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高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)

こうあいじーでぃーしょうこうぐん (めばろんさんきなーぜけっそんしょう)

hyper IgD syndrome; mevalonate kinase deficiency

告示番 号17
疾病名高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)
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概念・定義

 本疾患はコレステロール生合成経路に関わるメバロン酸キナーゼ(MK)の活性低下により発症する常染色体劣性の代謝疾患であるが、臨床的特徴として乳児期より発症し自己炎症性疾患の病像を呈する。残存MK活性により、先天奇形や精神発達遅滞などの重い症状を伴うメバロン酸尿症 ((酵素活性 1 %未満) と、わずかに酵素活性が残存する高IgD症候群(同1-10 %)に分類される。1984年にオランダ人の家系で初めて報告され、家族性地中海熱(FMF)とよく似た臨床像を示しながらも、血清IgD高値や、発作時のリンパ節腫脹、下痢などいくつかの臨床所見の違いから、FMFとは異なる疾患として提唱された。しかし、近年診断された本邦での症例は、初診時にIgDの上昇を認めないことが多く、診断には注意を要する。

疫学

 本疾患は、オランダなどの欧州圏に多く報告されているが、正確な有病率はわかっていない。Eurofeverや国際的な患者登録を基に得られる有病者数は、世界的には高IgD症候群の表現型で300を超えるが、診断の困難さから診断未確定患者が相当数存在すると予想される。本邦では、2008年より数家系が順次診断され、計4家系6症例が遺伝子検査その他によって確定診断されており、潜在患者は10~20名程度といわれる。

病因

 原因遺伝子は、コレステロールの生合成に関わるメバロン酸キナーゼ (MK) をコードするMVK遺伝子である。MKはコレステロール生合成経路でメバロン酸をリン酸化する酵素である。この酵素活性が低下もしくは欠乏すると、メバロン酸が蓄積し、健常人ではみられない尿中メバロン酸の排泄を認める。従来、このメバロン酸の増加が高IgD症候群の原因と考えられていたが、近年では、メバロン酸経路の下流の代謝産物であるゲラニルゲラニルピロリン酸の短期的不足が、最終的にIL-1βの分泌を亢進させ炎症を惹起すると考えられている。

図1.メバロン酸経路

症状

 乳児期より40℃を超える発熱が悪寒を伴って突然出現し、不規則に2~8週間隔で繰り返される。発熱は3~7日間持続する。発熱発作に併発する症状として、有痛性の頸部リンパ節腫脹、腹痛、嘔吐、下痢を認める。斑点様丘疹や紅斑、口腔内アフタ、大関節の非破壊性関節炎を伴うことも多い。発作はしばしば誘引なく出現するが、感情的なストレスや外傷、感染、予防接種などによって引き起こされることもある。アミロイドーシスは3 %未満で、小児期の報告はない。時に肝腫大や脾腫大を伴うことがあり、本邦で出生時より肝機能異常を伴った症例がある。

診断

治療

 本疾患での具体的な治療指針は未だ定まっていない。アセトアミノフェンやNSAIDsの効果は部分的であるが発作時の症状を緩和する目的で使用される。また、発作時に副腎皮質ホルモンの短期的な全身投与が多くの症例で有効であり古くから行われている。HMG-CoA還元酵素の阻害薬であるスタチンは一部の症例で有効である。生物学的製剤では、抗IL-1製剤であるアナキンラやカナキヌマブ、リロナセプト、抗TNF製剤であるエタネルセプトの有効性が報告されているが効果は明確ではない。最重症例では骨髄移植も試みられている。

予後

 酵素欠損の重症度によって予後は異なる。多くは年齢と共に発作が減少し、自然に完全寛解する症例もある。しかし、社会的な生活障害は大きく、就学や就職に困難をきたす患者が多い。重症型のメバロン酸尿症では、SIRS (systemic inflammatory response syndrome) により幼年期に40 %が死亡しているという報告がある。

参考文献

1) J.W.van der Meer, J.M.Vossen, J.Radl et al.: Hyperimmunoglobulinaemia D and periodic fever: a new syndrome. Lancet 1: 1087-1090, 1984
2) 酒井秀政, 平家俊男.: 日本における高IgD症候群の診断と展望. 日本臨床免疫学会会誌. 34 (5): 382-387, 2011
3) R.van der Brurgh, N.M. ter Haar, M.L. Boes et al.: Mevalonate kinase deficiency, a metabolic autoinflammatory disease. Clin. Immunol. 143: 197-206, 2013
4) N.M. ter Haar, J. Frenkel.: Treatment of hereditary autoinflammatory disease. Curr. Opin. Rheumatol. 20: 252-258, 2014
5) J.C. van der Hilst, E.J. Bodar , K.S. Barron et al, and the International HIDS Study Group. Long-term follow up, clinical features, and quality of life in a series of 103 patients with hyperimmunoglobulinemia D syndrome. Medicine, 87: 301-310, 2008
:バージョン1.1
更新日
:2015年3月31日
文責
:日本小児リウマチ学会
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