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ゴーシェ(Gaucher)病

ごーしぇびょう

Gaucher disease

告示番 号118
疾病名ゴーシェ病
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概要・定義

ゴーシェ病は、グルコセレブロシダーゼ(別名β−グルコシダーゼ)の遺伝子変異によりグルコセレブロシダーゼ活性が低下あるいは欠損し、その基質である糖脂質のグルコセレブロシドが組織に蓄積するスフィンゴリピドーシスのひとつで常染色体劣性遺伝形式をとる。グルコセレブロシドは、体中のマクロファージに蓄積し、肝脾腫、骨痛や病的骨折、中枢神経障害を引き起こす。

疫学

日本におけるゴーシェ病の有病率は33万人に1人とされている。症状と発症時期により、後述する3つの病型に分類されるが、日本では欧米に比して、神経型が多い。

病因

ゴーシェ病は、ライソゾーム酵素の一つであるグルコセレブロシダーゼ(別名:β-グルコシダーゼ)の遺伝子異常に基づく、グルコセレブロシダーゼ活性低下のため、その基質であるグルコセレブロシドがマクロファージに蓄積し、組織障害を引き起こす。中枢神経系症状は、グルコセレブロシドのリゾ体であるグルコシルスフィンゴシンの脳内蓄積が影響していると考えられている。

症状

グルコセレブロシドが、肝臓、脾臓、骨髄に蓄積するため、肝脾腫、骨症状(病的骨折や骨クリーゼ)を認める。脾機能亢進により、貧血や血小板減少を認める。神経症状の有無と重症度により、I型(非神経型)、II型(急性神経型)、III型(亜急性神経型)に分類される。II型は乳児期に発症し、肝脾腫の他、精神運動発達遅滞、痙攣、項部後屈などの神経症状を認め、急速に進行する。II型のうち最重症型は、胎児水腫を呈し新生児期に発症する。III型は、衝動性眼球運動障害、精神運動発達遅滞・退行、痙攣、失調が認められる。本邦では神経型が過半数を占める。

診断

治療

酵素補充療法と対症療法がある。対症療法には、抗痙攣薬、抗痙縮薬、そして、リハビリ、気管切開、経管栄養などがある。酵素補充療法は、血液脳関門を十分に通過できないため、中枢神経症状に対する効果は乏しい。そのため、神経症状に対するシャペロン療法や遺伝子治療などの新規治療法の開発が期待されている。また、グルコセレブロシド類似物質による基質合成阻害剤が開発されており、経口薬であることが最大の利点で、効果が期待されている。

予後

I型の予後は、酵素補充療法により劇的に改善した。しかし、神経型であるII型の生命予後は不良で、2歳までに死亡するとされるが、酵素補充療法によって長期生存例も認められ始めている。III型の中には、病初期には神経症状を呈さずにI型としてフォローされている場合があり、そのようなIII型は、始めから神経症状を認める症例に比較して予後は良好であると報告されている。

成人期以降

日本人ゴーシェ病III型患者のうち、発症時はI型と診断され、のちに神経症状を呈してIII型と診断される移行例は、III型全体の約42.9%であり、I-III型を含めたゴーシェ病患者全体の約12.4%を占めており、ゴーシェ病I型患者でも神経症状に注意しながらフォローすることが大切である1)2)。酵素補充療法は神経型への効果に乏しいため、予後の改善のためには対症療法も重要である。

参考文献

1. Tajima, A. et al. Clinical and genetic study of Japanese patients with type 3 Gaucher disease. Mol Genet Metab 2009;97:272-277
2. 井田博幸. ライソゾーム病-最新の病態,診断,治療の進歩-. 衛藤義勝(編),初版, 診断と治療社, 2011; 144-148
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会
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