診断の手引き

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慢性糸球体腎炎(アルポート(Alport) 症候群によるものに限る。)

まんせいしきゅうたいじんえん (あるぽーとしょうこうぐんによるものにかぎる。)

Alport syndrome; AS

告示番 号38
疾病名慢性糸球体腎炎(アルポート 症候群によるものに限る。)
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診断方法

臨床所見,家族歴,腎生検および遺伝子検査により総合的に診断する(表1)。


表1. Alport症候群の診断
方 法所 見
スクリーニング 家族歴の聴取
尿検査
血中BUN、Cr
聴力検査
眼球検査
腹部超音波検査
母系家系に腎障害(X染色体連鎖型)
初期は血尿,進行するとタンパク尿も併発
初期は正常、進行期に上昇
2,000-8,000Hzの音域での低下
前円錐水晶体、後嚢下白内障、後部多形性角膜変性症、斑点網膜など
初期は正常、他疾患の除外
確定診断 腎生検
皮膚生検



遺伝子診断
電子顕微鏡における、糸球体基底膜の肥厚・菲薄化・断裂
COL4A3、4、5タンパクの発現低下(Ⅳ型コラーゲンα3,4,5鎖タンパクに対するモノクローナル抗体を用いる)
COL4A5タンパクの発現低下(Ⅳ型コラーゲンα5鎖タンパクに対するモノクローナル抗体を用いる)
COL4A3, 4, あるいは 5 遺伝子の変異の証明

表2 Alport症候群の診断基準 (平成27 年2 月改訂)
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)「腎・泌尿器系の希少・難治性疾患群に関する診断基準・診療ガイドラインの確立」班

  • 主項目に加えて副項目の1 項目以上を満たすもの。
  • 主項目のみで副項目がない場合、参考項目の2 つ以上を満たすもの。

※ 主項目のみで家族が本症候群と診断されている場合は「疑い例」とする。
※ 無症候性キャリアは副項目のIV 型コラーゲン所見(II-1 かII-2)1 項目のみで診断可能である。
※ いずれの徴候においても、他疾患によるものは除く。例えば、糖尿病による腎不全の家族歴や老人性難聴など。

  1. 主項目:
    1. 持続的血尿 ・・・ 註1
  2. 副項目:
    1. IV 型コラーゲン遺伝子変異 ・・・ 註2
    2. IV 型コラーゲン免疫組織化学的異常 ・・・ 註3
    3. 糸球体基底膜特異的電顕所見 ・・・ 註4
  3. 参考項目:
    1. 腎炎・腎不全の家族歴
    2. 両側感音性難聴
    3. 特異的眼所見 ・・・ 註5
    4. びまん性平滑筋腫症
註1
3 か月は持続していることを少なくとも2 回の検尿で確認する。まれな状況として、疾患晩期で腎不全が進行した時期には血尿が消失する可能性があり、その場合は腎不全などのしかるべき徴候を確認する。
註2
IV 型コラーゲン遺伝子変異:COL4A3 またはCOL4A4 のホモ接合体またはヘテロ接合体変異、またはCOL4A5 遺伝子のヘミ接合体(男性)またはヘテロ接合体(女性)変異をさす。
註3
IV 型コラーゲン免疫組織化学的異常:IV 型コラーゲンα5 鎖は糸球体基底膜だけでなく皮膚基底膜にも存在する。抗α5 鎖抗体を用いて免疫染色をすると、正常の糸球体、皮膚基底膜は線状に連続して染色される。しかし、X連鎖型アルポート症候群の男性患者の糸球体、ボウマン 囊、皮膚基底膜は全く染色されず、女性患者の糸球体、ボウマン囊、皮膚基底膜は一部が染色される。常染色体劣性アルポート症候群ではα3、4、5 鎖が糸球体基底膜では全く染色されず、一方、ボウマン囊と皮膚ではα5 鎖が正常に染色される。注意点は、上述は典型的パターンであり非典型的パターンも存在する。また、全く正常でも本症候群は否定できない。
註4
糸球体基底膜の特異的電顕所見:糸球体基底膜の広範な不規則な肥厚と緻密層の網目状変化により診断可能である。良性家族性血尿においてしばしばみられる糸球体基底膜の広範な菲薄化も本症候群においてみられ、糸球体基底膜の唯一の所見の場合があり注意を要する。この場合、難聴、眼所見、腎不全の家族歴があればアルポート症候群の可能性が高い。また、IV 型コラーゲン所見があれば確定診断できる。
註5
特異的眼所見:前円錐水晶体(anterior lenticonus)、後嚢下白内障(posterior subcapsular cataract)、後部多形性角膜変性症(posterior polymorphous dystrophy)、 斑点網膜(retinal flecks)など。

診断のための留意点

  • ASは,本邦では学校検診などで無症候性血尿を契機に発見されることが多いことから,無症候性血尿の症例に対して,ASを疑って腎疾患の家族歴を聴取することが重要である。
  • 家族歴からASが疑われる場合は腎生検を行うことが望ましい。家族性に血尿がみられるが腎不全の家族歴がない場合の腎生検の適応は慢性糸球体腎炎の腎生検の適応と同じである(表3)。
  • 最も確実なASの診断は,遺伝子解析であるが,遺伝子検査が可能な施設が限られることや,コストパフォーマンスを考慮した場合に診断法の第一選択にはならない。

表3 大分類2:慢性糸球体腎炎

診断は臨床症状および(または)腎生検の組織所見によって行う。

1.臨床症状
タンパク尿および(または)血尿の尿異常が1年以上続くもの

2.腎生検の適応
以下の場合は腎生検の適応である。

持続性蛋白尿(尿蛋白/尿Cr比0.5g/g以上が3カ月以上持続;2歳以上)
持続性血尿+蛋白尿(血尿+尿蛋白/尿Cr比0.2g/g以上が3カ月以上持続;2歳以上)
ネフローゼ症候群(成人と異なり大部分は腎生検の適応とならない) :微小変化型以外が疑われる症例,先天性が疑われる症例,ステロイド抵抗性を呈する症例
急速進行性腎炎症候群
全身性エリテマトーデス(SLE)
紫斑病性腎炎:ネフローゼ症候群, 急性腎炎症候群, 急速進行性腎炎症候群, 持続する蛋白尿を呈する症例

当該事業における対象基準

病理診断で診断が確定し、治療でステロイド薬、免疫抑制薬、生物学的製剤、抗凝固薬、抗血小板薬、アルブミン製剤、降圧薬のうち一つ以上を用いる場合又は腎移植を行った場合

:バージョン1.1
更新日
:2015年5月23日
文責
:日本小児腎臓病学会
成長ホルモン療法の助成に関して
腎機能障害が進行し、身長が-2.5SD以下の場合でがつ成長ホルモン治療の対象基準を満たす場合は、小慢による成長ホルモン治療助成の対象となります。
成長ホルモン療法の助成に関しては下記を参照ください
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