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無トランスフェリン血症

むとらんすふぇりんけっしょう

congenital atransferrinemia

告示番 号52
疾病名無トランスフェリン血症
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概要

鉄の輸送を司るトランスフェリン(transferrin: TF)の欠乏により、骨髄に鉄を供給できず、ヘモグロビン産生が低下することにより小球性低色素性貧血を呈する疾患。また同時に、利用されなかった鉄が全身の臓器へ沈着しヘモクロマトーシスもきたす。

疫学

1961年、Heilmeyerらにより初めて報告がなされたが、それ以後も世界で10数例しか報告のない、極めて稀な疾患である。日本での報告はこれまで2例である

原因

Tfをコードする遺伝子(TF)の遺伝子変異によって発症すると考えられる。実際、数例の患者においてTf遺伝子の変異が報告されている。1例を除いては両アレルのTf遺伝子に変異が認められており、遺伝形式は常染色体劣性遺伝であると考えられる。

症状

高度の貧血による顔色不良と易疲労感が主たる症状である。貧血は乳幼児よりみられることが多く、早期に発症した症例では発育障害をきたす。易感染性も多くの例で報告されている。また、赤血球産生に利用されなかった鉄が、肝臓をはじめとした臓器に蓄積してモクロマトーシスを引き起こすため、それら臓器の障害による症状(肝障害、心不全)を来すこともある

診断

鉄剤不応の小球性低色素性貧血で、血清鉄低値、TIBC低値、フェリチン高値を呈する。特にTIBCの著明低値(20~70 μg/dL)が特徴的であり、その場合はTfの定量を行い10mg/dL以下であれば診断は確実であるとされる。骨髄では赤芽球過形成、鉄芽球減少の像を呈するが、顆粒球系や巨核球系に異常は認められない。近年は遺伝子解析も比較的容易になってきていることから、今後はTf遺伝子の遺伝子解析も重要になると思われる。

治療

不足しているTfの補充により病態を是正できるため、血漿製剤や血漿から抽出したアポトランスフェリンの投与を行う。本治療が行われれば数ヶ月以内に血液学的には正常化する。ヘモクロマトーシスは生命予後に直結すると考えられるため、キレート剤を用いて積極的に除鉄を行うことが推奨される

参考文献

1. 新津 洋司郎, 瀧本 理修. 無トランスフェリン血症. 三輪血液病学. 浅野 茂隆編 第3版 文光堂 2006 1017-1018
2. 山口 俊一郎, 徳永 賢治, 麻生 範雄. 先天性無トランスフェリン血症. 別冊日本臨牀 血液症候群. 第2版 日本臨牀社 2013 139-142
3. Beutler E, Gelbart T, Lee P, Trevino R, Fernandez MA, Fairbanks VF. Molecular characterization of a case of atransferrinemia. Blood. 2000 Dec 15;96(13):4071-4.

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会
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