診断の手引き

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成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症(脳の器質的原因によるものを除く。)

せいちょうほるもんぶんぴつふぜんせいていしんちょうしょう (のうのきしつてきげんいんによるものをのぞく。)

Growth hormone deficiency

告示番 号47
疾病名成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症(脳の器質的原因によるものを除く。)
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小児慢性特定疾病における成長ホルモン治療の認定における注意点

小児慢性特定疾病では、対象である要件を満たした場合、以下のものについて成長ホルモン治療への助成を行っている。
詳細は 小児慢性特定疾病における成長ホルモン治療の認定について を参照。

① 成長ホルモン分泌不全性低身長症(脳の器質的原因によるものを除く)及び下垂体機能低下症の場合

→ 身長が -2.5SD 以下*1 の場合でかつ成長ホルモン治療の対象基準を満たす(乳幼児で症候性低血糖がある場合を除いて、
  2種以上の成長ホルモン分泌刺激試験で基準値以下であることが必要)場合


② 成長ホルモン分泌不全性低身長症(脳の器質的原因※による)の場合

→ 身長が -2.0SD 以下 の場合でがつ成長ホルモン治療の対象基準を満たす場合


③ ターナー症候群またはプラダー・ウィリ症候群による低身長の場合

→ 身長が -2.0SD 以下 の場合でがつ成長ホルモン治療の対象基準を満たす場合


④ 軟骨異栄養症による低身長の場合

→ 身長が -3.0SD 以下 の場合である場合


⑤ 腎機能低下による低身長の場合

→ 身長が -2.5SD 以下*1の場合でありかつ、腎機能低下の基準を満たす場合


*1
健康保険の適応は -2.0SD以下であるが、小児慢性特定疾病では -2.5SD以下であるので注意すること
*2
SGA性低身長については、小児慢性特定疾病では助成の対象となっていないので注意すること

診断方法

※以下の基準は医学的に成長ホルモン分泌不全性低身長症を診断する基準であるため、
 小児慢性特定疾病における成長ホルモン治療の助成適応の基準とは異なることに留意すること。

Ⅰ. 主症候

  1. 成長障害があること
    通常は、身体のつりあいはとれていて、身長は標準身長 (註1) の -2.0 SD以下、あるいは身長が正常範囲であっても、成長速度が 2 年以上にわたって標準値 (註2) の -1.5 SD以下であること
  2. 乳幼児で、低身長を認めない場合であっても、成長ホルモン分泌不全が原因と考えられる症候性低血糖がある場合
  3. 頭蓋内器質性疾患 (註3) や他の下垂体ホルモン分泌不全があるとき

Ⅱ. 検査所見

成長ホルモン(GH)分泌刺激試験 (註4) として、インスリン負荷、アルギニン負荷、L-DOPA負荷、クロニジン負荷、グルカゴン負荷、または GHRP-2負荷試験を行い、下記の値が得られること (註5、註6)

インスリン負荷、アルギニン負荷、L-DOPA 負荷、クロニジン負荷、またはグルカゴン負荷試験において、原則として負荷前および負荷後 120 分間(グルカゴン負荷では 180 分間)にわたり、30 分毎に測定した血清(漿)中GH 濃度の頂値が 6 ng/mL 以下であること。
※※
GHRP-2負荷試験で、負荷前および負荷後 60 分にわたり、15 分毎に測定した血清(血漿)GH 頂値が 16 ng/mL 以下であること。

Ⅲ. 参考所見

  1. あきらかな周産期障害がある。
  2. 24 時間あるいは夜間入眠後3~4 時間にわたって20 分毎に測定した血清(血漿)GH 濃度の平均値が正常値に比べ低値である。または、腎機能が正常の場合で、2~3日間測定した 24 時間尿または夜間入眠から翌朝起床までの尿中GH 濃度が正常値に比べ低値である。
  3. 血清(漿)IGF-I値や血清 IGFBP-3 値が正常値に比べ低値である。
  4. 骨年齢 (註7) が暦年齢の 80 %以下である。
判定基準
成長ホルモン分泌不全性低身長症
  1. 主症候が Ⅰ. の 1. を満たし、かつ Ⅱ. の 2 種類以上の分泌刺激試験において、検査所見を満たすもの。
  2. 主症候が Ⅰ. の 2. あるいは、Ⅰ. の 1. と 3. を満たし、Ⅱ. の 1 種類の分泌刺激試験において検査所見を満たすもの。

成長ホルモン分泌不全性低身長症の疑い
  1. 主症候が Ⅰ. の 1. または 2. を満たし、かつ Ⅲ. の参考所見の 4 項目のうち 3 項目以上を満たすもの。
  2. 主症候が Ⅰ. の 1. を満たし、Ⅱ. の 1 種類の分泌刺激試験において検査所見を満たし、かつ Ⅲ. の参考所見のうち 2 項目を満たすもの。
  3. 主症候が Ⅰ. の 1. と 3. を満たし、かつ Ⅲ. の参考所見のうち 2 項目以上を満たすもの。
 
