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カサバッハ・メリット(Kasabach-Merritt)症候群

かさばっは・めりっとしょうこうぐん

Kasabach-Merritt syndrome

告示番 号10
疾病名カサバッハ・メリット症候群
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概要・定義

1940年に放射線科医のKasabachと小児科医のMerrittによって報告された症候群で、カサバッハ・メリット現象とも言われる。彼らは毛細血管性血管腫という病名で報告したが、実際は毛細血管性血管腫ではなく、カポジ型血管内皮腫 kaposiform hemangioendothelioma(KHE)または房状血管腫tufted angioma (TA)であった。これらは同じ病変とする意見もある。カサバッハ・メリット症候群は、小児期、特に新生児期から乳児期のカポジ型血管内皮腫または房状血管腫に合併して起こる血小板減少、貧血、凝固異常を呈する疾患で、特に血小板減少が特徴であり、出血や多臓器不全など致命的になることもある。

疫学

発症率や有病率に関する詳しいデータはないが、性差や人種差はないとされる。また家族性発症の報告はなく、遺伝的背景はないとされる。

病因

病態は、カポジ型血管内皮腫と房状血管腫の病変部における血小板や凝固因子の局所での消費であり、これらによる全身性の出血傾向や血液凝固障害である。カサバッハ・メリット症候群をきたす血管性病変は、カポジ型血管内皮腫と房状血管腫であり、乳児血管腫 infantile hemangiomaは、カサバッハ・メリット症候群を起こさない。

症状

出生時から存在したり、あるいは乳児、幼児時期に増大する大きな血管性腫瘍の単一病変で、四肢に好発し、頭頸部や体幹、内臓にも発症する。血小板減少が顕著であり、それによる紫斑などの出血症状、播種性血管内凝固異常症(DIC)などの血液凝固異常のため、時に出血や多臓器不全で生命予後に影響する。

診断

Ⅰ. 主症状


  1. 出生時から存在、あるいは幼小児時期に増大する大きな血管性腫瘍。四肢に好発し、頭頸部や体幹、内臓にも発症する。
  2. 著明な血小板減少、とそれによる紫斑などの出血症状。
  3. 播種性血管内凝固異常症(DIC)などの血液凝固異常。
  4. 時に出血や多臓器不全で生命予後に影響する。

Ⅱ. 検査所見


  1. 血液検査:著明な血小板減少や血液凝固異常。
  2. 画像検査:エコー検査は非浸襲的に血流を確認し血管性腫瘍の診断に有用である。MR検査では深部病変の広がりと周辺臓器との関連を評価する。
  3. 病理組織検査:カポジ型血管内皮腫と房状血管腫。

Ⅲ. 診断および鑑別診断

原則として、病変の存在と臨床症状、検査および画像所見から診断する。病理組織学的検査は鑑別診断や治療法選択において重要であるが、出血リスクも考慮して適応を考える。


乳児血管腫および血管奇形:乳児血管腫はカサバッハ・メリット症候群を呈さない。大きな静脈性血管奇形やKlippel Trenaunay症候群等でも、凝固異常を呈することがあるが、血小板減少を主体とするカサバッハ・メリット症候群とは異なる。

治療

確立した治療法はない。しかしステロイド、インターフェロン、オンコビン、抗線溶剤、抗血小板薬の投与などの内科的治療が行われ、これらの治療に抵抗を示す場合は、血管内治療(経動脈的塞栓術)や外科的切除を行なうこともある。ヘパリンは、腫瘤の増大や病状を悪化させることがあり禁忌である。単一の治療では十分な効果を得るとことが難しく、集学的な治療が必要である。放射線治療は通常は行わない。

予後

出血や感染、多臓器不全などで死亡率は20-30%とされる。カサバッハ・メリット症候群が治癒した症例では、腫瘤は時間をかけ退縮傾向を呈する。その生命予後は良好であるが、縮小した腫瘤や皮膚の変色・線維化が残存する。

成人期以降の注意点

小児期に起こったカサバッハ・メリット症候群が治癒した後、腫瘍性病変は多くは次第に退縮傾向を示すが、縮小した腫瘤として残存することも多い。特に病変部の皮膚の変色や線維化病変として残存するが、カサバッハ・メリット症候群の再発はなく、その生命予後は良好である。

参考文献

1. Kasabach HH, Merritt KK: Capillary hemangioma with extensive purpura: report of a case. Am J Dis Child 59:1063-1070, 1940
2. Enjolras O, Wassef M, Mazoyer E, et al: Infants with Kasabach-Merritt syndrome do not have “true” hemangiomas。 J Pediatr 130: 631-640, 1997
3. Sarkar M, Mulliken JB, Kozakewich HP, et al: Thrombocytopenic coagulopathy (Kasabach-Merritt phenomenon) is associated with Kaposiform hemangioendothelioma and not with common infantile hemangioma. Plast Reconstr Surg 100:1377-1386, 1997
4. Enjolras O, Mulliken JB, Wassef M, et al: Residual lesions after Kasabach-Merritt phenomenon in 41 patients. Am Acad Dermatol 42:225-235, 2000
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月18日
文責
:日本脳神経血管内治療学会
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