診断の手引き

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総肺静脈還流異常症

そうはいじょうみゃくかんりゅういじょうしょう

Total anomalous pulmonary venous connection

告示番 号76
疾病名総肺静脈還流異常症
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診断方法

【症状・臨床所見】
出生時よりチアノーゼを認める。肺静脈狭窄が早期から出現する場合には、肺うっ血に伴う重度のチアノーゼと多呼吸を認め、生後早期に死亡すること例が多い。肺静脈狭窄を伴わない場合にも、生後1ヵ月頃には多呼吸、哺乳力低下、体重増加不良が出現する。聴診上はII音の亢進以外に軽度の収縮期雑音を聴取するのみで、チアノーゼの軽い例では、多呼吸、体重増加不良のみで発見が遅れることがある。

【胸部X線】
肺静脈狭窄を伴わない場合は、肺血流増加に伴う肺血管陰影の増強と第2弓の突出,右房と右室の拡大を認める.肺静脈が無名静脈に還流する場合、垂直静脈が拡大し雪ダルマ状(snowmansign)となるが, この所見は生後数ヵ月以降に認められる。また,肺静脈が上大静脈に還流する場合、上大静脈部分の突出を認める.肺静脈閉塞の強い場合には,心拡大は伴わずに肺うっ血が著明となり,肺野はびまん性のスリガラス状陰影となる.症状の悪化に伴い,心陰影は次第に不鮮明となる。

【心電図】
右房・右室負荷を示す

【心エコー図】
心エコーでは、1)右心系の著明な容量負荷および肺静脈狭窄を伴う場合は圧負荷、2)左房後方の異常共通肺静脈腔、3)異常肺静脈腔の体静脈または右房への流入の3点を認める。また、肺静脈狭窄を有する場合には心エコーで同定可能であり、肺うっ血に伴い肺高血圧の所見を認める。コントラストエコー法は、血行動態を示す上で有用で、1)末梢から注入したコントラストが右房→左房 →左室の順に流入する、2)異常肺静脈腔にはコントラストが入らない、の2つの所見が特徴である。

【心臓カテーテル・造影所見】
最近では、本症に対してカテーテル検査なしで手術が行われることも多く手術成績も向上している。心臓カテーテルの所見では肺静脈の還流部位で酸素飽和度の上昇を認める。右房内では肺静脈血と体静脈血は混和されており、心内各部位の酸素飽和度はほぼ均一である。右室圧は,心房間交通と肺静脈閉塞の程度により,ほぼ正常圧の例から左室圧を凌駕する例まで様々である。肺静脈閉塞の著明な例では、右室圧が左室圧以上になることがあるが、大きな動脈管があると減圧され等圧以上にはならない。
肺動脈造影により、肺静脈の異常還流部位を診断できるが、動脈管の大きな例では右-左短絡により,造影剤が容易に下行大動脈に流れ、良好な造影が得られないことがある。本症に対する心臓カテーテル検査、特に肺動脈造影は侵襲が大きく、患児の状態を急速に悪化させることがあるため注意を要する。

【MRIおよびCT】
MRIは自由な断面設定により、他臓器との位置関係や心臓後面の解剖を明瞭に描出可能で、特に無脾症候群などの複雑心奇形に伴う症例で有用である。さらにcine MRIを用いると、血管造影と同等の像が得られるが、呼吸状態の不良な新生児では検査困難な場合がある。肺静脈閉塞を伴わない症例では、造影剤量に注意しつつ造影CT検査を還流異常部位を同定することが可能である。

【鑑別】
先天性心臓病によるものでは肺うっ血をきたす先天性心疾患、共通肺静脈閉鎖、三心房心、僧帽弁狭窄、肺静脈狭窄が鑑別となる。心臓以外の疾患としては,呼吸窮迫症候群(RDS),新生児避延性肺高血圧症(PPHN),胎便吸引症候群(MAS) などの肺疾患が鑑別となる。

【診断】
心エコーあるいはCT、MRIにより、4本すべての肺静脈が直接右房または体静脈に還流することを確認し診断する。

当該事業における対象基準

治療中又は次の①から⑨のいずれかが認められる場合

①肺高血圧症(収縮期血圧40mmHg以上)
②肺動脈狭窄症(右室-肺動脈圧較差20mmHg以上)
③2度以上の房室弁逆流
④2度以上の半月弁逆流
⑤圧較差20mmHg以上の大動脈狭窄
⑥心室性期外収縮、上室性頻拍、心室性頻拍、心房粗細動又は高度房室ブロック
⑦左室駆出率あるいは体心室駆出率0.6以下
⑧心胸郭比 60%以上
⑨圧較差20mmHg以上の大動脈再縮窄

最終手術不能のためチアノーゼがあり、死に至る可能性を減らすための濃厚なケア、治療及び経過観察が必要な場合

以上の何れかを満たす場合

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本小児循環器学会
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