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ウィルソン(Wilson)病

うぃるそんびょう

Wilson disease

告示番 号25
疾病名ウィルソン病
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概要・定義

 常染色体劣性遺伝形式をとる先天性銅代謝異常症の代表的疾患である.肝臓をはじめ,大脳基底部,角膜および腎臓などに過剰な銅の沈着を認め,種々の臓器障害を呈する.

疫学

本邦での発症頻度は,35,000から45,000人に1人と推察される1).発症年齢は3歳から50歳代と幅広く分布しており,発症のピークは10-11歳である1).

病因

13番染色体長腕13q14.3に位置するATP7B遺伝子の異常により本症が発症する.

症状

 肝障害,錐体外路症状ならびにKayser-Fleischer角膜綸が3主徴である.幼児期以降の肝障害ならびに学童期以降に発症した神経症状をみた時には本症の可能性を考慮する.神経症状としては,構音障害,振戦ならびに歩行障害などが高い頻度にてみられる2).その他の症状としては,精神症状(特に思春期以降)や腎障害(血尿など)などがみられることもある.

診断

 上記した臨床症状,あるいはウイルソン病の家族歴などより本症を疑い,血清セルロプラスミン値と尿中銅排泄量の測定を行う.必要に応じ,肝銅含量測定あるいはATP7B遺伝子解析を行う.

治療

 銅キレート薬(D-ペニシラミンまたは塩酸トリエンチン)あるいは亜鉛薬(酢酸亜鉛)内服による除銅が治療の基本である.また低銅食療法も併用する.診断時の臨床症状と重症度によって初期治療に用いる薬剤を選択する.重症症例に対しては,銅キレート薬と亜鉛薬の併用を行う.急性あるいは慢性に肝不全に陥った症例は,肝移植の適応となりうる.

予後

 本症の予後は,診断ならびに治療開始時期と,服薬コンプライアンスの良否によって左右される.早期に診断され適切な治療が行われれば,十分な社会復帰あるいは発症の予防が可能である.また治療は生涯に渡って継続されねばならないため,良好な服薬コンプライアンスを保つことが本症の予後を良くするためには極めて重要である.

成人期以降

 本症では,治療によっても肝臓内の銅蓄積は完全には改善せず,銅含量は正常範囲まで低下しない.そのため,蓄積し続けた銅による影響,特に発癌が懸念される.成人期に至った症例に関しては,年1回程度の腹部画像検査が必要と考えられる.また,女性の患者においては妊娠・出産も可能であるが,妊娠中も治療を継続する必要がある.

参考文献

1. Aoki T, et al: Nationwide survey of clinical feature of Wilson’s disease in Japan. In Lam STS, Pang CCP, eds, Neonatal and Perinatal Screening: The Asian Pacific Perspectives, The Chinese University Press, Hong Kong, 1996; 25-28
2. 清水教一ほか:全国調査からみた神経型・肝神経型Wilson病の臨床像および肝銅含量に関する検討.脳と発達 1996; 28: 391-397
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会
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