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1型糖尿病

いちがたとうにょうびょう

Diabetes mellitus type 1

告示番 号1
疾病名1型糖尿病
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概念・定義

糖尿病は、インスリンの分泌不全、インスリン抵抗性、あるいはその両者による慢性的な高血糖によって特徴づけられる代謝異常と定義される。1型糖尿病は、膵β細胞の破壊による内因性インスリン不足により発症し、通常は絶対的なインスリン欠乏に陥るものである。従って、1型糖尿病の治療の基本は、インスリン補充療法である。

疫学

日本人1型糖尿病(0-14歳発症)の平均年間発症率は、1.4~2.2/年間100,000人)と白人に比し、非常に低い。白人、特にヨーロッパ(フィンランド、サルディニア、スウェーデン、英国)とカナダ (20/年間100,000人)では高い。この1型糖尿病の有病率の民族間の差は、遺伝因子と環境因子の違いによるものと考えられている。
小児慢性特定疾患治療研究事業(小慢事業)に2001年~2011年に新規登録された1型糖尿病症例数の年次推移をみると、1型は年間500~600例で大きな変化は見られない。診断時(発症)年齢の分布をみると、1型では幼児期と10~13歳にピークがある。

病因

1型糖尿病は、膵β細胞の破壊による内因性インスリン不足により発症し、通常は絶対的なインスリン欠乏に陥るものである。1型糖尿病は、ほとんどが膵ベータ細胞に対する自己免疫反応によって、インスリン産生細胞が破壊されることにより発症する。
1A型では、治療の基本は免疫抑制剤治療になるはずであるが、糖尿病が発症している時期には、既に膵ベータ細胞は90%以上破壊されてしまっているので、診断後では免疫抑制剤は無効である。
膵ベータ細胞に対する自己免疫反応が証明されないものは、特発性(1B型)と呼ばれる。1B型の中にはウイルス感染によるものがある。小児ではまれであるが、急激に発症し糖尿病ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis: DKA)に陥る劇症1型糖尿病もある。また、当初1B型と診断されたものの中にインスリン遺伝子(INS)、KCNJ11、MODY遺伝子などの単一遺伝子異常によるものが紛れ込んでいる可能性がある。

症状

診断の病期により症状は様々である。無症状の症例から口渇、多飲、多尿を示す症例、さらにDKAで発症する症例がある。
DKAとは、高血糖(300mg/dl以上)、ケトーシス(血中総ケトン体>1000μmol/l)あるいはケトン尿、およびアシドーシス(血液pH <7.30、HCO3- <15 mEq/l)を伴っている病態と定義される。意識レベルの低下を認めることもある。DKAは1型糖尿病の発症時、あるいは管理中のインスリン中断、胃腸炎や種々の感染症などの要因(シックデイ)に伴って発症する。

診断

糖尿病の診断基準は、成人と共通である。ただし、新生児・乳児期にはHbFの影響を受けるため、HbA1cは用いることができない。また、感染症や痙攣に伴って高血糖(ストレス高血糖)がみられるので、血糖値の評価は慎重に行うべきである。
自己免疫関与の診断のために、血中GAD抗体、IA-2抗体など、膵島関連自己抗体を測定する。自己抗体陽性であれば、自己免疫性(1A型)であり、自己抗体陰性(自己免疫の関与が明らかでない)の場合は、特発性(1B型)に分類される。
残存膵β細胞機能を、血中Cペプチド値、尿中Cペプチド値などによって評価する。空腹時血中Cペプチド値の基準値は、1~3ng/mLであり、0.6 ng/mL未満は明らかな低値である。24時間尿中Cペプチド値の基準値は、40~100μg/日であり、20μg/日未満は明らかな低値である。

治療

  • 1)インスリン療法
     インスリン療法の選択に当たっては、乳児期、幼児期から学童期、思春期と各年代の特徴を理解して、本人の実生活を把握して指導する必要がある。従来、速効型インスリンと中間型インスリンによる2回注射法が主流であったが、現在では超速効型インスリンと持効型インスリンを用いた基礎―追加(ベーサルーボーラス)インスリン療法による頻回注射法が最も多い。ただし、自分で注射のできない幼稚園・保育園児や小学校低学年の児童では、昼食前注射ができないため、朝食前に超速効型と中間型のプレミックスタイプを使うことが多い。
    最近では、持続皮下インスリン注入療法(continuous subucutaneous insulin infusion: CSII)も、小児で安全かつ有用な治療法であると考えられている。
    日本小児インスリン治療研究会に登録された約800人の1型糖尿病小児で調べると、2008年には、2回打ち9%、3回打ち6%、4回打ち66%、5回打ち9%、CSII10%であったが、2011年には、2回打ち2%、3回打ち3%、4回打ち59%、5回打ち19%、CSII17%と5回うちとCSIIの頻度が増えている。即ち食事に合わせた追加インスリン(ボーラス)3回と基礎インスリン(ベーサル)の1~2回注射、あるいはCSIIがほとんどを占めている。
    血糖コントロールの改善、特に頻回注射法やCSIIによる強化インスリン療法は血管合併症への進行のリスクを小児期においても減少させる。従って、すべての年齢層において可能な限り、生理的なインスリン分泌動態に類似したインスリン治療を試みるべきである。


