1. 慢性腎疾患
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慢性腎不全(腎腫瘍によるものに限る。)

まんせいじんふぜん (じんしゅようによるものにかぎる。)

Chronic renal failure due to renal tumour

告示

番号:46

疾病名:慢性腎不全(腎腫瘍によるものに限る。)

疾患概念

腎腫瘍は腎実質から発生する腫瘍であり,腎実質を構成する成分である尿細管や集合管などの上皮から発生する上皮性腫瘍と,平滑筋や脂肪など非上皮性成分から発生する非上皮性腫瘍および上皮性成分と非上皮性成分の混在するその他の腫瘍に分類される。小児にみられる腎腫瘍の約90%は,上皮成分と非上皮成分が混在する腎芽腫(Wilms腫瘍)である。
腫瘍の増大による腎実質の直接的な侵襲のみならず,治療としておこなう腫瘍摘出や腎全摘術,化学療法,放射線療法などの治療が腎機能の喪失や慢性腎不全の原因となる。

わが国で従来から腎芽腫に腎横紋筋肉腫様腫瘍と腎明細胞肉腫を含めて論じられていたが,これらの腫瘍ではその病因 治療,予後とも大きく相違があるため,それぞれ別の腫瘍として取り扱うことになっている。

疫学

腎芽腫(nephroblastoma)はWilms腫瘍 (Wilms tumor)ともよばれ最も頻度の高い腫瘍である。腎芽腫はアメリカでは小児癌で4番目に多く,年間に約500例が診断されている。わが国では年間40~60の登録例があり,実際にはさらに多いと見積もっても,その発生数は日米では大きな差がある。

病因

臨床症状

腹部膨満が最も一般的な臨床症状である。そのほか腹痛や血尿,高血圧等が認められる。腫瘍被膜下出血をきたすと急激な腹部膨満,顔面蒼白(貧血)が出現する。血尿は12~25%にみられる。 内葉性病変(intralobar nephrogenic rest : ILNR)由来の腫瘍では,腎髄質深くに生じた腫瘍が腎孟・腎杯の粘膜に容易に浸潤するので,比較的早期に血尿をきたしやすい。一方,辺葉性(perilobar nephrogenic rest : PLNR)由来の腫瘍では血尿をきたしにくい。高血圧は,腎芽腫の約25%にみられ,レニン活性の高値による。
身体所見では,圧痛を伴わない平滑弾性硬の側腹部腫瘤で,正中線を越えることは少ない。また呼吸性移動はない。破裂をきたさないよう注意が必要である。

検査所見

小児腎腫瘍では,その他の腹部腫瘍との鑑別に画像検査は有用である。画像診断の第一の目的は腎原発の腫瘍の診断を確定することである。画像診断は,病理組織診断確定までの,外科的手術のアプローチや術前化学療法の必要性等,診療方針決定に利用されている。反対側腎の腫瘍や血管内腫瘍進展,肺転移の有無等の重要な情報が画像診断によって得られる。初診時にはまず腹部超音波検査を施行する。ドプラ超音波検査で腎血管,下大静脈への腫瘍進展の有無を確認することが重要である。腹部造影CTは 超音波検査で同定できなかったnephrogenic rests等の検出に有用である。肺転移では,CTが転移巣の同定に有用である。
 一般臨床検査では,特異的な腫瘍マーカーはない。Denys-Drash症候群では蛋白尿に注意が必要である。後天的von Willebrand病が約8%にみられるため凝固系検査も注意が必要である。

診断

血尿,腹痛,腹部膨満,腹部腫瘤などの臨床症状および画像検査所見によって診断を行う。
小児の腎機能評価はCKD診療ガイドラインによる準じる(2)。

治療

わが国では,米国National Wilms Tumor Study Group (NWTS)方式の治療が行わることが多く,原則としてまず腫瘍摘出術を施行し,病期分類と病理診断から得た情報をもとに,リスクに応じた術後化学療法,放射線治療を施行する。
 1996年に,日本Wilms腫瘍研究 (Japan Wilms Tumor Study: JWiTS) グループが発足され,NWTS方式に準じた治療プロトコールが作成されている。
 1996-2005年にJWiTSに登録された腎芽腫症例の全体の5年生存率は91.1%,5年無再発生存率は82.0%と報告されている (3, 4)。病期別では,病期Ⅰ: 90.5%,Ⅱ: 92.2%,Ⅲ: 90.9%,Ⅳ: 86.7%,Ⅴ: 78.7%と報告されており,病期Ⅴ(両側性)は,多くの症例で両側腎摘を余儀なくされ,腎代替療法を要する例も多いことが明らかにされている。

予後

成人期以降の注意点

小児期発症の腎腫瘍としては腎芽腫(Wilms腫瘍)の頻度が高い。本症は,Denys-Drash症候群として,しばしば腎予後不良なびまん性メサンギウム硬化症と合併する。このよう例では,Wilms腫瘍の発症に際して,両側腎摘出術を行っている場合が多く,以後慢性腎不全,腎代替療法を含む長期管理が必要となる。
また,腎の悪性腫瘍は多くの場合,早期に腎摘除術を要し,種々の化学療法,放射線治療を行うことから,これら治療に伴う腎機能の喪失や腎機能障害を生じやすい。
治療が奏功した場合にも,長期にわたり再発に留意しつつ腎不全管理が必要である。

参考文献

1) 越永従道.腎腫瘍:日本小児腎臓病学会(編),小児腎臓病学.pp 366-374, 診断と治療社, 東京, 2012
2) 小児CKDの診断:日本腎臓学会(編), CKD診療ガイドライン2013. pp163-177; 東京医学社, 東京, 2013
3) Oue T, Fukuzawa M, Okita H, et al. Outcome of pediatric renal tumor treated using the Japan Wilms Tumor Study-1 (JWiTS-1) protocol: a report from the JWiTS group. Pediatr Surg Int 25: 923-9, 2009
4) 大植孝治, 福澤 正洋, 大喜多 肇, 他.日本ウィルムス腫瘍スタディグループ-1(JWiTS-1)登録症例の追跡調査報告.小児がん46: 349-358, 2009
:バージョン1.1
更新日
:2015年3月30日
文責
:日本小児腎臓病学会

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