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ファンコニ(Fanconi)貧血

ふぁんこにひんけつ

Fanconi anaemia

告示番 号44
疾病名ファンコニ貧血
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概念・定義

本症候群は、造血細胞の分化・増殖が先天的に障害され、骨髄での単一血球系統ないし三血球系統(白血球系、赤血球系および血小板系)の産生が減少し、その結果末梢血での血球減少をきたす疾患の総称である。多くの場合、造血障害以外に特徴的な外表奇形や所見を伴う。近年、多くの責任遺伝子が同定されてきたが、遺伝的背景が疑われながら責任遺伝子が同定されていない例も存在する。1)  汎血球減少をきたす先天性造血不全症候群にはファンコニ貧血 (FA)、先天性角化異常症(DC)、シュワッハマン・ダイアモンド症候群 (SDS)、先天性無巨核球性血小板減少症 (CAMT)、ピアソン症候群が含まれる。また、単一系統血球減少症は、赤血球系ではダイアモンド・ブラクファン貧血(DBA)、遺伝性鉄芽球性貧血、先天性赤血球異形成貧血(CDA)、好中球系では先天性重症好中球減少症 (SCN)、周期性好中球減少症、血小板系では骨髄性白血病に移行傾向を有する家族性血小板減少症(FPD)、撓骨欠損を伴う血小板減少症などで見られる。

疫学

本症候群のうち最多のFAでも、わが国の年間発生数は5~10人で、出生100万人あたり5人前後と非常に少ない。1)

病因

造血幹細胞が減少する機序として造血幹細胞の遺伝学的な内因性異常が考えられている。FAは遺伝的には多様な疾患であるが、DNA二重鎖架橋を修復するファンコニ経路に関連する蛋白をコードする遺伝子異常により、DNA複製が障害されることが病態の本質である。
CAMTの一部ではc-MPL(トロンボポイエチン受容体)に遺伝子変異を有しており、このためトロンボポイエチンに反応せず、巨核球が減少して末梢血血小板数の減少も見られるが、c-MPL変異を有さない例での病因は不明である。2)

症状

主要症状は(1)血球減少による症状と、(2)合併奇形である。(1)赤血球減少例では労作時の息切れ、動悸、めまいなどの貧血症状、血小板減少例では皮下出血斑、歯肉出血、鼻出血などの出血傾向、好中球減少例やリンパ球減少例では易感染性を呈する。(2)病型によって呈する奇形の頻度は異なるが、低身長、大頭・小頭・大泉門開大、色黒の肌・カフェオレ斑、網状色素沈着、口腔粘膜白斑・歯牙異常、巨舌、小角膜、先天性心疾患、楯状胸、母指奇形・多指症、爪萎縮、食道狭窄などが良く認められる。3)

治療

(1)輸血・造血因子
貧血に対しては、ヘモグロビン値を7g/dL以上に保つように赤血球輸血を行なう。血小板数が10,000/uL以下で明らかな出血傾向があれば血小板輸血を行なう。しかし、輸血は未知の感染症や血小板輸血に対する不応性を招く危険性があるうえ、同種造血幹細胞移植時の拒絶の危険性が増すので必要最小限にとどめるべきである。また、組織適合抗原による感作を防ぐために、すべての輸血製剤は白血球除去フィルターを用い、放射線照射を行なう。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与によりほとんどの例で好中球は増加するが投与を中止するともとの値に戻り、その効果は一時的である。
(2)造血細胞移植
本症候群に対して現時点で唯一根治が期待できる治療法である。一般的に重度の汎血球減少症に進行する前に移植を選択する。1), 2)またMDSや急性白血病に進展した場合には移植の早期の実施が必要となる。通常移植前処置で行われる放射線照射はFAでは移植関連毒性が強く、二次癌の可能性も高いことから避けるべきである。まとまった報告のあるFAについては、フルダラビンを含む移植前処置による成績が良好である。再生不良性貧血に準じた移植前処置を行うが、芽球増加が見られるMDS進行例では急性白血病に準じた移植前処置を行う。1)

予後

本症候群のうち最多のFAについて、本邦の非移植症例の10年生存率は63%と報告されている。またフルダラビンを含む移植前処置による2-3年生存率は52-100%と良好である。しかし造血系の異常以外にも、頭頚部・食道、婦人科領域の扁平上皮癌を中心に固型癌の合併が5-10%でみられるため定期的な検査が必要である。1)

参考文献

1) 特発性造血障害疾患の診療の参照ガイド. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業、特発性造血障害に関する調査研究班. 2010.
2) Geddis AE. Congenital Amegakaryocytic Thrombocytopenia. Pediatr Blood Cancer 2011;57:199–203.
3) 川島希, 小島勢二. 小児・思春期の貧血における診断のポイント. 内科 2013;112:245-250.

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会
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