診断の手引き

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心室中隔欠損症

しんしつちゅうかくけっそんしょう

Ventricular septal defect

告示番 号31
疾病名心室中隔欠損症
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診断方法

【臨床所見】
脈拍の性状は正常で、チアノーゼは認めない。
小欠損の場合には心臓部に雑音が聴取されるだけで、自覚症状はまったくない。雑音は2/6~4/6度の汎収縮期性雑音で、最強点は第4肋間左縁である。II音は正常で拡張期雑音はない。
大欠損の場合には、乳児期初期から心不全を生じることが多く、呼吸数増加、哺乳不良が必発である。体重増加不良、発汗、蒼白で冷たい皮膚を認め、呼吸器感染症を合併した場合は呼吸状態がしばしば悪化する。太い肺動脈が気管支を圧迫し気管支閉塞を合併すると喘鳴と呼吸困難の発作を生じる。大欠損の場合には小欠損に比べて収縮期雑音は小さく、肺血管抵抗が高くなると収縮期雑音は逆流性から駆出性となり、雑音は小さく、かつ短くなる。肺野で小水泡音がきかれる。心不全のある場合には右肋骨弓下に肝臓縁を触れる。浮腫を生じることはまれである。
多量の左右短絡によって重度の肺高血圧を呈し、生後6ヵ月ごろから肺血管病変が進行する。
肺血管病変、左側房室弁閉鎖不全、合併する先天性心疾患の有無などが予後を左右する。

【胸部X線】
小欠損では正常である。
中欠損では肺血流量増加に伴い、肺血管が太い。心陰影は軽度ないし中等度に拡大する。
肺高血圧と肺血流増加を伴う大欠損では、中欠損のときに見られる所見がさらに高度になり右房と右室の拡大も加わる。

【心電図】
通常洞調律である
左右短絡により肺血流が増加している例では左室肥大となる。肺高血圧を伴う場合には右室肥大も生じ両室肥大となる。アイゼンメンジャー化すると右室肥大だけが残る。

【心エコー図】
・左右短絡の多いほど左房と左室が拡大する。
・カラードップラー法で短絡血流を探すことにより、欠損孔の部位を診断できる。
また、短絡血流の最高流速を測定することにより右室圧を推測したり、断層心エコー図との組み合わせで肺体血流量をおおよそ計算することができる。

【心臓カテーテル・血管造影所見】
小さい心室中隔欠損では心臓・大血管の内圧は正常である。血液酸素飽和度が右室で上昇している。肺体血流比は1.5以下である。左室造影で小さい欠損孔から右室へ造影剤のジェットが認められる。
中等度の心室中隔欠損では肺動脈と右心室の収縮期圧が30~50mmHgと上昇し、肺体血流比は1.5から3である。左室造影では大量の造影剤が心室中隔欠損を通り、右室と肺動脈へ流れる。
大きい心室中隔欠損では右室と肺動脈の収縮期圧が左室・大動脈の圧にほぼ等しい。肺動脈拡張期圧は大動脈拡張期圧より低い。

■診 断
重症度の診断と合併するほかの心疾患の診断が重要である。重症度は全体の病状、胸部X線所見、心電図、心エコー図所見、その他を総合して診断する。重症の心室中隔欠損では大動脈縮窄、僧帽弁閉鎖不全、動脈管開存などを合併することがある。そのため、乳児の重症の心室中隔欠損では、これらの疾患の合併を念頭において診断を進める。

■鑑 別
本疾患と同様にチアノーゼを伴わない胸骨左縁に収縮期雑音を呈する疾患は、大動脈狭窄、肺動脈狭窄、僧帽弁閉鎖不全、三尖弁閉鎖不全、左室右房交通症、総動脈幹症などがある。心エコー図等を用いてこれらの鑑別を行う。

当該事業における対象基準

治療中又は次の①から⑨のいずれかが認められる場合
①肺高血圧症(収縮期血圧40mmHg以上)
②肺動脈狭窄症(右室-肺動脈圧較差20mmHg以上)
③2度以上の房室弁逆流
④2度以上の半月弁逆流
⑤圧較差20mmHg以上の大動脈狭窄
⑥心室性期外収縮、上室性頻拍、心室性頻拍、心房粗細動又は高度房室ブロック
⑦左室駆出率あるいは体心室駆出率0.6以下
⑧心胸郭比 60%以上
⑨圧較差20mmHg以上の大動脈再縮窄

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本小児循環器学会
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