不随意運動、痙性麻痺、嚥下障害、体重増加不良などを、亜急性ないし慢性進行性に生じる。眼球運動異常、眼振、視神経萎縮を伴うこともある。しばしば感染症を契機に発症ないし増悪する

検査所見

頭部画像にて、両側尾状核及び被殻、時に淡蒼球に、左右対称性の病変を認める。CTにて低吸収域、MRIではT1強調像で低信号域、T2強調像で高信号域を示す

診断

頭部画像所見より診断する。上記に挙げた原因疾患の診断が重要である。鑑別診断として、両側基底核の障害される疾患が挙げられる。ハンチントン病、ウイルソン病、有機酸代謝異常症などの代謝変性疾患の他に、低酸素性虚血性脳症、急性散在性脳脊髄炎を含む脳炎、一酸化炭素などの中毒、血管炎がある

治療

原因疾患により異なる。サイアミントランスポーター2異常症は、biotin-(thiamine-) responsive basal ganglia disease (BBGD)と呼ばれ、ビオチン大量療法 (原著では5-10mg/kg/day、最近の論文では2-3mg/kg/day)とビタミンB1大量療法 (100-300mg/day)の併用が著効を示す。従って、乳児両側線条体壊死の患者を診療した場合には、まず両者の投与を開始し、併行して原因疾患の診断を進めていく。またミトコンドリア異常症を想定して、ビタミンB1に加え、コエンザイムQ10、ビタミンC、ビタミンB2、カルニチンなどの投与も検討する

予後

BBGDは上記の治療により著明に改善する。ただし治療の中止により再燃するので継続投与を要する。その他の原因疾患の場合には一般に神経学的予後は不良である

:バージョン1.0
承認日
文責
:日本小児神経学会