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ブラウ(Blau)症候群/若年発症サルコイドーシス

ぶらうしょうこうぐん/じゃくねんはっしょうさるこいどーしす

Blau syndrome, early onset sarcoidosis

告示番 号20
疾病名ブラウ症候群/若年発症サルコイドーシス
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概念・定義

主として4歳以下の小児に発症し、関節炎・ぶどう膜炎・皮膚炎を3主徴とするサルコイドーシスは、歴史的に若年発症サルコイドーシス(Early-onset sarcoidosis; EOS, MIM#609464)と呼ばれてきた。一方、1985年、EOSと酷似する臨床像を4世代に渡って呈する家系例がBlauにより報告され、常染色体優性遺伝形式を示すこの疾患はBlau症候群(MIM#186580)と命名された。2001年、Blau症候群の原因遺伝子としてNOD2が同定され、2005年、本邦EOS10例の遺伝子解析よりEOSにおいてもNOD2がその責任遺伝子であることが金澤らにより証明された。今日では、両者は同一の疾患であり、EOSはBlau症候群の孤発例と考えられている。常染色体優性遺伝形式を示す。

病因

 本症の原因遺伝子であるNOD2は、細胞内パターン認識受容体NLRに属する受容体で、蛋白質相互作用に関わるCARD、自己重合化に関わるNOD、微生物由来パターンの認識に関わるLRR領域から成る。NOD2は単球・マクロファージ・消化管パネート細胞・腸管上皮細胞に発現しており、グラム陽性菌・陰性菌の細胞壁に共通に含まれるmuramyl dipeptideを認識して、転写因子であるNF-κBを活性化することが知られている。Blau症候群/EOSでは、NOD2蛋白質の自己重合化に関わると考えられるNOD領域に機能獲得型変異が認められ、これらのNOD2変異体はmuramyl dipeptideの非存在下でもNF-κBの活性化を生じる。しかし、なぜ関節・眼・皮膚において肉芽腫を形成するのかなど、その病態機序の多くは不明である。
 これまでBlau症候群/EOSで見つかっているNOD2変異は患者以外で見つからず、変異のある者は全員発症していることから、NOD2変異はBlau症候群/EOSの発症に必要かつ十分な条件と考えられる。一方、NOD2変異とBlau症候群/EOSの発症年齢や臨床的重症度との相関は必ずしも認められないことから、発症時期や重症度に関しては後天的要因や環境的要素が関わっている可能性も推定される。

疫学

 本邦では30〜40症例が報告されている

臨床所見

1症状
 多くは4歳以前に何らかの臨床症状を呈するが、10歳を過ぎてから発症する例もある。皮膚症状が初発の例が多く、典型的には眼病変はやや遅れて7歳〜12歳頃に発症する。皮疹、関節症状、眼症状という順番に発症する事が多い。

1)皮膚症状
 自覚症状をほとんど伴わない帽針頭大〜粟粒大の常色〜赤褐色で苔癬様の充実性丘疹が多発することが多く、増悪すると魚鱗癬様あるいは紅皮症様となることもある。鱗屑を伴う場合と伴わない場合がある。しばしば対称性に体幹や四肢に見られ、年余にわたり出現と自然消退を繰り返す。基本的に特に誘因なく皮疹は出現するが、BCG接種後に皮疹から発症した例が報告されている。この皮疹はBlau症候群/EOSの初発症状であることが多いものの、自覚症状を欠き自然消退することもあるため、見逃されている可能性もある。また20%の症例で結節性紅斑が経過中に見られる。

2)関節症状
 対称性の多関節炎が、手指や足趾などの小関節や、手・肘・膝・足などの大関節に生じ、稀に肩にも見られる。腱鞘炎により腱鞘滑膜は腫脹し、指趾全体がソーセージ様に腫脹する例も見られる。この腫脹は運動制限を来たすものの熱感や発赤をほとんど伴わない軟らかい嚢腫状であることが特徴であり、関節痛や朝のこわばりなどの自覚症状に乏しい。早期には指趾関節の可動域は失われておらず、レントゲン検査でも関節面の骨びらんや関節裂隙の狭小化を認めない。しかしながら,指趾の中節骨関節は経過と共に次第に屈曲し、末節骨関節は同時に伸展位をとるため、関節リウマチのボタンホール様変形と類似した外観を呈する。炎症の主座は腱鞘滑膜である。

