1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 難治てんかん脳症
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レノックス・ガストー(Lennox-Gastaut)症候群

れのっくす・がすとーしょうこうぐん

Lennox-Gastaut syndrome

告示

番号:62

疾病名:レノックス・ガストー症候群

概念・定義

2種類以上の短い全般発作と、脳波で3Hzより遅い広汎性緩徐性棘徐波と睡眠時の全般性速波律動(rapid rhythm、国際的にはburst of fast rhythm generalized paroxysmal fast activity)を示すてんかん症候群で、発作は極めて難治であり(長期の発作抑制は約5%)、知的障害がほぼ100%となるてんかん性脳症である。国際抗てんかん連名(ILAE)の1989年分類では、潜因性または症候性全般てんかんに分類されている。おもに幼児期(1~8歳、ピークは3~5歳)に発症あるいは他のてんかん症候群(特にWest症候群)から変容する。2歳以前の発症も20%はあるが、10歳以降の発症は極めてまれである。生涯に50~75%の例でけいれん性あるいは非けいれん性のてんかん重積を経験し、しばしば精神運動退行を示す。

疫学

発作はほぼ止まらないので(長期抑制は約5%)、60歳まで続くと仮定し、岡山県の小児てんかんの調査におけるLGSの有病率と2010年の国勢調査より、この有病率が20歳以降にも当てはまると仮定すると、60歳未満で約2500人、20歳未満で約650人と推定される

病因

脳の異常(形成異常、新生児仮死による脳障害など)や、発症前に発達遅滞や他のてんかん(West症候群など)があり、Lennox-Gastaut症候群(LGS)の原因が明らかか推定される場合を症候性LGS、発症前に発達遅滞もなく、原因も推定されない場合を潜因性LGSと呼ぶが、症候性が70~75%、潜因性が25~30%である。両者は発作予後に関しては差はないとされているが、最も多いWest症候群から変容した例(17~41%)は、早期発症で、強直発作が優位で発作も多く、予後が特に不良である。症候性West症候群からの変容がほとんどで、潜因性West症候群からの変容はまれである。前頭葉てんかんその他のてんかんからの変容もある

症状

発作は複数の短い全般発作を示し、強直発作(74~95%、特に短い強直発作)、脱力発作(14~36%)、非定型欠神発作(75~100%)が主要であるが、ミオクロニー発作(4~28%)、全身性強直間代発作(15%前後)、部分発作(5%)を伴うこともある。睡眠時の強直発作はほぼ必発である。強直発作の一部、脱力発作、ミオクロニー脱力発作、ミオクロニー発作はいずれも転倒するが、臨床的観察だけでは区別が困難であり、これらをひとまとめにしてdrop attackと呼ぶことがある。生涯に50~75%の例でけいれん性あるいは非けいれん性のてんかん重積(反復する短い強直発作、非定型欠神発作重積、spike-wave stuporなど)を経験し、しばしば精神運動退行が起る。100%知的障害が起り、しかも重度となることが多い

診断

全般発作が2種類以上あることと、脳波で覚醒時あるいは睡眠時に3Hzより遅い(多くは1.5~2.5Hz)広汎性緩徐性棘徐波と睡眠時の全般性速波律動(rapid rhythm、国際的にはburst of fast rhythm、generalized paroxysmal fast activity)を示すことが必須である。広汎性緩徐性棘徐波は90%は前頭部優位である。治療により広汎性緩徐性棘徐波は見られなくなることがあるが、rapid rhythmは治療によってもほとんど消えない。ただし、rapid rhythm様の発作波は前頭葉てんかんなどの部分てんかんでも認められ、必ずしもLGSに特異的ではないとされる。
本症の診断のためには、発作間歇期脳波が必須である。しかし、非定型欠神発作、睡眠時の軽い強直発作の検出にはポリグラフで長時間脳波モニタリング(ビデオ脳波が望ましい)を行う必要がある。症候性か潜因性かの診断のためには、病歴(特にWest症候群の既往)と頭部MRIが重要である。基礎疾患の鑑別には、さらに、皮膚を始めとする身体所見確認、代謝異常検査、染色体検査などを行う

