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高チロシン血症1型

こうちろしんけっしょういちがた

Tyrosinemia type 1

告示番 号8
疾病名高チロシン血症1型
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概要・定義

チロシンは食事に含まれるアミノ酸の一つとして、また フェニルアラニンの代謝産物として得られる。生体内でフェニルアラニンはフェニルアラニン水酸化酵素によってチロシンへと変換される。チロシンはチロシン アミノ基転移酵素によって4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、続いて4-ヒドロキシフェニルピルビン酸酸化酵素によってホモゲンチジン酸、ホモゲンチジン 酸酸化酵素によってマレイルアセト酢酸、マレイルアセト酢酸イソメラーゼによってフマル酸とアセト酢酸に分解される。高チロシン血症は、I型、II型、 III型の3つの病型に分類されている。これらの疾患は、遺伝的・酵素学的に別の疾患であり、臨床症状出現の機序も異なる。遺伝形式はいずれも常染色体劣 性である。高チロシン血症I型はフマリルアセト酢酸ヒドラーゼが欠損によって、高チロシン血症II型は細胞質チロシンアミノ基転移酵素の欠損によって、高 チロシン血症III型は4-ヒドロキシフェニルピルビン酸酸化酵素の欠損によって発症する。

疫学

常染色体劣性の遺伝形式をとり、15番染色体長腕(15q23-q25)上に原因遺伝子であるFAHが存在する。世界における頻度は10万~12万人に1人と推定されている。わが国における頻度はさらに低いと考えられている。

病因

フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH: EC 3.7.1.2 )が欠損することによって細胞内に蓄積するフマリルアセト酢酸の毒性のために種々の病態が生じる。肝細胞では遺伝子発現の異常、酵素活性の阻害、アポトーシス、染色体の不安定および癌化が生じている。

症状

肝実質細胞と近位尿細管細胞の障害を認める。臨床的には、進行する肝障 害と腎尿細管障害が特徴である。急性型、亜急性型、慢性型の3つの病型があり、急性型では生後数週から始まる肝腫大、発育不良、下痢、嘔吐、黄疸などが見 られる。重症例では肝不全へ進行し、無治療であれば生後2ー3ヶ月で死亡する。亜急性型では、生後数ヶ月から1年程度で肝障害を発症する。
合併症として、肝硬変、肝不全に至る。肝臓癌を発生する症例も多く、多発性腫瘍も報告 されている。腎臓では尿細管機能障害が出現し、低リン血性くる病、ビタミンD抵抗性くる病などが認められる。また、腹痛発作、ポリニューロパチーなどの急 性間欠性ポルフィリン症に類似した症状が出現する。

診断

治療

国内未承認薬であるニシチノンを使用し、食事療法(低フェニルアラニ ン・低チロシン食)を併用する。早期に治療を開始すると約90%がNTBCに反応するといわれている。治療の効果判定には肝機能検査と血清αフェトタンパ ク値の測定が有用である。

予後

血清αフェトタンパクを正常範囲に保つことができれば予後が期待できる。NTBCを使用しない例では肝不全に至ることが多く、肝移植が行われる。

成人期以降

ニチシノン(NTBC)による治療は生涯続ける必要がある。また、経過中に肝がんを発症することがあるため、定期的な画像検査、血液検査が必要である。

参考文献

1. 遺伝性高チロシン血症 中村公俊、遠藤文夫 小児疾患診療のための病態生理2 小児内科41増刊号 (2009)
2. 高チロシン血症(1)遺伝性高チロシン血症I型 中村公俊 遠藤文夫 先天代謝異常症候群 別冊日本臨床 新領域別症候群19 (第2版) 159-161日本臨床社 (2012)
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会
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