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全身性エリテマトーデス

ぜんしんせいえりてまとーです

systemic lupus erythematosus; SLE

告示番 号9
疾病名全身性エリテマトーデス
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概念・定義

 全身性エリテマトーデスsystemic lupus erythematosus (SLE)は、紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)lupus erythematosusとよばれる皮疹を特徴とし、発熱や倦怠感などの全身症状を伴う全身性炎症性疾患である。自己免疫性疾患の一つであり、抗DNA抗体などの自己抗体からなる免疫複合体が血管に沈着し、補体系を活性化して血管や組織を傷害することで、皮膚(皮疹)、腎臓(ループス腎炎)、中枢神経系(CNSループス)などに多彩な臓器病変を引き起こす。
 小児SLEとは16歳未満に発症したものをさすが、成人例と比べて一般に経過は急性で重症例が多い。

疫学

 小児SLEは、SLE全体の15-17%を占める。本邦で実施された全国調査(1995年)1)では3,129例の小児リウマチ性疾患患者が登録され、SLEはその29%を占め、若年性特発性関節炎に次いで多い疾患である。
 有病率は小児人口10万人当たり3.9~4.72)であり、成人SLEの有病率(6.6〜8.5 )と比較しても、それほど稀な疾患ではない。またその発病率は、欧米では小児10万人当たり年間0.7〜0.9例と報告されている。
 男女比は1:5.5であり3)、成人例(1:10~12)と比べると小児SLEでは相対的に男児の比率が高い。発症年齢は10歳以降が多いが、7~8歳頃から発症する例もみられる。

病因

 双生児におけるSLE発症の一致率は、一卵性の場合は25~30%、二卵性の場合は5~10%であることから、遺伝的要因を背景に、ウイルス感染、性ホルモン、紫外線、薬物などの環境要因が加わることで発症すると考えられている。また最近では、死滅した自己細胞から遊離したDNAやRNAの処理を担う自然免疫系に異常があり、そのことが自己抗体を産生させることが判明し、自己免疫疾患の発症機序に自然免疫が関与することが注目されている

症状4)

1.臨床症状

1)皮膚・粘膜症状
 蝶形紅斑 (80%)は本症に特徴的であり、発症早期から出現するため、しばしば診断の契機となる。初めは頬部の不定形の隆起性の紅斑で始まり、紅斑は次第に癒合して拡大し、両側頬部の紅斑が鼻根部をまたいで繋がると蝶形紅斑となる。
円盤状紅斑は円形のディスク(レコード盤)様の丘疹で、経過とともに中心部は色素脱失して瘢痕化する。その他、日光過敏やレイノー症状もみられる。
口内炎が上口蓋にみられることがあるが、無痛性であるため気づかれていないことが多い。

2)腎炎
 初診時の50%、全経過で60%に腎炎を発症するが、尿異常があっても通常は無症状である。浮腫や学校検尿で気づかれる場合もある。

3)神経/精神症状
 痙攣や意識障害などの神経症状や、精神症状が約20%にみられる。頭痛も高頻度に認めるが、頑固な頭痛、偏頭痛と判断されている場合も多い。経過中に精神症状が出現する場合は、ステロイド性精神病や二次的な心因反応との鑑別が難しい。

4)その他
 左右対象性の関節炎(40%)が手指などの小関節や、膝、手関節などの大関節でみられるが、その頻度は成人SLE(80%)ほどには多くはない。通常は一過性または移動性であり、Xp所見で骨びらんなどの破壊像がないのが特徴である。
 心病変の多くは心外膜炎で、心嚢液貯留がみられる。稀に心内膜炎がみられるが、三尖弁や僧帽弁に血栓性疣贅を形成する(Libman-Sacks心内膜炎)。
その他、網膜炎、肺出血、ループス腸炎、ループス膀胱炎など、血管炎を基盤とした多彩な臨床像がみられる。


2.検査所見

1)一般検査
 末梢血では、白血球(リンパ球)減少、血小板減少、溶血性貧血などが80%にみられる。赤沈は全例で中等度~高度亢進するが、CRPが陰性である点が特徴である。尿検査では、尿蛋白、血尿、白血球円柱がみられる。生化学検査では、しばしば軽度の肝酵素の上昇がみられる。

2)免疫学的検査
 抗核抗体はほぼ全例で陽性である。また、抗dsDNA抗体(96%)と抗Sm抗体(40%)はSLEに特異性が高く、診断に有用である。抗リン脂質抗体が陽性(40%)であれば、静脈や動脈に血栓症を発生するリスクがある(抗リン脂質抗体症候群)。低補体血症が発症早期から高頻度に認められ(80%)、その程度は疾患活動性を反映する。

3)その他
 国際腎臓学会/国際腎病理学会のClass分類では、腎炎のある小児SLEの約30%は腎機能予後が不良なClassⅣ型(びまん性腎炎)である。また尿所見に異常がなくても、腎病理組織に異常所見を認める例が多い(silent lupus nephritis)。
脳の血流シンチやMRI検査では、中枢神経症状を欠く例でも画像で異常を認める例が多い

診断

治療

1.治療目標
 全身性血管炎病態を抑制し、寛解状態を長期間維持することで、臓器機能障害の発生や進行を抑止することが治療目標となる。また、ステロイドや免疫抑制薬による副作用を可能な限り低減することも、長期にわたる治療の重要な目標である。

2.急性期の治療
 ステロイドが治療の基本である。病態の重篤性に応じて中~高用量のステロイド内服や点滴静注による大量ステロイドパルス療法が行われる。びまん性ループス腎炎や中枢神経ループスは予後不良な病態であり、このような病態を持つ症例では、ステロイドパルス療法に引き続き、強力な免疫抑制療法の併用が開始される。その他、抗凝固療法や血漿交換療法など、病態に応じた治療が追加される。

3.寛解期の治療
 急性期治療で病態の寛解が得られれば、寛解状態を維持しながら長期投与でも副作用が少ない投与量までステロイドを減量する。ステロイド減量中に再燃する場合は、ステロイド増量で対応するとともに、併用する免疫抑制療法を強化することで、少量ステロイドによる寛解病態を長期間維持し、臓器障害の発生や進行を抑止する

予後

 小児SLEの累積10年生存率は98%であり、生命予後は著しく改善した。しかし、寛解と再燃を反復する病態に対しては、今なお継続的な治療が必要であり、長期寛解が得られない例では、臓器障害の進行(腎不全、中枢神経障害)や薬剤の副作用(大腿骨骨頭壊死、骨粗鬆症)が問題となる。これらの永続的な問題のない小児SLEの累積10年生存率(event-free累積生存率)は66%に過ぎず、臓器障害や機能障害の発生や進行に対し、まだ十分に抑止できていないのが現状である4)

参考文献

1)Fujikawa S, Okuni M. A nationwide surveillance study of rheumatic diseases among Japanese children. Acta Paediatr Jpn 1997; 39:242.

2) 横田俊平.若年性関節リウマチの実態調査とQOL向上の医療・行政的政策立案,平成12年度厚生科学研究補助金研究報告書2001.

3) Takei S, Maeno N, Shigemori M, et al.: Clinical features of Japanese children and adolescents with systemic lupus erythematosus: Results of 1980-1994 survey. Acta Paediatr Jpn 1997; 39:250.

4) 武井修治.小児全身性エリテマトーデス(SLE)の難治性病態と治療に関する研究.小児期のリウマチ・膠原病の難治性病態の診断と治療に関する研究.平成22年度総括研究報告書2011:74.

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児リウマチ学会
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