鑑別診断

複数の全般発作と全般性緩徐性棘徐波を示すものが対象となり、ミオクロニー失立発作てんかん(MAE)、徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん(CSWS)、非定型良性部分てんかん(ABPE)、前頭葉てんかんの一部がある。乳児重症ミオクロニーてんかんを鑑別に挙げる意見も多いが、病歴がLGSとは全く違い、乳児期に発症し、頻回の有熱性・無熱性けいれん重積・群発を繰り返しながら乳児期には脳波で発作波がなく、発達の遅れもないという特徴的な経過があるので、LGSの鑑別の対象にはならない。最も重要な鑑別点は、MAE:脳波で睡眠時のrapid rhythmがない、 CSWS:強直発作、rapid rhythmがなく、CSWSは終夜ポリグラフではspike-wave indexが85%以上と定義されるがLGSでは70%未満である、 ABPE:悪化時には全般性棘徐波はあるが前頭葉よりローランド領域優位であり、強直発作、rapid rhythmがない、 前頭葉てんかん:脳波は前頭葉優位、特にFz優位であり、また全般性棘徐波以外の部分でFzを含む前頭部の局在性発作波が頻発する

治療

複数の発作型があり、かつ難治なため、単剤で止まることはなく、多剤併用になる。強直発作、強直間代発作、非定型欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作などの各発作型に対して有効とされる薬剤を選択して個々の薬を十分に使用し、また抗てんかん薬の相互作用や作用機序、副作用を考慮した合理的な多剤併用が必要となる。最近、LGSの強直転倒、脱力発作に対して有効とされるルフィナミドが使用可能になった。経口抗けいれん剤が無効な場合、ACTHやケトン食が有効な場合もある。
強直転倒、脱力転倒発作は抗てんかん薬に非常に難治であり、脳梁離断術が有効である。80-90%の例で脱力転倒発作が抑制される。ただし、他の発作症状は変わらないことが多い。迷走神経刺激は発作を50%以上減少させ、また認知機能の改善にも有効であるとされる。切除手術は例外的である

予後

発作消失10~20%、知的障害90~98%とされる。知的障害は症候性LGSでは100%、潜因性では95%という報告もある。発作予後、知能予後ともに、恒久的なLGSを示すものは不良だが、一過性のLGSを示すものは比較的良好であり、また発作症状によっても異なる。 わが国で大部分を成人まで追跡した長期予後の報告では、けいれんの完全抑制は5%前後、知的障害は90%以上、普通就労は10%前後、社会生活の自立は少数である。長期的には、特徴的な臨床症状および脳波所見が存続するのは1/3で、他は治療により脳波所見と発作型は変容し、発作頻度が減少する。死亡率は3~7%とされ、多くは強直発作の重積に起因するといわれている

参考文献

文献は多数にわたるので、主な総説のみとする。
1. Beaumanoir A, et al: The Lennox-Gastaut syndrome. In: Roger J, et al, eds. Epileptic syndromes in infancy, childhood and adolescence, 4th ed. John Libbey Eurotext, Montroge, 2005: 125-148
2. Genton P, et al: Lennox-Gastaut syndrome. In: Engel J, et al, eds. Epilepsy: a comprehensive textbook, 2nd ed. Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2008: 2417-2427
3. Winesett SP, et al: Encephalopathic generalized epilepsy and Lennox-Gastaut syndrome. In: Wyllie E, et al, eds. Wyllie’s treatment of epilepsy: Principles and practice, 5th ed. Wolters Kluwer/Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2011.: 281-293
4. Morita DA, et al: Lennox-Gastaut and related syndromes. In: Duchowny M, et al: Pediatric epilepsy. McGraw Hill, New York, 2013: 213-222

:バージョン1.0
承認日
文責
:日本小児神経学会