  • 2)食事療法
     1型糖尿病では、診断時に基本的に肥満を伴わないことが多く、食事制限は必要ではない。しかし、栄養のバランスのとれた規則正しい食生活を指導することが大切である。小児では、健全な成長のために、年齢、性別、体格、運動量に応じて十分に必要なエネルギー摂取しなければいけない。
    学校給食は基本的にほかの児童と同様に食べることができる。おやつ(間食)も基本的に禁止しないが、砂糖を多く含むもの(あめ、ガム、ジュース、など)はエネルギー量が少なくても急激な血糖上昇を引き起こすことを認識させる必要がある。食物繊維は血糖コントロールの改善に有効であり、血中脂質レベルも低下させるので推奨する。
    近年、超速効型インスリンを食事前に使用するようになり、カーボカウンティングも用いられるようになった。食後の血糖上昇は、大部分が炭水化物に影響されるので、食事中の炭水化物量に注目しその量に応じて食前のインスリン量を調節するという考え方である。
    炭水化物10gを1カーボとする。インスリン/カーボ比は、1カーボ当たりに超速効型インスリンが何単位必要なのかを示す。1日のインスリン量の合計を50で割ると、インスリン/カーボ比が推測できる(50ルール)。ただし、インスリン/カーボ比は、体調、気候、運動量、などにより微調整が必要である。また、タンパク質や脂質も時間差を持って食後の血糖に影響するので、インスリン注射と食後血糖の変動について関心を持つように指導することが重要である。


  • 3)コントロール目標
     目標血糖値は早朝、食前で90~145mg/dL、食後で90~180mg/dL、就寝時で120~180mg/dLである。60~70mg/dL以下は低血糖であり、避けるべきである。
    目標HbA1c(NGSP)は、小児期全年齢で7.5%未満である。9.0%以上は、ハイリスクであり介入を必要とする。
    外来では定期的に身体計測を行い、成長曲線を記録して身長と体重の変化をチェックしていく。


  • 4)糖尿病ケトアシドーシス(Diabetic Ketoacidosis:DKA)の治療

    1. DKAの診断
     DKAは1型糖尿病の発症時、あるいは管理中のインスリン中断、感染症などの種々の要因(シックデイ)に伴って発症する。
    DKAは、1. 高血糖(BG>300mg/dL)、2. ケトン血症(ケトーシス:血中総ケトン体> 1000μmol/L)、あるいはケトン尿症、3. アシドーシス(血液pH <7.30、 HCO3- <15 mEq/L)を伴っている病態として診断される。

    2. DKAのインスリン治療
     まず体重を測定し体重減少度の算定を行う。不明の場合はおよそ10% 脱水と考える。輸液のみで、血糖はいくらかは低下するけれども、血糖正常化と脂肪分解、ケトン体生成抑制のためにはインスリン療法が必須である。
    インスリン持続静注を0.1単位/kg/時で開始する。輸液療法開始1~2 時間後の開始とする。インスリンの1回急速静注(ボーラス)は、行うべきでない(むしろ脳浮腫の危険性を上昇させることがある)。インスリン注入量は、アシドーシスが改善する(pH> 7.30、HCO3- >15 mEq/l、かつ、またはアニオンギャップの消失)まで、0.1 (~0.05)単位/kg/時を維持する。急激に血糖が降下したり、血糖値が250~300mg/dLになったら、低血糖を予防するために輸液中に5% ブドウ糖を加える。もし、DKA が回復する以前に血糖の降下が急激すぎる場合(> 90 mg/dL/時)は、ブドウ糖注入量を増加する。インスリン注入量を減らしてはいけない。



  • 5)1型糖尿病の治療における成長・発達に応じた対応の重要性
     病気と付き合いながら心身ともに健康に成長発達し、社会人として自立できるように指導することが治療目標である。発症時期は、乳幼児期から思春期と幅広いのでそれぞれ異なる対応が必要となる。
    乳幼児期には、食事摂取量や運動量の変動が大きいので、インスリン治療に伴う低血糖の頻度が比較的多い。低血糖により痙攣重積を起こすこともあり注意すべきである。長期的予後の重要性を強調し、短期的な血糖コントロールにこだわり過ぎないよう指導することも必要である。
    学童期には、学校行事、体育の授業、運動部活動、学童保育、などによって低血糖や高血糖の起こるリスクが生ずる。生活パターンの変動に対し、インスリン注射量の調整が必要になる.学校関係者との連携も必要となる。
    思春期には、子どもの自立、発達段階を見極めて、糖尿病の自己管理を進めていくことが重要である。外食、喫煙、アルコールなど生活習慣の乱れ、スポーツ活動への対応、性ホルモンによるインスリン抵抗性の増大、など様々な問題が関連し糖尿病管理が難しくなる。本人の精神・心理的問題や家庭環境の問題などによって、思春期以後も自立できない患者、20歳代に重篤な糖尿病合併症を起こしてしまう患者もいる。医師、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカー、栄養士などによるチーム医療の推進が重要と考えられる。

予後

小慢事業に登録された1型糖尿病患者のHbA1c値の分布をみると、残念なことに1型糖尿病患者の約3分の1がHbA1c9.0%以上の不良群に含まれている。これら不良群では、細小血管症(網膜症、神経障害、腎症)と大血管症(心疾患、脳卒中、など)という慢性合併症のリスクが高い。超速効型や持効型のインスリンアナログ製剤が使用されるようになり、小児においてもこの数年間にインスリン療法の改良が起こっていると思われるが、小慢事業に登録された症例で見る限り、血糖コントロールの改善がみられているとはいえない。
多くの症例で思春期に血糖コントロールが悪化する。患者の自立を促すような心理的サポートも含めた糖尿病治療への支援体制の充実が重要と思われる。

文献

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:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会
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