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ハートナップ(Hartnup)病

はーとなっぷびょう

Hartnup disease

告示番 号15
疾病名ハートナップ 病
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概要・定義

腎尿細管および小腸上皮に局在する中性アミノ酸輸送体の異常による常染色体劣性遺伝疾患で、尿中への大量の中性アミノ酸排泄が特徴である。おもな臨床像はペラグラ様皮膚炎、小脳失調症、精神運動発達遅延などであるが、無症状例も多い1)2)。

疫学

我が国では稀であるが、欧米での頻度は3万人に1人とされている。

病因

Hartnup病の原因遺伝子SLC6A19は5p15.33に局在し12エクソンから成る。その遺伝子産物である中性アミノ酸トランスポーターB0AT1は634アミノ酸で構成され、12膜貫通部位を有する3)4)。
本症の病態は腎尿細管および小腸上皮における中性アミノ酸輸送体の異常であることより中性アミノ酸欠乏によるものが想定されるが、実際にはトリプトファンの欠乏症状で説明されている。トリプトファンは体内に入り、ニコチン酸とセロトニン合成の出発点となる。本症で特徴的なペラグラ様発疹や小脳失調症状はニコチン酸の欠乏症状と類似しており、トリプトファンの吸収障害によるニコチン酸の合成低下が原因と考えられる。また患児ではセロトニンの代謝産物である5-ヒドロキシアセト酢酸が髄液中で低下していることが報告されており1)、脳内でのセロトニン欠乏が精神神経症状の原因になっている可能性がある。

症状

特徴的なのは皮膚症状で、日光過敏性のペラグラ様皮膚炎を呈する。発症年齢は乳児期~10歳代前半と様々である。神経症状では間歇的小脳運動失調症状が多く見られ、しばしば眼振、複視、振戦などの合併が見られる。精神症状や知能障害、けいれん、注意欠陥多動障害などの報告もある。神経精神症状のみで皮膚症状を伴わない例も報告されているので注意が必要である。慢性下痢、体重増加不良、脂肪肝、肝不全などの消化器症状も報告されている。しかし、尿のマススクリーニングで発見された症例は無症状のものがほとんどであり、発症には遺伝素因に加えて環境要因や修飾遺伝子の関与が想定されている1)。
検査上の特徴は中性アミノ酸の尿中排泄増加である。脳MRI検査では一部の症例で脳萎縮、髄鞘化の遅延、脳梁低形成が報告されている。

診断

治療

ニコチン酸(ニコチン酸アミド散10%)を50-300mg/日投与することにより皮膚、神経症状の改善が見られる。難治性下痢で低蛋白血症を伴う場合には高蛋白食事療法や一部の症例で中心静脈栄養が試みられている。トリプトファン欠乏に対して腸からの吸収を可能にするため脂溶性のトリプトファンエチルエステルにしたものを経口的に投与し、症状の改善が得られたという報告がある1)。

予後

多くの場合、早期よりニコチン酸アミドを投与することで予後は良好である。一部に重篤な経過をとった症例が報告されているが、他の要因が加味されている可能性がある。

参考文献

文献
1) Levy H. Hartnup disorder. in The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease (eds. Scriver CR et al.) , McGraw Hill, New York, 2001; 4957–4969
2) Baron DN et al. Hereditary pellagra-like skin rash with temporary cerebellar ataxia. Constant renal amino-aciduria, and other bizarre biochemical features. Lancet 1956; 2: 421-428
3) Kleta R et al. Mutations in SLC6A19, encoding B(0)AT1, cause Hartnup disorder. Nat Genet2004; 36: 999 – 1002
4) Seow HF et al. Hartnup disorder is caused by mutations in the gene encoding the neutral amino acid transporter SLC6A19. Nat Genet 2004; 36: 1003 – 1007
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会
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