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先天性胆汁酸代謝異常症

せんてんせいたんじゅうさんたいしゃいじょうしょう

Inborn errors of bile acid metabolism

告示番 号107
疾病名先天性胆汁酸代謝異常症
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概要・定義

先天性胆汁酸代謝異常症とは、胆汁酸生合成経路(neutral pathwayとacidic pathway)の遺伝性酵素欠損を1次性の病因とするもので、中間代謝産物である異常胆汁酸もしくは胆汁アルコールの肝細胞内蓄積により肝機能障害を生じる疾患である。現在、8種類(3-hydroxy 5-C27-steroid dehydrogenase/isomerase 欠損症、4-3-oxosteroid 5-reductase 欠損症、sterol 27-hydroxylase 欠損症、oxysterol 7-hydroxylase 欠損症、bile acid-CoA: aminoacid N-acyltransferase 欠損症、bile acid-CoA ligase 欠損症、-methylacyl CoA racemase 欠損症、cholesterol 7-hydroxylase 欠損症)が報告されている(本邦では3種7例の報告がある:3-hydroxy 5-C27-steroid dehydrogenase/isomerase 欠損症3例、4-3-oxosteroid 5-reductase 欠損症3例、oxysterol 7-hydroxylase 欠損症1例)。

疫学

遺伝形式は常染色体劣勢遺伝である。発生頻度は、原因不明な胆汁うっ滞症の2 %前後と推測される。

病因

上記8種類(3-hydroxy 5-C27-steroid dehydrogenase/isomerase (HSD3B7)、4-3-oxosteroid 5-reductase (SRD5B1)、sterol 27-hydroxylase (CYP27A1)、oxysterol 7-hydroxylase (CYP7B1)、bile acid-CoA: aminoacid N-acyltransferase (BAAT)、bile acid-CoA ligase (SRC27A5)、-methylacyl CoA racemase (AMACR)、cholesterol 7-hydroxylase (CYP7A1))の酵素の遺伝子異常により発症する。

症状

黄疸、時に灰白色便、濃黄色尿を主訴とし、閉塞性黄疸を伴う肝機能障害で、進行すれば肝腫、脾腫を認める。血液検査では、直接ビリルビン優位の高ビリルビン血症、肝胆道系逸脱酵素 (AST、ALT、-GTP) の上昇、総コレステロールの上昇、脂溶性ビタミンの欠乏、などが認められる。

診断

1. 一般検査:閉塞性黄疸があるにもかかわらず、血清-GTPと総胆汁酸値が正常値を示す。先天性胆汁酸代謝異常症で検出される異常胆汁酸は胆管へ排泄されにくい。そのため血清-GTPは上昇しない。また、血清総胆汁酸値は、現行の測定方法では検出されないため正常値か低下を示す。
2. 特殊検査:GC/MSによる血清•尿中胆汁酸分析を行い、疾患特異的異常胆汁酸を検出し、定量する。これにより、どの先天性胆汁酸代謝異常症か特定される。
3. 確定診断:ダイレクトシークエンス法による遺伝子解析により確定診断する。

ただし、本症の抱合不全型2種(bile acid-CoA: aminoacid N-acyltransferase 欠損症、bile acid-CoA ligase 欠損症)は、血清-GTPは正常値、総胆汁酸値が高値を示す。また、-methylacyl CoA racemase 欠損症は、血清-GTPと総胆汁酸値が高値を示す。よって、診断には注意を要する。尚、cholesterol 7-hydroxylase 欠損症は、成人で高コレステロール血症を起こす事は知られているが新生児•乳児期の胆汁うっ滞症の報告は未だない。

治療

早期発見されれば、1次胆汁酸療法(本邦ではケノデオキシコール酸 (5-10mg/kg/day)を使用)、脂溶性ビタミンの補充がおこなわれる。進行し慢性胆汁うっ滞性肝硬変になれば肝移植となる。抱合不全型2種には、ウルソデオキシコール酸 (5-10mg/kg/day)が使用されるが、bile acid-CoA: aminoacid N-acyltransferase 欠損症にはグリココール酸 (15mg/kg/day) の使用報告もある(文献5)。

予後

早期発見されれば予後は良好。発見が遅れれば肝移植となる。

成人期以降

少なくとも年1〜2回の肝機能検査、GC/MSを用いた胆汁酸分析を行う。1次胆汁酸療法あるいは胆汁酸置換療法(bile acid replacement therapy)すなわちウルソデオキシコール酸療法を行えば健康人と同等の生活が送れると思われる。治療中に妊娠、出産をした女性も報告された(文献1)。しかし、先天性胆汁酸代謝異常症は、症例数が少なく成人移行期以降の経験が少ないため十分な観察が必要である。

参考文献

1. Nittono H, Takei H, Unno A, et al: 3-Hydroxy-5-C27-steroid dehydrogenase/isomerase deficiency in a patient who underwent oral bile acid therapy for 10 years and delivered two healthy infants. Pediatr Int 52:e192-e195, 2010.
2. Clayton PT: Disorders of bile acid synthesis. J Inherit Metab Dis 34: 593-604, 2011.
3. Seki Y, Mizuochi T, Kimura A, et al: Two neonatal cholestasis patients with mutations in the SRD5B1 (AKE1D1) gene: Diagnosis and bile acid profile during chenodeoxycholic acid treatment. J Inherit Metab Dis 36:565-573, 2013.
4. 水落建輝, 木村昭彦: 遺伝性胆汁うっ滞症. 日児誌 118: 1053-1064, 2014.
5. Heubi JE, Setchell KDR, Jha P, et al: Treatment of bile acid amidation defects with glycocholic acid. Hepatology 61: 268-274, 2015.
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会
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