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後天性赤芽球癆

こうてんせいせきがきゅうろう

acquired pure red cell aplasia

告示番 号28
疾病名後天性赤芽球癆
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概念・定義

赤芽球癆は正球性正色素性貧血と網赤血球の著減および骨髄赤芽球の著減を特徴とする造血器疾患である。再生不良性貧血が汎血球減少を特徴とするのに対し、赤芽球癆では選択的に赤血球系のみが減少し、重症の貧血を呈する。通常、白血球数と血小板数は正常に保たれる。先天性と後天性があり、先天性赤芽球癆としてDiamond-Blackfan貧血(DBA)がある。後天性は臨床経過から急性と慢性に区分される。後天性慢性赤芽球癆は病因不明の特発性と基礎疾患を有する続発性に分類される。

疫学

後天性赤芽球癆は稀な疾患である。小児で最も頻度の高いtransient erythroblastopenia of childhood(TEC)の年間発症率は、海外では小児人口10万人当たり4.3人と推定されている

病因

小児で最も頻度の高いTECは乳幼児にみられ、ウイルス感染症に引き続いて発症することが多く、何らかの免疫学的機序が発症に関与しているものと考えられている。その他に急性型の病因としてよく知られているのは、ヒトパルボウイルスB19の初感染と薬剤である。ヒトパルボウイルスB19は赤芽球系前駆細胞を直接障害すると考えられているが、薬剤性赤芽球癆の機序が赤芽球系前駆細胞に対する直接障害かどうかは必ずしも明らかではない。慢性型には病因不明の特発性と続発性があり、続発性の基礎疾患としては胸腺腫やリンパ系腫瘍、リウマチ性疾患などが挙げられるが、小児では非常に稀である。慢性型では、自己障害性リンパ球や赤芽球系前駆細胞に対する抗体の存在が、赤芽球癆の原因になっていると考えられている

症状

顔色不良、息切れ、動悸、めまい、易疲労感、頭痛などの症状がみられる。DBAの約40%でみられる種々の奇形や発育障害は通常認められない

治療

(1) 急性赤芽球癆の治療
赤芽球癆の診断が得られたら全ての被疑薬を中止する。中止が困難な薬剤は作用機序の異なる他の薬剤への変更を試みる。TECは通常1~2か月以内に自然に回復するので、治療の原則は慎重に経過を観察することである。貧血が高度な場合には、赤血球輸血を考慮する。ヒトパルボウイルスB19感染症の場合も対症的に経過を観察する。薬剤性や感染性の場合、通常1~3週間で改善傾向が認められる。
(2) 慢性赤芽球癆の治療
貧血が高度で日常生活が障害されている場合には赤血球輸血を考慮する。赤芽球癆の診断から約1か月間の経過観察を行っても貧血が自然軽快しない場合や、基礎疾患の治療によって貧血が改善しない場合には免疫抑制薬の使用を考慮する

予後

急性型の予後は一般に良好である。成人領域では慢性型の死因として感染症の頻度が高いことが知られており、長期予後を改善するためには感染症に対する予防と治療が重要と考えられている

参考文献

(1) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班 赤芽球癆診療の参照ガイド改訂第3版
(2) Shimamura A and Nathan DG. Acquired pure red cell aplasia. In: Orkin SH, Nathan DG, Ginsburg D, et al, editors. Nathan and Oski’s Hematology of Infancy and Childhood. 7th ed. Philadelphia: Saunders Elsevier; 2009. pp. 293-6.
(3) Lerner NB. Acquired pure red blood cell anemia. In: Kliegman RM, Stanton BF, St. Geme JW et al, editors. Nelson Textbook of Pediatrics. 19th ed. Philadelphia: Elsevier Saunders; 2011. pp. 1652-3.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会
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