12

口渇中枢障害を伴う高ナトリウム血症(本態性高ナトリウム血症)

こうかつちゅうすうしょうがいをともなうこうなとりうむけっしょう (ほんたいせいこうなとりうむけっしょう)

告示番 号76
疾病名口渇中枢障害を伴う高ナトリウム血症(本態性高ナトリウム血症)
診断手引き、医療意見書等のダウンロードはこちら

疾患概念

通常、血清または血漿中ナトリウムはどの年代においても135〜145mEq/lにコントロールされている。血中ナトリウムは血液の浸透圧を一定に保つのに重要な役割を果たすため、血中ナトリウム濃度が上昇すれば口渇中枢が働き、ナトリウムを低下させるために飲水行動が起こる。
脳内器質性疾患、特に正中奇形や視床下部障害により口渇中枢の障害が起こると、飲水行動が起こらないために高ナトリウム血症が起こる。これを広義の本態性高ナトリウム血症と呼ぶ。
さらに狭義の本態性高ナトリウム血症は、口渇中枢の障害があることに加え、明らかな水分摂取不全がなくても血中ナトリウム値の変動を見るもので、同一の症例で低ナトリウム血症も併発しうる。病因は不明であるが、ナトリウム利尿ペプチドや未知の因子の作用が考えられている。

診断基準

1) 血清または血漿中ナトリウムが、標準値 (150mEq/L) より持続して高値である。
2) 高ナトリウム血症が存在するにもかかわらず、口渇感がない。(註1)
3) 他に高ナトリウム血症を来す明らかな原因がない。(註2)

参考所見
1) 基本的に脱水の所見はない。(註3)
2) 脳内器質性病変が存在することが多い。(註4)
3) 原因の明らかでない低ナトリウム血症を来すこともある。

診断確実例

1)〜3)を満たす。

注釈

註1) 乳児、発達遅滞を有する児では、口渇を訴えられないことがある。口渇を訴えなくても、与えれば水分を大量に摂取する場合は、口渇感があると考えられる。


註2) 小児期に高ナトリウム血症を来す疾患として、以下を除外する。
脱水(自由水の喪失)を伴う疾患:いずれも適切に水分が補充されなかった場合胃腸炎(ロタウィルス感染症など)、経鼻胃管や口腔内からの過剰吸引
中枢性尿崩症(先天性、後天性)、腎性尿崩症(先天性、後天性:薬剤/腎疾患に伴う腎尿細管障害など)、
高カルシウム血症、低カリウム血症
電解質以外の溶質の負荷による尿への自由水の喪失
皮膚からの喪失:熱中症など
水分摂取障害:上記脱水の原因を伴わず、水分摂取が不足している状態で、適切な水分補充で改善/維持できる場合。(注4)幼若あるいは発達障害があり渇感を訴えられない。
社会心理的要因による水分摂取障害。
ナトリウム摂取過剰医原性(重炭酸塩・等張/高張食塩水などナトリウムを含んだ製剤の大量/持続投与、ループ利尿剤の過剰投与など)
ミルクの希釈濃度が濃い場合
母乳栄養児の母体ナトリウム摂取過剰
虐待・養育過誤によるナトリウム摂取過剰など

註3) 頭蓋内病変のある例では、本態性高ナトリウム血症と中枢性尿崩症などを併発していることがあるため、脱水所見を示すこともある。併発症の治療を行っても高ナトリウム血症が改善されない場合は、これを疑う。


註4) 正中奇形(全前脳胞症など)・視床下部下垂体病変を伴い渇感が喪失している場合は、単純に渇感を喪失しているための水分摂取不足による高ナトリウム血症と、水分摂取がなされても起こる高ナトリウム血症がある。前者は広義の、後者は狭義の「本態性高ナトリウム血症」となる。




文献

Pediatric Endocrinology Sperling
William’s Textbook of Endocrinology
Uptodate Hpernatreia in Children
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会
「小児慢性特定疾病の対象疾患について」に戻る