診断の手引き

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慢性腎不全(急性尿細管壊死または腎虚血によるものに限る。)

まんせいじんふぜん (きゅうせいにょうさいかんえしまたはじんきょけつによるものにかぎる。)

Chronic renal failure due to acute tubular necrosis or renal ischemias

告示番 号43
疾病名慢性腎不全(急性尿細管壊死または腎虚血によるものに限る。)
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診断方法

慢性腎不全の契機となった急性腎不全の原因診断が重要である1(表1、2)。 小児の腎機能評価はCKD診療ガイドラインによる準じ、血清Cr値、推算糸球体濾過量(estimated GFR: eGFR)により行う。血清Cr値が基準値(表3)を超える場合、eGFR <90ml/分/1.73m2またはCKDステージ2以上のものを腎機能低下と診断する2-4(表4)。


表1. 小児急性腎不全の原因(病因的分類)
腎前性
 循環血液量の減少(脱水,出血,thirdspaceへの喪失,
  ネフローゼ症候群などの浮腫性疾患など)
 心拍出量の低下(仮死,呼吸窮迫症候群など)
 末梢血管抵抗の減少(敗血症,アナフィラキシーショックなど)
 腎輸入細動脈の収縮(シクロスポリン,タクロリムスなど)
 腎輸出細動脈の拡張(ACE阻害薬など)

腎 性
 尿細管壊死(虚血,腎毒性物質,薬剤,溶血,挫滅症候群など)
 腎内血管病変〔溶血性尿毒症症候群(HUS),腎皮質壊死など〕
 糸球体障害(急性糸球体腎炎,半月体形成腎炎など)
 尿細管間質性腎炎(薬剤,感染症,全身性疾患,特発性)
 尿細管閉塞(高尿酸血症など)

腎後性
 上部尿路の閉塞(腎孟尿管,尿管膀胱移行部狭窄など)
 下部尿路の閉塞(後部尿道弁など

表2. 乳児期以降の小児急性腎不全の原因と頻度
原因疾患頻度
急性尿細管壊死
溶血性尿毒症症候群 (HUS)
糸球体腎炎
腎実質性疾患
手術後
敗血症
虚血
尿路閉塞
その他
23.3% 
21.0% 
12.6% 
8.5% 
6.8% 
6.2% 
4.5% 
3.3% 
13.8% 

表3 日本小児の血清Cr基準値(酵素法)
年齢2.50%50.00%97.50%
3–5 (月)0.140.20.26
6–80.140.220.31
9–110.140.220.34
1(歳)0.160.230.32
20.170.240.37
30.210.270.37
40.20.30.4
50.250.340.45
60.250.340.48
70.280.370.49
80.290.40.53
90.340.410.51
100.30.410.57
110.350.450.58
男子女子
年齢(歳)2.50%50.00%97.50%2.50%50.00%97.50%
120.40.530.610.40.520.66
130.420.590.80.410.530.69
140.540.650.960.460.580.71
150.480.680.930.470.560.72
160.620.730.960.510.590.74

表4 小児CKDのステージ分類
病期ステージ重症度の説明GFR mL/分/1.73m2治療
1腎障害*は存在するがGFRは正常または亢進≥90移植治療が行われている場合は1-5T
2腎障害が存在し,GFR軽度低下60~89
3GFR中等度低下30~59
4GFR高度低下15~29
5末期腎不全<15(または透析)透析治療が行われている場合は5D
*腎障害:蛋白尿,腎形態異常(画像診断),病理の異常所見等を意味する。

eGFRの算出は、次の式-1)(2歳以上12歳未満)を用いる。
式-1) eGFR(mL/分/1.73m2)=k×身長(cm)/血清Cr値(酵素法),k=0.35 a),1)
また、2歳以上18歳未満については次の式-2),3)を用いて計算できる 2)。
式-2) eGFR(mL/分/1.73m2)= 110.2×(血清Cr基準値/患者血清 Cr) + 2.93
式-3a) 男児: y= -1.259x5 + 7.815x4 - 18.57x3 + 21.39x2 - 11.71x + 2.628
式-3b) 女児: y= -4.536x5 + 27.16x4 - 63.47x3 + 72.43x2 - 40.06x + 8.778
y=血清Cr基準値(mg/dl), x=身長(m)


2歳未満については、血清Cr値に基づき、表3または表5により腎機能障害を判定する。


表5 日本人小児2歳未満の血清cr値(mg/dl)とCKDステージ
年齢病期ステージ
345
<3-5ヶ月
6-8ヶ月
9-11ヶ月
1歳
0.41~0.80
0.45~0.88
0.45~0.88
0.47~0.92
0.81~1.60
0.89~1.76
0.89~1.76
0.93~1.84
1.61~
1.77~
1.77~
1.85~

参考文献

  1. Flynn JT. Choice of dialysis modality for management of pediatric acute renal failure. Pediatr Nephrol. 2002;17: 61-9.
  2. Nagai T, Uemura O, Ishikura K, et al. Creatinine-based equations to estimate glomerular filtration rate in Japanese children aged between 2 and 11 years old with chronic kidney disease. Clin Exp Nephrol 17: 877-81, 2013.
  3. Uemura O, Nagai T, Ishikura K, et al. Creatinine-based equation to estimate the glomerular filtration rate in Japanese children and adolescents with chronic kidney disease. Clin Exp Nephrol. 2013 [Epub ahead of print]
  4. 日本腎臓学会 編.CKD診療ガイドライン2013. 東京医学社, 東京, 2013.

当該事業における対象基準

腎機能の低下(おおむね3か月以上、血清Crが年齢性別ごとの中央値(別表参照)の1.5倍以上持続)がみられる場合又は腎移植を行った場合

表. 年齢・性別毎の血清クレアチニンの中央値および腎機能低下基準値
年 齢中央値
(mg/dL)
腎機能低下 基準値
(mg/dL)
男女共通
3〜5か月0.200.30
6〜8か月0.220.33
1歳0.230.35
2歳0.240.36
3歳0.270.41
4歳0.300.45
5歳0.340.51
6歳0.340.51
7歳0.370.56
8歳0.400.60
9歳0.410.62
10歳0.410.62
11歳0.450.68

年 齢中央値
(mg/dL)
腎機能低下 基準値
(mg/dL)
男 子
12歳0.530.80
13歳0.590.89
14歳0.650.98
15歳0.681.02
16歳0.731.10
17歳以上0.831.24
年 齢中央値
(mg/dL)
腎機能低下 基準値
(mg/dL)
女 子
12歳0.520.78
13歳0.530.80
14歳0.580.87
15歳0.560.87
16歳0.590.89
17歳以上0.630.95

腎機能低下基準値は、中央値の1.5倍値。12歳以上は男女別となっている。
17歳以上も近年の標準測定法である"酵素法"での正常値(男:0.83、女性:0.63(Jaffe法だと1.03、0.83 相当))を用いて1.5倍として計算。
:バージョン1.1
更新日
:2015年5月23日
文責
:日本小児腎臓病学会
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腎機能障害が進行し、身長が-2.5SD以下の場合でがつ成長ホルモン治療の対象基準を満たす場合は、小慢による成長ホルモン治療助成の対象となります。
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