1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 筋ジストロフィー
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41から47に掲げるもののほか、筋ジストロフィー

そのたきんじすとろふぃー

Muscular dystrophy

告示

番号:17

疾病名:10から16までに掲げるもののほか、筋ジストロフィー

概念・定義

筋強直(ミオトニー)と筋力低下を主症状とする疾患である.発症時期は新生児期から成人期まで幅広い.骨格筋症状以外に多臓器の症状を合併しうる全身性疾患である.1型(DM1)と2型(DM2)が存在するが日本ではほとんどがDM1である.

病因

DM1は常染色体優性遺伝をとる.病因遺伝子はDMPKであり,その遺伝子の3'側非翻訳領域にあるCTG繰り返し配列が増加しており,triplet repeat 病の一つである.健常人ではこのCTGの繰り返し配列は30回未満であるが,患者では50~2000回程度に延長している.この繰り返しの数と臨床症状は相関し,成人型<小児型<先天型と繰り返し数の延長傾向を認める.世代を経るに従ってこの繰り返しの数が増加し,症状は重くなる傾向にあり,これを表現促進(anticipation)とよぶ.

疫学

アイルランドにおける検討で10万あたり6.75と報告されている.希少疾病ではあるものの筋疾患の中では頻度は高く、日本では約10000名程度と推測されている.

臨床症状

発症時期の違いによって成人型,小児型,先天型に分類される.
先天型は疾患を有する母(まれに父)から生まれ,新生児期から重度の筋力低下,筋緊張低下,哺乳障害、顔面筋罹患を認め,呼吸障害を伴い人工呼吸管理が必要な例や生後まもなく死亡する例も少なくない.逆V字型口唇,嚥下障害,股関節脱臼,関節拘縮,横隔膜麻痺などを伴うことも多い.先天型では経過とともに筋力,筋緊張は改善し,人工呼吸器からの離脱が可能となり,歩行が可能となる例も多い.幼児期以降は知的障害が全例で明らかになる.成人以降になると運動機能の低下や呼吸障害を認めるなど成人型の症状を認めるようになる.
小児型は幼児期以降に精神発達遅滞で発症し,知的障害に加えて特徴的な顔貌を認める.先天型,小児型いずれもミオトニーは幼児期には認めず思春期頃に出現する.
成人型は側頭筋や四肢遠位筋優位の筋力低下やミオトニーのほかに多臓器障害を認める疾患で,心病変(心伝導障害,心筋障害),慢性呼吸不全,嚥下障害,認知機能障害などの中枢神経異常,白内障,耐糖能障害,悪性腫瘍などの合併を示す.

検査所見

a. 血清CK(クレアチンキナーゼ)
筋の壊死を反映し、大半の筋ジストロフィーで高値を示すが、本疾患の場合には正常、もしくは軽度上昇を示す.
b. 筋電図
ミオトニー放電を認めるのが特徴である.
c. 画像所見
単純X線像にて横隔膜高位、脳MRIで側脳室拡大、白質病変などを認める場合がある.
d. 筋病理
新生児期には筋の未熟性が目立ち、筋管細胞に類似したperipheral halo像を示す.幼児期以降にはタイプ1線維萎縮や中心核などの所見を示す.
e. 遺伝子解析
DM1の病因遺伝子DMPK、DM2の病因遺伝子CNBP変異をみとめる.

診断の際の留意点

遺伝子診断によって確定診断が得られる場合が大半であるが、本人に加えて家族の情報も同時に得られる場合がある点が、他の検査と大きく異なる特徴である.表現促進現象などによって両親自身には自覚症状が乏しい状態で子が先に診断を受け子の診断を契機に両親の診断に至る場合がある.そのような面からも、遺伝子解析の前には遺伝学と該当する疾患に精通した医師による検査前カウンセリングが重要である.診断後の本人、家族への心理的な面も含むケアも非常に重要である.必要に応じて専門医への紹介も検討する.

治療

根本的治療法は現在までのところ見いだされていない.必要に応じてリハビリテーション、呼吸障害や嚥下障害、心伝導障害、側弯に対する評価、治療を行う.小児発症例では知的障害を伴うことが多く、療育や教育的な視点での対応や助言を行う.疾患の特徴である筋強直現象は治療の対象となることは少ない.

合併症

嚥下障害、慢性呼吸不全、心伝導障害などの心臓機能障害、知的障害、日中過眠などを合併する.成人期には眼瞼下垂・兎眼、白内障・網膜色素変性症、難聴、低酸素血症、睡眠時無呼吸症候群、耐糖能障害・高インスリン血症、高脂血症、骨肥厚、低IgG血症などのより多彩な合併症を呈する.

予後

先天型では新生児期、乳児期に死亡する場合もある.小児期発症例では知的障害が主症状で他の症状が目立たないことも少なくないが、成人期以降になると前述したような多彩な症状が出現するようになる.

成人期以降の注意点

先天型などでいったん獲得した場合でも成人期以降になると運動機能が退行してくる.慢性呼吸不全や心伝導障害、耐糖能異常、悪性腫瘍の合併は主に成人期に生じるので、適切な時期に成人診療科への移行を検討する.

参考文献


  • 斎藤義朗.先天性筋強直性ジストロフィー.小児筋疾患診療ハンドブック.診断と治療社,東京,2009;166-170.
  • Lefter S. A population-based epidemiologic study of adult neuromuscular disease in the Republic of Ireland. Neurology. 2017;88:304-313.
:バージョン1.0
承認日
文責
:日本小児神経学会