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フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症

ふるくとーすいちろくびすほすふぁたーぜけっそんしょう

Fructose-1,6-bisphosphatase deficiency

告示番 号73
疾病名フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症
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概要・定義

フルクトース-1,6-ビスフォスファターゼ(FBPase)は、アミノ酸からの糖新生において、フルクトース-1,6-二リン酸からフルクトース-6-リン酸への変換を行う酵素である。FBPase欠損症は、常染色体劣性遺伝形式をとり、飢餓時に低血糖、代謝性アシドーシス、高乳酸血症、ケトン体産生増加をきたす。

疫学

欧米を中心に多くの家系が報告されている。正確な頻度は不明である1)。

病因

原因遺伝子であるFBP1遺伝子は、染色体9q22.2-22.3に座位する。アミノ酸からピルビン酸を経由するグルコース産生が障害されているため、飢餓時にグリコーゲンが消費されると低血糖を来す。ピルビン酸の過剰蓄積による高乳酸血症や、脂肪酸β酸化の促進によるケトン体産生増加がみられる。フルクトースとグリセロールの代謝も障害されているため、これらの投与によりATPやリンが消費され、解糖系からのグルコース産生が減少する結果、急性増悪状態に陥る。

症状

FBPase欠損症患者の約半数は、新生児期早期に多呼吸、易刺激性、意識障害、無呼吸、頻脈、肝腫大などを呈して発症する2)。その他の症例の多くは、乳幼児期に感染症罹患などによる飢餓状態に伴って嘔吐、意識障害、痙攣などを来して発症する。

診断

1) 一般検査
発作間歇期には、通常は異常所見を認めない。急性増悪時には、著しい低血糖と代謝性アシドーシス、血中乳酸・ピルビン酸上昇、血中・尿中ケトン体上昇、血中アラニン上昇を認める。
2) 特殊検査
急性増悪時の尿有機酸分析にて、グリセロール3-リン酸の増加、グリセロールに対するグリセロール3-リン酸の比の上昇が認められる。
3) 確定診断
酵素活性は、生検肝を用いて測定されるが、培養末梢血単核球を用いても測定可能である。FBP1遺伝子解析による確定診断も行われる。

治療

1) 急性期
充分な量のブドウ糖を輸液にて投与し、アシドーシスを炭酸水素ナトリウムで補正する。輸液製剤は乳酸を含まないものを選択する。グリセリン製剤の投与を避ける。
2) 発作間歇期
長時間の飢餓を避け、感染症などで経口摂取困難な時や嘔吐のある時には、積極的にブドウ糖の輸液を行う。果糖の摂取は、同時にブドウ糖やガラクトースを摂取する時以外は避ける。

予後

急性増悪時に適切治療が行われなければ死亡したり重篤な神経障害を遺したりすることがあるが、通常は生命予後良好であり、成長発達ともに障害されない2)。急性増悪発作は、年齢とともに頻度が減少する。

成人期以降

成人期以降にも急性増悪発作を来すことがあるため、飢餓予防などについて本人の理解が重要である。妊娠時やアルコール過剰摂取時の低血糖発作にも注意する。

参考文献

1) Herzog B, et al. Mutation spectrum in patients with fructose-1,6-bisphosphatase deficiency. J Inherit Metab Dis 2001; 24: 87-88
2) Steinmann B, et al. Disorders of fructose metabolism. In: Scriver CR, et al (eds). The metabolic and molecular basis of inherited disease. : McGraw-Hill, New York, 2001; 1491
3) Hasegawa Y, et al. Intravenous glycerol therapy should not be used in patients with unrecognized fructose-1,6-bisphosphatase deficiency. Pediatr Int 2003; 45: 5-9
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会
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