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フォンタン(Fontan)術後症候群

ふぉんたんじゅつごしょうこうぐん

Post-Fontan syndrome

告示番 号89
疾病名フォンタン術後症候群
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概念・定義

 2心室修復が不可能である、単心室血行動態疾患に対して、Fontan手術が施行される。Fontan手術には、心房と肺動脈を吻合する方法や、上大静脈と肺動脈、下大静脈と肺動脈を吻合する方法などがある。Fontan術後、主に遠隔期に、不整脈、チアノーゼ、血栓塞栓症、蛋白漏出性胃腸症、心不全、肺高血圧、肝硬変、肝がん、腎不全など全身の臓器不全をきたす症候群。根本治療が無い予後不良の疾患である。

病因

 Fontan術後の特有の血行動態に起因する。詳しい原因、発症機序はいまだ不明である。

疫学

 我が国にFontan術後患者は数千人存在する。術後10年で約50%が本症候群となる。本症候群患者は約10,000人存在する。

臨床症状

 症状は、心不全、動悸、労作時呼吸困難、易疲労、チアノーゼなど。

診断

[理学的所見]
浮腫、チアノーゼ、腹水、心雑音を認める。房室弁閉鎖不全による収縮期駆出性雑音を聴取することがある。浮腫、肝腫大など心不全所見を認める。
[心電図所見]
心電図で、頻拍症を認める。心房細動や心房粗動を認めることもある。
[心エコー所見]
心エコーにて、Fontan術後血行動態、すなわち、心房から肺動脈へ直接流れる血流ないし、上大静脈から肺動脈、下大静脈から肺動脈への血流を認める。フォンタンルート内に血栓を認めることがある。心室の収縮障害や拡張障害を認めることがある。
[MRI, CT]
心室の収縮低下、拡張障害を認める。心筋シンチグラフィで心筋灌流低下を認めることがある。
[心臓カテーテル]
心臓カテーテル検査では、心室の収縮障害や拡張障害を認めることがある。心房圧は10-15mmHgのことが多いが、時に15-20mmHgと上昇していることがある。
[蛋白漏出性胃腸症]
蛋白漏出性胃腸症では、低蛋白血症を認め,糞便中αーアンチトリプシン増加、99mTc標識ヒト血清アルブミンを用いた消化管シンチが陽性となる。
[ 肝障害 ]
肝臓エコー、CT,MRIで、肝線維症、肝硬変、肝がんを認める。 
[腎障害 ]
血清クレアチンの上昇を認める。
[診断基準]
Fontan術後に、不整脈、チアノーゼ、血栓塞栓症、蛋白漏出性胃腸症、心不全、肺高血圧、肝硬変、肝がん、腎不全など全身の臓器不全のいずれかを認めるもの。

治療

心不全例には慢性心不全に対する治療をおこなう。
利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬の投与を考慮する。β遮断薬(カルベジロールなど)の投与も考慮する。
蛋白漏出性胃腸症に対しては、ヘパリン注射、ステロイド内服、アルブミン補充などが試みられる。
不整脈に対しては、抗不整脈薬を投与する。
心室性頻拍症に対しては、アミオダロン内服や植え込み型除細動器(ICD)が適応となる。
心停止蘇生例に対しては、ICD植え込みが適応となる。右室と左室が同期して収縮していない例や、心電図上QRS幅が広い例では、心室再同期療法のペースメーカ植え込みが適応となる場合がある。
内科的治療に反応しない場合には、心臓移植の適応となる。その前に状態悪化が予想される時は、人工心臓の植え込みが適応となる場合がある。心臓移植手術そのものの死亡率は高く、術後の死亡率も高い。
肝硬変例では、肝がん発見のための定期的スクリーニングが必要である。肝がんに対しては、コイル塞栓術や抗がん剤動注などがなされる。

予後

 予後は不良である。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児循環器学会
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