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免疫性血小板減少性紫斑病

めんえきせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう

immune thrombocytopenic purpura

告示番 号18
疾病名免疫性血小板減少性紫斑病
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概念・定義

本疾患は、血小板膜蛋白に対する自己抗体が産生され血小板に結合する結果、主として脾臓における網内系細胞での血小板の破壊が亢進し、血小板減少をきたす自己免疫性疾患である。最近、本症はprimary immune thrombocytopenia(一次性免疫性血小板減少症)と呼ばれることが多く、原因疾患に合併した血小板減少症はsecondary immune thrombocytopenia(二次性免疫性血小板減少症)として区別される。種々の出血症状を呈するが、重篤出血は稀である。通常、赤血球、白血球系に異常を認めず、骨髄では巨核球の増加を認めることが多い。ITPの診断は除外診断が主体であり、血小板減少をもたらす原因疾患や薬剤の関与を鑑別する必要がある。血小板減少は、血小板数10万/μL未満でと定義される。最近では、ITPにおいては血小板破壊亢進のみならず、巨核球の成熟障害や細胞傷害を生じており、血小板産生も抑制されていることが明らかにされている。

疫学

厚生労働科研難治性疾患克服事業の「血液凝固異常症に関する調査研究」班における報告(2004~2007年の特定疾患個人調査票の解析)では、本邦におけるITPの有病者数は約2万人で、年間発症率は約2.16人/人口10万人(年間新規発症::約3000人)と推計された。慢性ITPは20~40歳台の若年女性と60~80歳台のピークが認められ、高齢者の発症では男女比に差は認められない。
小児ITP例では80%が就学前に発症し、急性ITPが約75~80%を占め、ウイルス感染や予防接種を先行する場合が多い。急性ITPでは数週間で血小板が回復することが多いが、6ヶ月以上かけて自然軽快する症例も経験される。ITPはその発症様式と経過より急性型(6ヶ月以内に寛解)と慢性型(6ヶ月を越えて血小板減少が持続)に分類されるが、6ヶ月という期間が急性と慢性を分ける分岐点であるとは言い難く、あくまで便宜上の期間と言える。さらに、ITPの初回発症時に急性型と慢性型を区別することは極めて困難であり、実際には発症後6ヶ月経過した時点において6ヶ月以内に寛解したものを急性型、そうでないものを慢性型として分類することになる。

病因

病因は不明であり、抗血小板抗体産生の免疫学的機序の詳細は明らかにされていない。小児急性ITPではウイルス感染や予防接種を先行事象として有する場合が多い。

症状

急性型は小児に多く、ウイルス感染が多くの場合先行し、急激に発症し数週から数ヶ月の経過にて自然治癒することが多い。慢性型は徐々に発症し、推定発病から6ヶ月以上、年余にわたって経過し、発症時期が不明なことが多い。主要な臨床症状は出血であり、多くは皮下出血(点状出血又は紫斑) を認めるが、歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、頭蓋内出血なども起こり得る。紫斑や鼻出血を30~90%に、歯肉出血や下血、血尿を5~20%に認め、頭蓋内出血などの重篤出血は稀である(<0.5%)。これらの出血症状は何ら誘因がなく起こることが多く軽微な外力によって出血し易い一方、出血症状に気づかず他の理由でクリニック受診した際に偶然血小板減少を指摘されることもある。
一般的に出血傾向が明らかになるのは、血小板数5万/μL以下である。血小板数が1万~2万/μL以下に低下すると、口腔内出血、鼻出血、下血、血尿、頭蓋内出血などの重篤な出血症状が出現する。これらの出血は粘膜出血であるため"wet purpura"と呼ばれており、これら"wet purpura"の症状を呈した場合は入院の上、副腎皮質ステロイドやガンマクロブリン大量療法などの治療を考慮する。一方、患者によっては血小板3万/μL以下であっても、軽度の出血傾向しか呈さない症例もあり、この場合は外来での観察で充分である。

治療

出血症状、あるいは出血リスク(血小板2万/μl未満)を有する小児例に対する治療は、副腎皮質ステロイド(2mg/kg)、あるいはガンマグロブリン(IVIG)(1~2g/kg)が第一選択である。慢性ITPの場合、軽症例では血小板数1万/μl未満でも無治療経過観察が許容されるが、中等症では血小板数2万/μl以下の場合は治療介入を検討する。
慢性の難治性ITPには脾摘が適応とされ、有効性は約60~70%とされる。ステロイドやIVIG以外の薬剤治療としてアザチオプリンやシクロホスファミド、シクロスポリンなどの免疫抑制剤やダナゾールが試みられ有効な場合もある。最近では、リツキシマブやトロンボポイエチン(TPO)受容体作動薬など新規薬剤の治療が検討される。リツキシマブの長期的効果は脾摘に劣るが、相対的に副作用が少ない薬剤である。TPO受容体作動薬は小児における長期投与の安全性は未だ確立していないが、投与中の有用性および安全性は共に高い薬剤であり他薬剤を減量・中止が実現することで患者QOLの改善が期待できる。
厚労省研究班による「成人ITP治療の参照ガイド2012年版」では、ピロリ菌陽性である場合は除菌療法を行なうことを推奨している。さらにITPの治療を行なう上における治療の目標は、必ずしも血小板数を正常にもどすことにあるのではなく危険な出血を防ぐことにあり、血小板数を3万/μL以上に維持するのに必要な最小限の薬剤量の使用に留めるべきであるとしている。ただし、手術や外傷などの出血時には血小板数を安全な値まで(たとえば血小板数5万/μL以上)増加させる必要がある。

予後

小児ITPは大部分が急性型で6ヶ月以内に血小板数が正常に戻ることが多く、慢性型に移行するものは10~20%程度である。慢性化移行のリスクとしては初発時の年齢(10歳以上)、血小板数(2万/μl以上)ならびに先行感染・ワクチン接種の欠如などとされる。頭蓋内出血など重篤出血は稀で(<0.5%)で生命予後は良好であるが、慢性難治例では長期間薬剤投与の副作用や出血リスクによる生活上の制限などでQOLの低下が問題となる。

文献

  1. 日本小児血液学会ITP委員会:日本小児血液学会雑誌、18:210-218,2004
  2. Shirahata A et al. : J Pediatr Hematol Oncol 31 : 27-32, 2009
  3. Journeycake J M : Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 2012:444-449
  4. Kurata Y et al. : Int J Hematol 93:329-335, 2011
  5. 藤村欣吾他.: 臨床血液53:433-442, 2012
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会
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