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ミトコンドリアDNA欠失(カーンズ・セイヤー(Kearns-Sayre)症候群を含む。)

みとこんどりあでぃえぬえーけっしつ(かーんず・せいやーしょうこうぐんをふくむ。)

Diseases due to mitochondrial DNA deletion

告示番 号93
疾病名ミトコンドリアDNA欠失(カーンズ・セイヤー症候群を含む。)
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概要・定義

ミトコンドリアはほとんど全ての細胞に存在する細胞内小器官であり、その最大の役割はエネルギー(ATP)の生合成である。ミトコンドリアの働きが低下することが原因で起こる病気を総称しミトコンドリア病と呼び、病気の主座がどこであるかによりミトコンドリア脳筋症・肝症・心筋症などに分けられるが、全てのミトコンドリア病で全身の症状が発現する危険がある。ミトコンドリア病の症状の多くはエネルギー産生不足に起因するのでエネルギーを大量に必要とする臓器・組織に症状が現れやすく、特に幼小児期には、①脳筋症状に加えて、②消化器・肝症状、③心筋症状が3大症状とされる。従来からミトコンドリア病の中心的存在であった、いわゆる‘ミトコンドリア脳筋症’は、比較的軽症のミトコンドリア病に属し、年長・成人発症例に多い。

疫学

ミトコンドリア病全体では5,000出生に1人の頻度であるが、各病型の患者は希少疾患に属する。

病因

ここではミトコンドリアDNA欠失の場合の原則を述べる1,2) 。DNA点変異と重複の場合の原則は56の項を参照されたい。単一欠失は、通常発端者は突然(de novo)変異で発症する。遺伝する場合は母系遺伝形式を取るが、非罹患母からの遺伝は報告がない。罹患母における次子再発危険率も経験的に24人に1人2)とされ、決して高くはない。さらに、染色体異常とは異なりde novo変異の発症率と母の年齢にも相関はない2)。多発欠失の場合は核に病因遺伝子が存在し、常染色体優性・劣性遺伝形式を取ることには注意が必要である。

症状

いわるる4大臨床病型をいわれるものを表1に示す1)。

診断

治療

対症療法が中心である。発作時はエネルギー消費を抑えるため安静・睡眠が奨励される。糖質制限と脂質優先摂取、バルプロ酸などのミトコンドリア毒を避けること、発作時にはL-カルニチン、コエンザイムQ、ビタミンB1・Cを中心とするビタミンカクテル療法を行う。いくつかの原因療法も考案中であり、中でもMELASに対するL-アルギニン療法はまもなく保険認可される見通しである。他に治験が進行ないし計画中の薬剤として、ピルビン酸ナトリウム、PBI-743、5-アミノレブリン酸などがあげられる。

成人期以降

病型により千差万別であり一概には言えないが、多くのミトコンドリア病の患者は大小のハンディキャップを背負いつつ成人期に移行する。年少の内から、小児科医は成人各科医師との移行期医療を模索しつつ診療に当たる必要がある。そのための重症度分類も、9つのセクション(日常生活動作(ADL)、高次脳機能、運動、視覚、聴覚、心合併症、腎機能、血液機能、肝機能)から成るミトコンドリア病の症状の多様性に配慮したものが、診断基準に続いて難病ホームページに公開されている。

参考文献

:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会
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