病型分類
成長ホルモン分泌不全性低身長症は、分泌不全の程度により次のように分類する。
重症成長ホルモン分泌不全性低身長症
  1. 主症候が Ⅰ. の 1. を満たし、かつ Ⅱ. の 2 種以上の分泌刺激試験におけるGH 頂値が、すべて 3 ng/mL以下(GHRP-2 負荷試験では10 ng/mL以下)のもの。
  2. 主症候が Ⅰ. の 2. または、Ⅰ. の 1. と 3. を満たし、かつ Ⅱ. の 1 種類の分泌刺激試験における GH 頂値が3 ng/mL以下(GHRP-2 負荷試験では10 ng/mL以下)のもの。
 
中等症成長ホルモン分泌不全性低身長症
「重症成長ホルモン分泌不全性低身長症」を除く成長ホルモン分泌不全性低身長症のうち、 全てのGH 頂値が 6 ng/mL 以下(GHRP-2 負荷試験では 16 ng/mL 以下)のもの。

軽症成長ホルモン分泌不全性低身長症 (註8)
成長ホルモン分泌不全性低身長症のうち、「重症成長ホルモン分泌不全性低身長症」と「中等症成長ホルモン分泌不全性低身長症」を除いたもの。
註1.
横断的資料に基づく日本人小児の性別・年齢別平均身長と標準偏差値を用いること。
註2.
縦断的資料に基づく日本人小児の性別・年齢別標準成長率と標準偏差値を用いること。
ただし、男児 11 歳以上、女児 9 歳以上では暦年齢を骨年齢に置き換えて判読すること。
註3.
頭蓋部の照射治療歴、頭蓋内の器質的障害、あるいは画像検査の異常所見(下垂体低形成、細いか見えない下垂体柄、偽後葉)が認められ、それらにより視床下部下垂体機能障害の合併が強く示唆された場合。
註4.
正常者でも偽性低反応を示すことがあるので、確診のためには通常 2 種以上の分泌刺激試験を必要とする。
但し、乳幼児で頻回の症候性低血糖発作のため、早急に成長ホルモン治療が必要と判断される場合等では、この限りでない。
註5.
次のような状態においては、成長ホルモン分泌が低反応を示すことがあるので、注意すること。
  • 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンによる適切な補充療法中に検査する。
  • 中枢性尿崩症:DDAVP による治療中に検査する。
  • 成長ホルモン分泌に影響を与える薬物(副腎皮質ホルモンなど)投与中:可能な限り投薬を中止して検査する。
  • 慢性的精神抑圧状態(愛情遮断症候群など):精神環境改善などの原因除去後に検査する。
  • 肥満:体重コントロール後に検査する。
註6.
現在の GH 測定キットはリコンビナント GH に準拠した標準品を用いている。
キットにより GH 値が異なるため、成長科学協会のキット毎の補正式で補正した GH 値で判定する。
註7.
Tanner-Whitehouse-2(TW2) に基づいた日本人標準骨年齢を用いることが望ましいが、Greulich & Pyle 法、TW2 原法または CASMAS(Computer Aided Skeletal Maturity Assessment System)法でもよい。
註8.
諸外国では、非GH 分泌不全性低身長症として扱う場合もある。
附1.
診断名は、1993 年改訂前は下垂体性小人症。ICD-10 では、下垂体性低身長または成長ホルモン欠損症となっている。
附2.
遺伝性成長ホルモン分泌不全症(type ⅠA, ⅠB, type Ⅱ など)は、家族歴有り、早期からの著明な低身長( -3 SD以下)、GHRH 負荷試験を含む GH 分泌刺激試験で、GH 値の著明な低反応、血中IGF-I、IGFBP-3 値の著明な低値などを示す。遺伝子診断により確定診断される。
附3.
新生児・乳児早期には、分泌刺激試験の頂値が 6 ng/mL(GHRP-2 負荷試験では 16 ng/mL)を越えていても、成長ホルモン分泌不全を否定できない。

当該事業における対象基準

治療で補充療法、機能抑制療法その他の薬物療法を行っている場合。ただし、成長ホルモン治療を行う場合には、当該事業が定める基準を満たすものに限る。

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本小児内分泌学会
成長ホルモン療法の助成に関して
低身長を認め成長ホルモン治療の対象基準を満たす場合は、小慢による成長ホルモン治療助成の対象となります。
成長ホルモン療法の助成に関しては下記を参照してください。
成長ホルモン療法の助成に関して
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