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無セルロプラスミン血症

むせるろぷらすみんけっしょう

Aceruloplasminemia

告示番 号28
疾病名無セルロプラスミン血症
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概要・定義

 セルロプラスミンの欠損あるいは機能不全により生じる常染色体劣性遺伝形式の鉄代謝異常症である.中枢神経,肝臓,脾臓などを中心に多岐にわたる臓器に鉄が沈着する.

疫学

極めて稀な疾患である.セルロプラスミン遺伝子異常のホモ接合体の頻度は,約2000,000人に1人と推定されている1).

病因

 セルロプラスミン蛋白は,フェロオキシダーゼ活性を持ち,細胞膜の鉄輸送蛋白であるフェロポルチンを介して細胞外へ輸送された二価鉄 (Fe2+) を三価鉄 (Fe3+) に酸化して,Fe3+を鉄輸送蛋白であるトランスフェリンに受け渡す.本症ではセルロプラスミン遺伝子の異常によりこのフェロオキシダーゼ活性が低下し,Fe2+からFe3+への変換が障害され,鉄の細胞内貯蔵から血液中への移動が減少して細胞内に鉄が過剰蓄積する.

症状

 本症の三主徴は,糖尿病,網膜変性および中枢神経症状である2) .中枢神経症状としては,不随意運動(舞踏病様運動,振戦,ジストニアなど),小脳失調,認知症などがみられる.一般に糖尿病が神経症状より先行する.また,80%以上の症例にて小球性低色素性貧血が認められる.

診断

 上記した特徴的臨床症状に加え,血清セルロプラスミン値と血清銅値の低下があれば本症が疑われる.血清セルロプラスミン値は通常測定感度以下である.血清鉄は低下し,フェリチンは高値を示す.確定診断にはセルロプラスミン遺伝子解析が必要である(診断の手引き参照).

治療

 本症に対する体系的な治療法は検討されていない3).鉄キレート薬の投与や新鮮凍結血漿と鉄キレート薬の併用療法が行なわれている.鉄キレート薬はdefferoxamineなどが用いられている.また,腸管からの鉄吸収の抑制と酸化ストレスの低下を目的として,亜鉛薬療法も試みられている4).病初期からの抗酸化療法や糖尿病の適正なコントロールも進行抑制には重要である5).

予後

 神経症状は継時的の増悪し,高度のADL障害をきたす.死亡時年齢は60歳代が多く,死因に特定の傾向はみられない5).

成人期以降

 本症では糖尿病が30歳代前後,神経症状は40歳代以降に発症することが多い.また認知症は50歳代後半から出現する.成人期にはこれらの症状の出現と進行に注意が必要である.

参考文献

:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会
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