91

ターナー(Turner)症候群

たーなーしょうこうぐん

Turner syndrome

告示番 号91
疾病名ターナー症候群
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概念・定義

45,Xを代表とする性染色体異常症で,X染色体モノソミーの他に,i(Xq), Xp-, Yp-などの構造異常,および,種々のモザイクなどが含まれる.臨床的には,低身長,性腺異形成,特徴的奇形徴候により特徴づけられ,また,高度の流産率も知られている.現在,ターナー症候群の正確な定義はないが,通常の染色体検査で認識される染色体異常と上記の臨床症状の少なくとも1つが存在するとき,ターナー症候群と診断してよいと考える.特に,後述のようにターナー症候群発症の責任遺伝子はX染色体短腕とY染色体短腕に存在するため,性染色体短腕欠失と特徴的臨床症状の組み合わせは診断特異的である.この文脈からSHOXを含む染色体検査で検出できる性染色体短腕の微小欠失はターナー症候群と診断されるが,性染色体異常症が存在しても臨床症状が見られないとき(例:X染色体長腕欠失)や,臨床症状が存在しても染色体異常症が見られないとき(例:SHOXを含む微小欠失)には,ターナー症候群という診断は避けるべきで,前者はX染色体長腕欠失による二次性無月経,後者は,SHOX異常症と診断する.

疫学

出生女児の約1000人に1人と推測される.

病因

ターナー症候群の表現型は,(1)3種類の遺伝子,すなわち短腕擬常染色体領域の成長決定遺伝子SHOX,Y染色体長腕近位部の成長決定遺伝子GCY,X染色体短腕とY染色体短腕に共有されるリンパ管形成遺伝子の量効果,(2)卵母細胞への分化を運命づけられた生殖細胞における減数分裂時の相同染色体対合不全の程度,(3)染色体不均衡による非特異的な広汎的発達障害の程度,という3つの因子により主に決定されると推測されている.

診断

末梢血リンパ球染色体分析がもっとも基本的な検査となる.基本的にル−チンのG-バンド法でよい.複雑な構造異常が考えられる場合などでは,高精度分染法を行う.核型分析は,典型的な症状を有する患者のみならず,低身長を有する女性は,全例染色体検査の対象となる.なお,染色体分析には,その精度において一定の限界がある.このため,隣接するバンドの判定の誤りの他に,複雑な構造異常が単純な末端欠失と判定されることがあることを付記する.この頻度は,10-15%程度である.
 末梢リンパ球以外の染色体分析は、末梢血リンパ球の核型と表現型が不一致であるときに行う.通常,皮膚繊維芽細胞が用いられるが,性腺細胞もしばしば対象となる.これにより組織特異的モザイクが検出され,診断確定に役立つことがある.例えば,典型的なターナー症候群患者において,全てのリンパ球で46,XYが検出され,一方,皮膚繊維芽細胞の大多数で45,Xが見いだされ,診断が確定することがある.
 FISHおよびwhole chromosome painting (WCP) 解析は、特定の遺伝子や座位の有無,および,不均衡転座の確認に有用である.特に,低身長とターナー骨格徴候の責任遺伝子であるSHOX,知能障害の主原因である活性型ダイソミーに密接に関与するXIST,性腺腫瘍発症の危険因子であるY染色体確認のためのDYZ3,外性器男性化に関与するSRY,非典型的症状を有する患者における不均衡転座の確認のためのWCPは,高い臨床的有用性を有する.

