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複合カルボキシラーゼ欠損症

ふくごうかるぼきしらーぜけっそんしょう

multiple carboxylase deficiency

告示番 号108
疾病名複合カルボキシラーゼ欠損症
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概要・定義

ビオチン代謝に関連するホロカルボキシラーゼ合成酵素もしくはビオチニダーゼ遺伝子の異常により4種類のカルボキシラーゼ(プロピオニルCoAカルボキシラーゼ(PCC)、メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ(MCC)、ピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC))が同時に活性低下を来す疾患である。

疫学

日本におけるホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症の頻度は1/100万程度、ビオチニダーゼ欠損症はさらにまれ

病因

先天性ビオチン代謝異常では上記4つの複合カルボキシラーゼ欠損症となる.先天性ビオチン代謝異常症はホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症とビオチニダーゼ欠損症の2種類に大別される。臨床像はホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症では 一般に新生児期=乳児期早期に嘔吐、筋緊張低下で発症し、やがて難治性湿疹、けいれんをきたす.ビオチニダーゼ欠損症では乳児期以降に、筋緊張低下、難治性湿疹様皮膚病変をきたす.ともに薬理量のビオチン(10-100 mg/日)の経口投与により臨床的、生化学的にも軽快する。

症状

ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症では、呼吸障害・多呼吸・けいれん・意識障害などで急性に発症し、代謝性アシドーシス・ケトーシス・ 高アンモニア血症・ 低血糖・高乳酸血症などの検査異常を呈し、新生児期と、乳幼児期に発症のピークがみられる。一方慢性進行型として、食思不振・反復性の嘔吐などが見られ、難治性の湿疹がしばしば認められ、感染などを契機に症状の悪化がみられるタイプもある。ビオチニダーゼ欠損症では乳児期以降に、筋緊張低下、難治性湿疹様皮膚病変をきたす.

診断

尿有機酸分析で上記4つの酵素欠損に由来する代謝産物の同定によりビオチン欠乏を診断可能。栄養性ビオチン欠乏症と先天性ビオチン欠乏症の鑑別などは手引き参照

治療

急性期治療は他の有機酸代謝異常症に準じる。ともに薬理量のビオチン(10-100 mg/日)の経口投与により臨床的、生化学的にも軽快する。

予後

急性期に意識障害、無呼吸、筋緊張低下、けいれんなどを認めることがある。また、急性代謝不全の後遺症として,もしくは代謝異常が慢性的に中枢神経系に及ぼす影響によって,全般的な精神運動発達遅滞を呈することが多い

成人期以降

治療は生涯継続する必要があり、ビオチン内服を怠ると成人でもアシドーシス発作が急性増悪する可能性がある

参考文献

1) 鈴木洋一 ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症(早発型(新生児型)マルチプルカルボキシラーゼ欠損症) 先天代謝異常症候群(第2版)下 日本臨牀別冊(新領域別症候群) 295-298, 2012
2) 鈴木洋一 ビオチニダーゼ欠損症(遅発型マルチプルカルボキシラーゼ欠損症) 先天代謝異常症候群(第2版)下 日本臨牀別冊(新領域別症候群) 299-301, 2012
3) Aoki Y, Suzuki Y, Sakamoto O, et al. Molecular analysis of holocarboxylase synthetase deficiency: a missense mutation and a single base deletion are predominant in Japanese patients. Biochim Biophys Acta 1272:168-174, 1995
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会
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