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脂肪異栄養症(脂肪萎縮症)

しぼういえいようしょう (しぼういしゅくしょう)

Lipodystrophy

告示番 号40
疾病名脂肪異栄養症(脂肪萎縮症)
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概念・定義

栄養状態に関わらず、脂肪組織が全身性または局所性に減少・消失する疾患。治療抵抗性の脂肪萎縮性糖尿病、脂質異常をきたして生命予後不良となることがある。萎縮の分布、先天性・後天性により下記に分類される。
1 全身性脂肪萎縮症
(1) 先天性全身性脂肪萎縮症(Berardinelli-Seip 症候群)
(2) 後天性全身性脂肪萎縮症(Lawrence 症候群) 
2 部分的脂肪萎縮症
(3) 先天性(家族性)部分性脂肪萎縮症
(4) 後天性部分性脂肪萎縮症

病因

(1) 先天性全身性脂肪萎縮症(Berardinelli-Seip 症候群)
遺伝子異常による。現在までに同定されている原因遺伝子としてAGPAT2遺伝子、BSCL2遺伝子、CAV1 遺伝子およびPTRF遺伝子がある。常染色体劣性遺伝で、それぞれBSCL(Berardinelli-Seip congenital lipodystrophy)1、2、3、4型と呼ばれる。
(2) 後天性全身性脂肪萎縮症(Lawrence 症候群)
若年性皮膚筋炎や若年性関節リウマチ、橋本病などの自己免疫性疾患に合併する。
(3) 先天性(家族性)部分性脂肪萎縮症
遺伝子異常による。原因としてLMNA, PPARG, CIDEC, PLIN1、CAV1遺伝子が知られており、AKT2, ZMPSTE24 遺伝子の関与も報告されている。
(4) 後天性部分性脂肪萎縮症
自己免疫を背景にする場合、HIV感染症治療薬によるものなどが知られている

疫学

正確な有病率は不明であるが、米国においては100 万人~500 万人に1 人と推定される。我が国においては1985 年の全国調査で35 症例が見いだされており、詳細情報が得られた31 症例の内訳は、男性が11 例、女性が20例で先天性20 例、後天性8 例、不明3 例であった

臨床症状

(1) 先天性全身性脂肪萎縮症
生下時より全身性の脂肪組織消失と肝腫大が認められ、10歳前後で糖尿病が顕在化し、黒色表皮腫が認めるようになる。患児は食欲旺盛で成長速度の亢進も認められる。女性症例では多毛症および月経異常が認められ、高頻度に多曩胞性卵巣が認められる。この他、BSCL2遺伝子異常症では軽度の精神発達遅滞が認められる。また、PTRF 遺伝子異常症では全身性の筋萎縮が認められる一方、代謝異常は軽度である。インスリン抵抗性あるいは高インスリン血症により著明な高中性脂肪血症や非アルコール性脂肪肝を合併し、経過とともに高度のインスリン抵抗性を示す糖尿病を発症する。
(2) 後天性全身性脂肪萎縮症
小児期から思春期に発症することが多く全身性の脂肪萎縮をきたす。しばしば先行感染が認められる。若年性皮膚筋炎や若年性関節リウマチ、橋本病などの自己免疫性疾患に合併して発症することが多い。
(3) 先天性部分性脂肪萎縮症
小児期あるいは思春期に四肢の脂肪組織が消失する。乳幼児期の脂肪組織分布は正常であることが多い。頭頸部や腹腔内の脂肪組織は保たれ、これらの部位に過剰な脂肪組織蓄積が認められる。糖尿病 やその他の代謝異常は青年期以降に認められる。男性症例では脂肪萎縮は軽度か認められないこともある。
(4) 後天性部分性脂肪萎縮症
自己免疫性のBarraquer-Simons 症候群は多くの場合15 歳までに発症し、脂肪萎縮は左右対称性に頭部から徐々に下方に広がるが、下腹部から下の脂肪組織は保たれ、むしろ臀部や下肢には過剰な脂肪組織の蓄積が認められる。膜性増殖性糸球体腎炎を合併することがある。HIV 関連脂肪萎縮症はプロテアーゼ阻害薬を含む高活性抗レトロウイルス療法(HAART)を2年以上受けた場合に発症し、脂肪萎縮は四肢や顔に認められ、徐々に進行する。残存した脂肪組織には過剰な脂肪の蓄積が認められバッファローハンプや二重あご、内臓脂肪型肥満を呈する

診断

先天性全身性・部分性脂肪萎縮症は、臨床症状により疑われ、遺伝子検査により確定する。
後天性全身性・部分性脂肪萎縮症は臨床症状と基礎疾患の診断による

治療

糖尿病や高中性脂肪血症に対しては低脂肪食を中心とした食事療法や運動療法がある程度有効である。通常の薬物療法に抵抗性であるが、レプチン(メトレレプチン1日1回皮下注)が保険適用され有効である

予後

先天性全身性脂肪萎縮症は従来治療抵抗性で予後不良であった。レプチン治療により予後の改善が期待できるが、長期予後については不明の点が多い。その他の病型の糖脂質代謝異常にもレプチンが有効であるが、合併症・基礎疾患の予後に左右される

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会
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