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先天性赤血球形成異常性貧血

せんてんせいせっけっきゅうけいせいいじょうせいひんけつ

congenital dyserythropoietic anaemia; CDA

告示番 号45
疾病名先天性赤血球形成異常性貧血
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概要

先天的に赤血球系細胞に形成異常があり、慢性の不応性貧血、無効造血および続発性ヘモクロマトーシスを伴う疾患群である。I型からIII型の3病型に分けられる。

疫学

西欧からの報告によると、I型、II型ともに10万出生あたり1人の頻度である。III型はより少ない。国内のまとまったデータはまだ得られていないが、いずれの病型も報告がある

原因

赤血球系の障害は赤芽球系前駆細胞レベルから生じる。顆粒球系、リンパ球系および血小板系に異常はみられない

症状

貧血は軽症から重症まで様々で、基本的には大球性貧血である。網赤血球は正常ないし軽度増加にとどまる。赤血球の大小不同、奇形、染色不同、好塩基性斑点などがみられる。末梢血赤血球寿命は短縮するが、溶血性貧血ほどではない。黄疸(間接型ビリルビンの上昇)、脾腫、血清鉄の上昇、ハプトグロビンの低下などがみられる

合併症

鉄過剰状態であり、長期的には続発性ヘモクロマトーシスを来たす

治療法

1)輸血療法
多くの症例は生涯にわたり貧血を呈するが、貧血自体は軽症~中等症であることが多く、輸血が必要となることは少ない。1回でも輸血が必要となった例はI型の50%、II型の10%で、その後も輸血依存となるのはその一部のみである。
2)除鉄
輸血依存でなくても鉄過剰となりうるため血清フェリチン値の定期的なモニタリングが必要である。除鉄を開始するフェリチン値のカットオフとして1000~1500μg/lが推奨されている。輸血依存があれば積極的に除鉄を考慮する。
3)摘脾
CDAは赤血球寿命が短縮していることから、II型など一部の症例で有効であるといわれている。摘脾によってHbは上昇し、血清ビリルビンは減少するが、鉄過剰を防ぐことはできない。II型以外でも有効例は報告されているが、効果を予測する因子は見つかっていない。摘脾によって血小板数が増加し、Budd-Chiari症候群や門脈血栓症を来した報告があり、注意を要する。
4)インターフェロン
I型でインターフェロンαの投与が有効であったとの報告があり、輸血依存の場合には考慮すべき治療法である。ただし、副作用、保険適応について留意する必要がある。II型には無効である。
5)そのほかの薬物療法
赤芽球過形成に対してビタミンB12や葉酸を補充が行われる。また、ビタミンEが有効であったという報告もある。
6)造血幹細胞移植 (HSCT)
輸血依存性のI型、βサラセミアを合併した II型などで報告がある。多賀らの調査でも亜型の1例でHSCTが行われ輸血不要となっていた。ヘモクロマトーシスを合併していても十分な除鉄を先行させて非血縁ドナーからのHSCTを行った例の報告もあり、適当なドナーがいる輸血依存例には考慮すべきであろう

問題点、将来展望

これまでは臨床所見、血液・検査所見、形態学的所見、さらには他疾患の除外に基づいてCDAの診断が行われてきたことから、既存の病型に合致せず確定診断が得られない例も多かった。これまでにCDAN1、SEC23B、KLF1などの責任遺伝子が発見されており、今後はこれらの解析を用いることで診断がより正確に行われることが期待される。また、CDA自体が稀少疾患である上に、各亜型に属する症例数は極めて少ないため連鎖解析などの手法を用いた責任遺伝子の同定は困難であったが、エクソームシーケンスやディープシーケンスによって新規の責任遺伝子が発見されれば、さらなる診断精度の向上が得られるであろう。
本邦においても2006年度の多賀らの全国調査によりCDA患者が存在することが確認されたが、軽症例や自然軽快例、成人例などが見逃されて実態が十分に把握できていない可能性が高い。本疾患に遭遇する機会が多いと考えられる新生児科医や内科医などに本疾患が十分認識されていない現状を鑑みると、班研究などを中心に本疾患の啓発活動を行う必要がある。その上で、遺伝子検査も含めた中央診断を取り入れることで的確な診断と症例の把握が可能になることが期待される

参考文献(代表的なもの)

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7. 多賀崇、真部淳. Congenital Dyserythropoietic Anemia ―現状と今後の課題― 日児誌 2012;116:1075-1080.

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会
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