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アルドステロン症

あるどすてろんしょう

Aldosteronism

告示番 号1
疾病名アルドステロン症
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概念・定義

原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)は、副腎皮質病変(副腎皮質腫瘍または過形成病変)により、アルドステロンの自律的過剰分泌が生じた病態である。高血圧症例にて低レニン性高アルドステロン血症をスクリーニングする。確認試験の後副腎病変の局在診断を行う。PAの病型分類にて、片側性か両側性に分けて考えると理解し易い。
すなわち、
1)片側副腎病変: 副腎腺腫(aldosterone producing adenoma:APA)、
   片側性副腎過形成(unilateral adrenal hyperplaia:UAH)、
   片側性副腎多発微小結節(unilateral multiple micronodules:UMN)、
   癌腫(aldosterone producing carcinoma:APC)、
2)両側副腎病変: 両側副腎過形成(idiopathic hyperaldosteronism:IHA)、
   両側副腎腺腫(bilateral APAs)、
   糖質コルチコイド反応性アルドステロン症 (glucocorticoid suppressive  hyperaldosteronism:GSH)である。

アルドステロンの過剰分泌でナリウム(Na)貯留に傾き体液増加に従って高血圧が生じ、同時にカリウム(K)排泄増加 による低K血症、HCO3増加による代謝性アルカローシス、そしてアルドステロンそのものによる臓器障害(脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、心肥大、不整脈、腎不全等)をもたらす疾患である。片側副腎病変であれば その摘出を、両側病変ではアルドステロン受容体拮抗剤(最近では、両側副腎の部分摘出も行う)、GSHではステロイド剤などによる薬物療法を行う。なお、食塩摂取量や薬物の影響により初診時に低K血症を示さない症例も多いので、注意が必要である。

疫学

PAの最初の発見者であるConnは、全高血圧患者の20%以上を占めると極めて頻度の高い疾患と報告した。しかし実際は、 低K血症を疾患特異的症状として高血圧患者をスクリーニングし確定診断した研究では、PAは高血圧の1%以下の稀少疾患と考えられてきた。一方、最近の研究では、PAにおける低K血症を示す患者の割合は、海外では9~37%、わが国では18%と低く、低K血症をマーカー としてPAをスクリーニングすることは困難であることが明らかにされてきた。
また、2000年を境に、血中アルドステロン濃度/血漿レニン活性の比(ARR)がスクリーニング指標になると言われるようになり、高血圧の5-20%程度の頻度で発見されるとの報告が相次いでいる。
1)血圧が160/100mmHg以上、2)治療抵抗性高血圧、3)低K血症、4)副腎腫瘍を持つ高血圧、5)40歳以下の脳卒中の既往のある高血圧、6)一等親の中に本疾患を発症した家族歴のある高血圧、等で特に発症頻度が高いと言われている。糖尿病を伴う高血圧でも頻度が高いと報告されている。可能な限り、高血圧初診時にスクリーニングする必要がある。治療中でも全ての高血圧で本症を疑う必要がある。

病因

PAの病因別病型分類は、概念・定義の項で示した通りである。
APAが、約70%を占め、IHAが20%程度を占める。その他の病型は稀である。病因が遺伝子レベルで明 らかな代表疾患はGSHである。アルドステロン合成酵素(CYP11B2)とステロイド11β-水酸化酵素(CYP11B1)は、同じ第8染色体上にコードさ れ、この2つの遺伝子が不均等交差によりキメラ遺伝子CYP11B1-CYP11B2ができ、このキメラ遺伝子産物が副腎皮質束状層に異所性に過剰発現す ることにより、ACTH刺激によりアルドステロンが束状層で過剰に産生される。したがって、デキサメタゾン内服にてACTHを抑制すると、アルドステロン 産生が抑制され血圧も低下する。

症状

典型例では、高血圧および低K血症が主症状である。低K血症がある場合は、筋力低下、四肢麻痺などを示すことがあるが、低K血症を呈するのはPAの約20%で、PAの診断における感度・特異度は低い。なお、食塩を負荷して低K血症が惹起されれば本疾患が疑われるので 精査するとよい。他に、口渇、多尿、多飲を訴える症例が多い。

治療

ARRが高値の場合は、副腎静脈採血による病型分類の前に、3種類の確認検査(カプトプリル負荷試験、フロセミド立位負荷試験、生理食塩水負荷試験)の内2種以上の検査を行い、確定診断を行う。さらに、副腎静脈採血 (adrenal venous sampling:AVS)を行ってアルドステロンの過剰分泌部位が両側性なのか片側性なのか、また片側性であれば右副腎が原因か左副腎が原因かを鑑別することが必要となる。すなわち、手術を希望する場合は局在診断を正確に行い、病変側副腎摘出術を行う。また、また、局在診断の結 果、両側副腎病変と判定された場合や、全身状態から手術不能例、薬物療法を希望した症例では薬物療法を行う。
1.外科的処置
片側副腎腫瘍に対して、腹腔鏡下副腎摘出術を施行する。
2.薬物療法
原則として片側病変であれば、外科的処置を行うが、手術を希望しない例、手術不能例、両側副腎病変では薬物療法を行う。
a. GSH以外の全ての症例に対して
1)単独あるいは以下の2)を追加する。
<処方例>
1) アルダクトンA錠(25mg) 1ー4錠 分1-2
または、セララ錠(25mg) 2ー4錠 分2
2) ノルバスク錠(アムロジン錠)(5mg) 1-2錠 分1-2
低K血症があれば、K製剤を適宜追加投与する(アルダクトンA,セララ錠使用時は、原則K製剤の併用は行わない。高K血症となる為)。
b. GSHに対して
はじめに、デキサメタゾン0.125~0.25mgまたはプレドニゾロン2.5~5mgを眠前投与する。
1)単独、あるいは以下の1)と2)を併用する。
<処方例>
1) デカドロン錠(0.5mg) 1/4-4錠 分1
2) アルダクトンA錠(25mg) 1-4錠 分1-2
または、セララ錠(25mg) 2-4錠 分2

予後

適切に治療されれば心血管系イベントが防げる。逆に、本症を放置すると脳卒中、心筋梗塞、不整脈、腎不全を高率に合併する。 APAでは腺腫摘出術後に高アルドステロン血症は是正され、多くの症例で血圧は改善するが、術後約30%の症例では血圧が正常化しない。これは、手術まで の罹病期間や本態性高血圧の合併さらには肥満の影響などが想定されている。しかし、高アルドステロン血症は、脳血管疾患や心肥大などの危険因子であること から、早期の診断および積極的な外科的処置による治療が優先される疾患である。なお、術後の一過性腎機能低下を認める例が多い。腎血流量の低下の影響で腎機能が悪化するがCr上昇例でも問題ない場合が多く、数年以内に是正されてくる。術後の過度の減塩、過剰K摂取には注意が必要で術前の食習慣を変更するとよい。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会
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