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再生不良性貧血

さいせいふりょうせいひんけつ

aplastic anaemia

告示番 号22
疾病名再生不良性貧血
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概念・定義

再生不良性貧血(再不貧)は、骨髄での3血球系統(白血球系、赤血球系および血小板系)の産生が減少し、その結果、末梢血での白血球、赤血球および血小板数のすべてが減少する(汎血球減少)1つの症候群である。診断にあたっては、骨髄標本で各血球成分に形態異常を認めないこと、白血病細胞などの腫瘍性血球の出現を認めないこと、線維成分の増加を認めないこと、壊死巣を認めないこと、肉芽腫や固形腫瘍の骨髄転移などの占拠性病変を認めないことなどが必要とされている。実際に汎血球減少がみられる疾患は多数存在するので、汎血球減少がみられる他の疾患を除外することによって初めて再不貧と診断することができる。

疫学

小児再不貧は年間100万人あたり2人の発生がみられる1)。日本の小児例においては、 日本小児血液・がん学会再不貧・骨髄異形成症候群(MDS)委員会で患者登録が行なわれており、年間70~100人が新規登録されている。

病因

造血幹細胞が減少する機序として造血幹細胞自身の質的異常と、免疫学的機序による造血障害の2つが考えられている2)。また、成因によって先天性と後天性に分けられる。先天性再不貧は10%を占め、ファンコニ貧血、先天性角化不全症(Dyskeratosis congenita)、シュバッハマン・ダイアモンド症候群および先天性無巨核球性血小板減少症などが含まれる。これらの疾患は特徴的な身体所見や臨床症状を呈し、診断の手がかりになる場合が多い。近年、それぞれの疾患の責任遺伝子が同定されてきており、遺伝子検査が確定診断に有用である。
後天性の再不貧には原因不明の特発性(一次性)再不貧と、様々な薬剤、放射線被曝やベンゼンなどによる二次性再不貧がある。特殊なものとして肝炎に関連して発症する肝炎関連再不貧や発作性夜間血色素尿症(PNH)に伴うものがある。
さらに、小児再不貧の診断においては、MDSとの鑑別が問題となる。小児MDSの骨髄は低形成であることが多く、骨髄に軽度の異形成を認める再不貧との異同が議論されてきた。2008年には、WHO新分類において、小児における芽球の増加を伴わないMDSが小児不応性血球減少症(Refractory cytopenia of childhood、RCC)と定義され、RCCと再不貧との鑑別が明確化された3)

症状

主要症状は労作時の息切れ、動悸、めまいなどの貧血症状と、皮下出血斑、歯肉出血、鼻出血などの出血傾向である。好中球減少の著しい症例では感染による発熱が初発症状であることがある。軽症、中等症例では無症状で検診等において偶然にみつかる場合もある。他覚的徴候としては、顔面蒼白、貧血様の眼瞼結膜、皮下出血、歯肉出血などがみられる。血小板減少が高度の場合には眼底出血をきたして視力障害をおこすこともある。

治療

貧血に対しては、ヘモグロビン値を7g/dL以上に保つように赤血球輸血を行なう。血小板数が10,000/uL以下で明らかな出血傾向があれば血小板輸血を行なう。しかし、輸血は未知の感染症や血小板輸血に対する不応性を招く危険性があるうえ、同種造血幹細胞移植時の拒絶の危険性が増すので必要最小限にとどめるべきである。また、組織適合抗原による感作を防ぐために、すべての輸血製剤は白血球除去フィルターを用い、放射線照射を行なう。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与によりほとんどの例で好中球は増加するが投与を中止するともとの値に戻り、その効果は一時的である4)
小児再不貧に対する重症度別治療指針として、最重症・重症再不貧患者においては、HLA適合同胞がいる場合には、同種骨髄移植を選択する。HLA適合同胞ドナーが得られない場合には抗胸腺細胞グロブリン(ATG)やシクロスポリンを用いた免疫抑制療法を施行する。免疫抑制療法が無効な場合には、非血縁者間骨髄移植を選択する。

予後

軽症、中等症の症例のなかには、汎血球減少があっても全く進行しない症例や、少数ではあるが自然に回復する症例もある。かつては、重症例は支持療法のみでは半年で50%が死亡するとされていた。最近では抗生物質、G-CSF、血小板輸血などの支持療法が進歩し、 免疫抑制療法や骨髄移植が発病後早期に行なわれるようになったため、80-90%に長期生存が期待できる。ただし、最重症例で感染症がコントロールできない患者では予後は極めて不良である。

参考文献

1) Kurre P, et al:Diagnosis and treatment of children with aplastic anemia. Pediatr Blood Cancer 44:1-11, 2005
2) Young NS, Maciejewski J. The pathophysiology of acquired aplastic anemia. N Engl J Med, 1997; 336: 1365-72.
3) Baumann I, Niemeyer CM, Benett JM, et al. Childhood myelodysplastic syndrome. In: Swerdlow SH, Campo E, Harris NL, et al. Editors. World Health Organization Classification of Tumors of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon:IARC Press;2008. Vol. 4, p.104-7.
4) Ohara A, Kojima S, Okamura J, et al. Evolution of myelodsplastic syndrome and acute myelogenous leukemia in children with hepatitis-associated aplastic anemia. Br J Haematol, 2002; 116: 151-4.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会
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