89

ニーマン・ピック(Niemann-Pick)病

にーまん・ぴっくびょう

Niemann-Pick disease

告示番 号125
疾病名ニーマン・ピック病
診断手引き、医療意見書等のダウンロードはこちら

概要・定義

ニーマン・ピック(Niemann-Pick)病は、酸性スフィンゴミエリナーゼが欠損するA型、B型とNPC1またはNPC2蛋白の異常によって起こるC型に分類される。いずれも常染色体劣性遺伝形式を示す遺伝病である。肝臓、脾臓、骨髄の網内系細胞と神経細胞にスフィンゴミエリン、コレステロール、糖脂質などが蓄積する。発症頻度は12万人に1人とされる。A型は乳児期に発症し、肝脾腫、精神運動障害、垂直方向の眼球運動障害が見られる。B型は小児期に発症し、肝脾腫が主体であり、神経症状は伴わない。C型の発症年齢は様々で、肝脾腫、カタレプキシー、垂直眼球運動障害、失調、ジストニア、痴呆などの神経症状を呈する。成人発症では痴呆、抑うつ症状などの精神症状を主体とする例もある。

疫学

日本ではA型とB型の罹患率は、10万人あたり0.5人-1人とされており、B型の患者さんの方が比較的多い。C型の発症頻度は12万人に1人とされる。

病因

A型、B型の原因はSPD1(sphingomylelin phosphodiesterase 1)遺伝子の変異による。点変異、欠失、スプライス異常など100以上の遺伝子変異が報告されている。C型は、NPC1遺伝子またはNPC2遺伝子の変異による。NPC遺伝子は、細胞内コレステロール輸送に関係する遺伝子であるが、細胞内には遊離型コレステロールのみならず、GM1ならびにGM2などのガングリオシドなど蓄積する。

症状

 A型は、乳児期早期から肝脾腫が著明であり、筋緊張低下、哺乳障害、嘔吐などが出現するし、成長障害が認められる。6ヶ月以降、精神運動発達障害が明らかとなり、急速に神経症状が進行する。症状が進行した患者では、眼底にチェリー・レッドスポットが見られる。
 B型は、A型よりも症状は軽く小児期以降に発症する。肝脾腫が初発症状であることも多い。肝脾腫の程度は様々であり、肝障害が進行し、肝硬変、門脈圧亢進、腹水を伴うこともある。また、血液検査では低HDL血症が特徴的で、脾機能亢進により血小板減少が認められることがある。胸部X線写真では、肺浸潤像が認められ、肺拡散障害が年齢とともに進行する。眼底のチェリー・レッドスポットは約1/3の患者さんに認められるが、目立った中枢神経症状はほとんどない。
 C型は、新生児期の死亡から成人期に発症する患者さんまで幅広い発症年齢と症状がある。新生児発症では、胎児水腫、胎児腹水で発症する患者さんもおり、胆汁うっ滞型横断と肝脾腫を示す患者が多い。肝脾腫、肺症状などの身体症状は神経症状より早期に出現することが多い。脾腫は年齢とともに目立たなくなる。また、肝脾腫を認めない患者さんもいる。神経症状は、小脳失調、構音障害、燕下障害、知的障害、痙れん、ジストニアなどが進行する。核上性垂直性眼球運動障害とカタプレキシー(笑うと力が抜ける)は本症に特徴的である。成人発症例には精神症状も多い。

診断

 A型、B型では、骨髄中の泡沫細胞(ニーマンピック細胞)が特徴的で診断に有用。確定診断には、末梢リンパ球や培養皮膚線維芽細胞の酸性スフィンゴミエリナーゼの酵素活性を測定する。酵素活性が低値(10%以下)の時には、本症と診断できる。B型の残存酵素活性はA型よりやや高い。遺伝子診断としては、SPD1遺伝子変異を検出する。
 C型断では、骨髓の泡沫細胞の確認と皮膚線維芽細胞のフィリピン染色による遊離型コレステロールの蓄積を確認することが診断に有用である。遺伝子診断としてはNPC1、NPC2の遺伝子変異を検出する。

治療

A型やB型患者さんには、骨髄移植が試みられているがA型の神経症状には無効であり、本治療の有効性に関してのエビデンスは乏しい。現在、B型患者さんに対する酵素補充療法が開発されつつあり、米国で臨床研究が進められている。
C型では、ガングリオシド合成系の酵素を阻害するMilglustat(ブリーザベス)が治療薬として承認されており、神経症状にある程度の効果が期待できる。また、シクロデキストリンの髄注による臨床研究が日本でも進められている。

予後

A型は予後不良で、ほとんどの患者さんが3歳前後に死亡する。B型は緩徐進行性の経過をとることが多い。C型では、新生児発症では予後不良が多く、低年齢での発症は神経症状の進行が早い。

成人期以降

 B型は成人期以降に肝脾腫などの症状で発症することがあり、成人においても鑑別診断に入れておく必要がある。C型では、成人期以降に精神症状で発症する例があり注意を要する。

参考文献

小山千嘉子、高橋勉:ニーマン・ピック病A、B型. 別冊日本臨床 新領域別症候群 No.20 先天代謝異常症(第2版) 下—病因・病態研究、診断・治療の進歩—:472-475,2012.
檜垣克実:ニーマン・ピック病C型. 別冊日本臨床 新領域別症候群 No.20 先天代謝異常症(第2版) 下—病因・病態研究、診断・治療の進歩—:599-603,2012.
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会
「小児慢性特定疾病の対象疾患について」に戻る