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三頭酵素欠損症

さんとうこうそけっそんしょう

Trifunctional protein (TFP) deficiency

告示番 号46
疾病名三頭酵素欠損症
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概要・定義

細胞内に取り込まれた長鎖脂肪酸は、ミトコンドリア内で脂肪酸の炭素長に応じた各脱水素酵素で順次代謝され、1ステップごとに炭素鎖が2個ずつ短くなってアセチルCoAに至り、エネルギー産生に寄与している。
三頭酵素(TFP)はミトコンドリア内膜に存在し、極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)に引き続いて炭素鎖16〜12付近の長鎖脂肪酸のβ酸化を行う、長鎖エノイルCoAヒドラターゼ(LCEH)、長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(LCHAD)、長鎖3-ケトアシルCoAチオラーゼ(LCKT)の3つのドメインをもつ酵素蛋白である。これら3つの酵素活性がすべて欠如している場合をTFP欠損症、LCHAD活性のみ欠如している場合をLCHAD欠損症とよぶ。わが国ではTFP欠損症の報告が多く、LCHAD欠損症の報告はない。

疫学

わが国における新生児マススクリーニングの結果によると約100万人に1人よりも稀な発見頻度である。遺伝形式は常染色体劣性である。

症状

臨床像は幅広く、新生児期もしくは乳児期早期から重度の心筋症や低血糖をきたし、生命予後の改善が困難である症例から、乳幼児期にライ様症候群で発症する症例、幼児期以降に横紋筋融解症を呈する症例、成人期における筋痛、筋力低下のみの場合もある。タンデムマスによる新生児マススクリーニングの対象疾患である。

診断

治療

急性期の治療
急性期は対症的な治療に加え、十分量のブドウ糖を供給し、早期に異化亢進の状態を脱する事が重要である。急性脳症様/ライ様症候群様発作として発症した場合は中心静脈ルートを確保し、グルコース投与量を6-8mg/kg/min以上を目安とする。

慢性期の治療
① 異化亢進の予防
発熱を伴う感染症や消化器症状(嘔吐・口内炎など)の際は、糖分を十分に摂るように指導し、経口摂取が出来ない時には、医療機関に救急受診し、血糖値をモニターしながら早期にブドウ糖を含む補液を行うことは、重篤な発作を防ぐためにも重要である。
② 食事療法
特に乳幼児においては食事・哺乳間隔を短く保ち、飢餓による低血糖を防ぐことが重要である。
1. MCTミルクの使用
 長鎖脂肪酸の摂取は最小限にすべきである。必須脂肪酸強化MCTフォーミュラを用い、離乳後はMCTオイルを利用する。
2. 非加熱コーンスターチの使用
 夜間低血糖を繰り返す場合、1-2g/kg/回程度を投与する。
③ L-カルニチン投与
 海外ではL-カルニチン補充は推奨されていない。国内での統一した意見は得られていないが、少なくとも過剰量のL-カルニチン投与は必要ないと考えられている。急性期の静注によるL-カルニチンの投与は禁忌である。
④ Docosahexanoic acid (DHA)補充
 効果は限定的で、網膜機能の低下を防げなかったが、視力の非特異的改善がみられたという報告がある。欧米では推奨されている。
⑤ 運動制限
 過剰な運動は横紋筋融解を引き起こすので避けることが望ましい。

予後

新生児期発症型は、通常生後1週以内に発症し、死亡することが多い.乳幼児期発症型は、いわゆるReye様症候群として発症した場合、低血糖発作の後遺症として発達障害をきたすことも多い。長期経過のなかで末梢神経障害、網膜障害などをきたす症例もあり、スクリーニング、早期治療においても防げない可能性が報告されている。
なお、胎児が本疾病に罹患していると、ヘテロ保因者である母親が妊娠中にHELLP症候群をきたすことがある。

参考文献

:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会
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