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メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー

めろしんけっそんがたせんてんせいきんじすとろふぃー

merosin-deficient congenital muscular dystrophy

告示

番号:16

疾病名:メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー

概念・定義

メロシン欠損型先天性筋ジストロフィーは1994年にToméらにより報告され,欧米に頻度が高く日本では稀である.ラミニンα2鎖をコードするLNMA2遺伝子により,ラミニン211(メロシン)の完全または部分欠損により生じる.非福山型に分類され,知的障害を伴わない先天性筋ジストロフィーである.

病因

ラミニンは基底膜の主要な構成成分で,組織を区分し細胞浸潤を防ぐ役割を担う.α,β,γ鎖から構成される糖蛋白の三量体で,骨格筋に発現するのはα2,β1,γ1鎖からなるラミニン211であり,別名メロシンと呼ばれる.メロシンはα-DGの糖鎖やインテグリンと結合することで基底膜と連結固定している.染色体6q22-q23に存在するラミニンα2鎖をコードするLNMA2遺伝子変異により,メロシンの完全または部分欠損により生じる.変異は点変異が多い.

疫学

欧米では非福山型(古典型)の約半数はメロシン欠損型とされるが,本邦での報告は非常に稀である.

臨床症状

完全欠損型の臨床症状は重症で,出生時よりの哺乳困難,啼泣微弱,著明な筋緊張低下,筋力低下,顔面筋罹患,多関節拘縮,を認める.出生時より呼吸障害はあるが,換気補助を必要とするほどの呼吸障害は,遅れて乳幼児期に発症する.最高運動到達は通常独坐か支え立位で,歩行可能例は少ない.進行性に関節変形,拘縮,側弯が生じる.腱反射は早期に消失する.部分欠損例は発症が遅く,肢帯型筋ジストロフィーに類似した緩徐進行性の筋力低下を示す.心合併症は非常に稀である.約30%の例でてんかんの発症を認め,知能は多くは正常から境界域である.検査所見では著明なCK値上昇(通常の10~150倍)と頭部MRIの白質病変が特徴である.頭部MRIは,生後6カ月以後に白質に広範なT2強調で高信号,T1強調で低信号の領域を認め生涯消えることがなく,脳梁や内包は障害されない.1/3の例に小脳低形成,一部の例では後頭葉に限局して皮質形成異常を認める.
脱髄性の末梢神経障害を生じ,運動神経優位だが感覚神経も障害され,生後6カ月以後に末梢神経伝導速度遅延が認められることが多い.視覚誘発電位や体性感覚誘発電位の遅延も認める.筋病理は様々な程度の壊死再生所見と結合組織増加,時に炎症細胞浸潤を認める.抗ラミニンα2抗体による免疫染色は,筋,皮膚生検において,典型例で完全欠損を示す.LAMA2遺伝子は64のエクソンを有し,明らかなホットスポットもないことから,遺伝子変異の検索は時に難しく,特に部分欠損では困難である.

診断

治療

対症療法が中心である.管理上一番の問題は進行性呼吸障害であり,10歳未満で30%は夜間の呼吸補助が必要となることから,早期からの呼吸モニタリングが必要である.呼吸理学療法,非侵襲的陽圧換気療法,器械的咳介助を必要に応じて導入する.理学療法,進行する関節拘縮,側彎への整形外科的フォローも重要である.時に哺乳障害,体重増加不良に対して,経管栄養,胃瘻造設が必要となる.

予後

緩徐進行性であり,心筋症の合併が少ないため比較的予後は良好である.一方で,呼吸不全により新生児期,乳児期早期に死亡する例もある.

文献

1) Tome FM et al. Congenital muscular dystrophy with merosin deficiency. CR Acad Sci. 317:351-357. 1994
2) Helbling-Leclerc A et al. Mutations in the laminin alpha-2 chain gene (LMNA2) cause merosin-deficient congenital muscular dystrophy. Nature Genet 11:216-218, 1995
3) Philpot J et al. Merosin –deficient congenital muscular dystrophy: the spectrum of brain involvement on magnetic resonance imaging. Neuromusc Disord 9:81-85, 1999
4) Shorer Z et al. Demyelinating peripheral neuropathy in merosin-deficient congenital muscular dystrophy. J. Child Neurol 10:472-475, 1995

:バージョン1.0
承認日
文責
:日本小児神経学会