症状

代表的な症状は以下の通りである。
1. 低身長:ターナー症候群にほぼ必発の症状で,SHOX欠失,GCY欠失,染色体不均衡により生じる.患者の成長パタ−ンは,出生時に正常下限程度で,小児期に正常女性の成長曲線から次第に離れてゆく経過をとり,思春期以降に成長スパートの欠如と最終身長到達の遅れにより特徴づけられる.45.X女性の平均最終身長は,正常女性のそれより約20 cm低い.両親平均身長と児の最終身長の相関係数は,正常女性のそれと同等である.
2. 腺異形成:卵母細胞の早期死滅による卵胞形成不全が原因である.卵母細胞が思春期前にほぼ全て消失したときは原発性無月経となり,思春期年齢を過ぎて40歳前に消失したときは続発性無月経となる.45,Xでは,20%程度の患者が続発性無月経を示す.稀に,妊娠・分娩した患者が報告されている.性腺異形成の程度は,減数分裂時の相同染色体対合不全の程度に相関する。
3. 奇形徴候:外反肘や第4中手骨短縮などの骨格徴候,翼状頚やリンパ浮腫などの軟部組織徴候,大動脈縮窄や馬蹄腎などの内臓奇形に大別される.表現型が年齢と共に変化すること,表現型の重症度が患者間で極めて多様であることが知れられている.骨格徴候はSHOXのヘテロの欠失に起因し,軟部組織徴候と内臓奇形徴候はリンパ管低形成によりもたらされた奇形シークエンスと推測される.
4. その他:稀に明らかな知能障害を呈する.これは,XISTが欠失した環状X染色体による活性型ダイソミーが主因である.また,高頻度流産,認知能力低下,自己免疫関連疾患などの発症率の増加などが認められる.

治療

1. 低身長:成長ホルモンが有効である.これは,現在,染色体検査により確認されたターナー症候群では,成長ホルモン分泌検査をすることなく,0.35 mg/kg/weekの使用が認められている.
2. 性腺異形成:思春期年齢で,エストロゲン製剤の経口投与により二次性徴を誘発し、その後、子宮の発達を確認した後,Kaufmann療法による月経誘導を行う。これについては、日本小児内分泌学会から、以下の推奨プロトコールが発表されている。
GH 治療により12 歳以降遅くとも15 歳までに140cm に達した時点で少量エストロゲン療法を開始する。
1)エストラジオール貼付剤(エストラーナテープ0.72mg_枚)
1/8 枚2 日ごとに貼り替え6 か月間~12 か月
1/4 枚2 日ごとに貼り替え6 か月間~12 か月
1/2 枚2 日ごとに貼り替え6 か月間~12 か月
1 枚2 日ごとに貼り替え6 か月間
2)結合型エストロゲン(プレマリン0.625mg_錠)
1/10 錠1 日1 回経口6 か月間~12 か月
1/4 錠1 日1 回経口6 か月間~12 か月
1/2 錠1 日1 回経口6 か月間~12 か月
1 錠1 日1 回経口6 か月間
Kauffmann 療法への移行は,上記の最大量,すなわち成人量で6 か月を経過するか,あるいは途中で消退出血が起こるか,いずれかの早い時点で行うのが良いと考えられる.

不妊症には,現在有効な治療法はないが,欧米では卵移植が試みられており,これは本邦でもNPO法人が設立され、試行されている。

3. 性腺腫瘍:Y染色体成分を有する患者では,gonadoblastomaなどの性腺腫瘍が思春期年齢から発生しやすいため,思春期前に性腺摘出術を要する.早期に診断がなされている場合には,1-2歳で性腺摘出を行なうことが推奨されている.
4. 外性器異常:Y成分がSRYを有する場合,性腺の一部が精巣に分化し,外性器の男性化を招くことがある.この場合,社会的女児として養育される患者では、乳児期に陰核短縮などの外陰部形成術を行なう(45,X/46,XYでは,男児として養育するべき場合が多い).
5. その他:自己免疫疾患などの合併症にたいしては,その都度,適切な治療を行う.また,知能障害については,早期から発達サポートを行う。なお、ターナー症候群では,患者・家族の会が存在する.患者・家族の会は,医療現場から得られない生活情報を知るための場になりうることを付記する.

予後

骨密度、一般的に適切な管理がなされていれば、長期予後に大きな問題はない。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会
成長ホルモン療法の助成に関して
低身長を認め成長ホルモン治療の対象基準を満たす場合は、小慢による成長ホルモン治療助成の対象となります。
成長ホルモン療法の助成に関しては下記を参照してください。
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