3)眼症状
 皮疹や関節症状よりも遅れて出現する。最も頻度が高いのは両側性のぶどう膜炎で、眼痛・羞明・霧視を呈する。通常のサルコイドーシスによるぶどう膜炎に類似して、豚脂様角膜後面沈着物、前房混濁、虹彩結節、硝子体混濁、網膜血管周囲炎、多発性網脈絡膜滲出斑、乳頭浮腫がみられるが、虹彩後癒着、結膜炎、網膜炎、視神経萎縮など、全眼球性に及ぶ広範囲な病変が報告されている。病変が長期にわたると2次性白内障や緑内障を来たし失明する。

4)発熱
 欧米の報告では10%程度と少ないが、本邦では約半数の症例で間欠的あるいは持続的な発熱が見られる。弛張熱の熱型を取り高熱が持続する例がある。

5)その他
 稀ではあるが、肉芽腫性間質腎炎、慢性腎不全、脳神経障害、心血管障害、間質性肺炎、リンパ節炎、心外膜炎、耳下腺炎など、多彩な臓器病変が報告されている。


2検査所見
 サルコイドーシスに特徴的な両側肺門リンパ節腫脹は認められない。血液学的検査もほぼ正常である。全身の炎症の程度に応じてCRP・赤沈・可溶性IL-2受容体が高値となることもある。リウマチ因子は陰性であるが、抗核抗体や免疫グロブリン、補体が異常値を示すことがある。血清MMP-3値は関節炎の病勢をよく反映する。
 皮膚病理検査では、真皮から皮下組織にかけて多核巨細胞を伴う非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が存在し、周辺へのリンパ球浸潤に乏しいnaked granulomaを呈する。炎症が表皮に及んでいる所では、臨床上の鱗屑に相当する過角化を呈する。毛孔一致性の丘疹の場合には毛包を中心とした肉芽腫が見られるが、そうでない場合も多い。免疫染色を用いた光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いても、通常のサルコイドーシスとの鑑別は不可能であるとされる。


3画像
 両側肺門リンパ節腫脹は認められず、関節症状も初期は骨に異常を来さないことから、胸部・骨レントゲン検査では異常は見られない。無症候性の炎症部位のスクリーニングにGaシンチが有用とされる。
 関節エコーでは関節滑膜よりも強い炎症が腱鞘滑膜に目立ち、腱鞘周囲に浮腫を来たす。経過の長い症例では、腱鞘の断裂や関節の破壊・変形・脱臼がみられる

診断

治療

 現時点では病因に基づいた特異的な治療法は確立していないため、対症療法にとどまっている。皮疹・関節症状から疑われた例では、3主徴が揃うまで経過を見るのではなく、視力予後の改善のためには早期に組織診断や遺伝子診断を考慮することが望ましい。
 皮膚病変に対してはステロイド剤の外用が行われるが、かゆみがなく自然消退もあるため積極的な治療は必要ない。関節や眼病変は進行性で、放置すると不可逆性の変化を来たすため、積極的な治療が必要である。ステロイド内服によりコントロール可能な症例が多いが、長期投与による副作用の問題が無視できず、また減量・中止による再発もしばしば起こる。一方、週1回のメトトレキサート 10~15 mg/m2は疾患活動性の抑制に有効で、ステロイドの減量効果も期待できるとされる。抗 TNF-α製剤が有効であったという報告もあるが、症例数は限られており今のところ統一的な見解は得られていない。他にも様々な治療が試みられており、NF-κB阻害薬としてサリドマイドによる治療が有効と報告されている。また、多くの自己炎症性疾患において有効なIL-1受容体アンタゴニスト製剤は無効であると報告されているが、抗IL-1β抗体であるカナキヌマブが眼症状に著効したという報告もある。

予後

 自然経過では、罹患関節の関節拘縮、ブドウ膜炎により視力低下・失明を来し、患者QOLの著しい低下を来す。副腎皮質ホルモンの全身投与は、関節病変、眼病変に有効であるが、長期投与の副作用が問題となる。MTXや近年導入されはじめた生物学的製剤による関節及び視力予後改善は今後の検討課題である。
:バージョン1.1
更新日
:2015年3月31日
文責
:日本小児リウマチ学会
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