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先天性高インスリン血症

せんてんせいこういんすりんけっしょう

Congenital hyperinsulinaemia

告示番 号18
疾病名先天性高インスリン血症
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概念・定義

先天性に膵β細胞の一部または全部からインスリン過分泌をきたし、難治性の低血糖をきたす疾患である。

病因

新生児、乳児期に多く発症し、適切に治療を行わないと、けいれんや意識障害を起こすだけでなく、低血糖による神経後遺症を残して発達遅滞やけいれん、脳性麻痺につながる可能性があるため、その管理は非常に重要である。3-4か月を超えて症状が続く持続性のものと、多くは生後3-4週以内に治癒する一過性のものがあることが知られており、持続性のものは遺伝子異常によることが多く特に誘引なく発症するが、一過性のものは低出生体重児や出生前後で何らかのトラブルがあった児に多く、非遺伝性のものが大部分であると考えられている。持続性本症では、膵β細胞にあってインスリン分泌の調節を行っているATP依存性カリウムチャネル(KATPチャネル)を構成する2つの遺伝子、ABCC8とKCNJ11の変異によるものが最も頻度が高く重症である。それ以外に、高アンモニア血症を合併するGLUD1遺伝子異常や、グルコキナーゼ遺伝子異常、HADH遺伝子異常、UCP2遺伝子異常、SLC16A1遺伝子異常、Beckwith-Wiedemann症候群などの症候群に伴うものなどが知られているが、頻度は少ない。持続性本症のうち、遺伝子異常が同定されるのはおよそ50%で未知の遺伝子異常によるものが存在すると考えられている。KATPチャネル異常によるもののうち、一部は膵の局所に異常β細胞が限局している局所性病変であることが知られている。一方、一過性本症は大部分が非遺伝性で、家族内集積もほとんど見られない。

疫学

我が国では、持続性の先天性高インスリン血症がおよそ4万出生に一人、一過性のものはその数倍存在すると考えられている

臨床症状

新生児、乳児期に発症することが多いが、年長児にも存在する。低血糖によりボーッとする、冷や汗、ふるえなどの症状をきたす。重度の場合は意識消失、けいれんにいたり後遺症をきたしたり死亡したりすることもある。一部の例では、年長になってから発症することもある。低血糖は空腹時に多いが、食後2~3時間で症状を出すこともある

診断

下記の高インスリン性低血糖症の診断基準により診断されるが、インスリノーマと異なり画像診断は通常正常である。
高インスリン性低血糖症の診断基準(日本小児内分泌学会)
低血糖時における検査(critical sample)
インスリン>2-5μIU/mL
遊離脂肪酸<1.5 mmol/L
βヒドロキシ酪酸<2.0 mmol/L
血糖を正常に保つブドウ糖静注量
>6-8 mg/kg/min

治療

ブドウ糖輸液などの対症療法のほか、頻回食、胃瘻や鼻注による持続流動食注入などの対症療法のほか、ジアゾキサイド内服、オクトレオチド皮下注射、グルカゴン注射などが行われるが、後2者には保険適用がない。内科的治療に抵抗性の場合は膵切除が行われるが、95%以上の膵亜全摘を行った場合は高頻度に術後糖尿病を合併する。局所性病変を事前に同定できた場合は、病変部の膵局所切除を行う

予後

新生児期に重度の低血糖を繰り返したものでは、てんかん、発達遅滞などの中枢神経後遺症を残すことが多い。治療のために95%以上の膵亜全摘を行った場合、低血糖が消失した症例の多くはインスリン依存性糖尿病を発症する。局所性病変を同定して、膵部分切除を行ったものでは、後遺症なく治癒する。また、低血糖を内科的に管理できたものの発達予後は良好で糖尿病発症頻度も低い

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会
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