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大動脈縮窄複合

だいどうみゃくしゅくさくふくごう

Coarctation complex

告示番 号60
疾病名大動脈縮窄複合
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概念・定義

 大動脈縮窄は大動脈峡部と下行大動脈の移行部、すなわち大動脈への動脈管接続部に生じた狭窄。大動脈峡部の低形成も合併していることが多い。大動脈縮窄と心室中隔欠損を合併する先天性心疾患。生後まもなくは動脈管が開存しているが、閉鎖すると、ショック状態になる。肺血流が増加して、新生児期から高度の心不全となる。新生児期からの治療が必要な重症心疾患。

病因

 胎生期に上行大動脈への血流が減少すると、その結果大動脈峡部の血流が少なくなり、大動脈峡部が細くなる。さらに血流が少なければ、大動脈弓も低形成になる。大きい心室中隔欠損を合併して、出生後も動脈管が収縮せずに太く開存する場合、大動脈峡部全体が低形成となり、本症の形態異常、血行動態の異常が発症する。本症の心室中隔欠損は通常、円錐中隔(流出路中隔)の後方への偏位により筋性中隔との接合の異常(ズレ)によって発生し、上行大動脈への血流の減少に関連する

疫学

 大動脈縮窄症として、先天性心疾患の約5%を占めると報告されている。大動脈二尖弁の合併がしばしば認められる。Turner症候群(染色体45X)の約30%に合併する

臨床症状

 動脈管が閉鎖すればショック(ductal shock)となる。新生児期から心不全症状が出現する

診断

[心電図]
主に両室肥大
[胸部エックス線]
心拡大と肺血管陰影の増強が認められる。
[心エコー]
大動脈の縮窄および合併心奇形が描出される。
[心カテーテル、造影検査]
大動脈縮窄、上行大動脈の低形成と心室中隔欠損を認める。
【その他の画像診断】
CTおよびMRIによる検査で大動脈の低形成と縮窄、心室中隔欠損の診断が可能。
 上記検査所見が認められる。確定診断には、心エコー、大動脈造影、CT、MRIで、大動脈縮窄と心室中隔欠損を証明する

治療

 出生後、動脈管が閉鎖すると下半身への血流が途絶え、ショックとなり、無尿、代謝性アシドーシスが進行し、死亡する。生後すぐに内科的治療(抗心不全療法およびプロスタグランジン製剤持続点滴による動脈管開存療法)を行い、早期に外科手術を実施する。早期の外科手術では、大動脈縮窄部を切除して端々吻合し、肺血流の増加を防ぐために肺動脈絞扼術を行う。縮窄部位が広範囲で切除・端々吻合が困難な場合には、鎖骨下動脈を切離したフラップなどを利用して縮窄部を解除する。上記、人工心肺を用いない第一期手術で新生児期の救命を図り、乳児期早期に第二期手術として人工心肺を用いた心内修復術(心室中隔欠損閉鎖および肺動脈絞扼解除)を行う。一期、二期手術を、いっぺんに行う施設もある。術後内科的管理・治療を行い、遠隔期の再狭窄に対して必要に応じてカテーテル治療ないし再手術を実施する。カテーテル治療は術後再狭窄に対する治療として有効である。術後遠隔期の高血圧に対しては、生涯的に降圧療法を行い血管イベントの発症を予防する

予後

 出生後、動脈管が閉鎖すると下半身への血流が途絶え、ショックとなり、無尿、代謝性アシドーシスが進行し、死亡する。内科的管理と手術により予後は劇的に改善されるが、遠隔期の再狭窄、高血圧について生涯的な内科的管理・治療(必要に応じてカテーテル治療ないし再手術)を要する。上行大動脈が高度で上記外科手術が困難な例、術後も心不全が残存する例、遠隔期に高血圧が持続する例は予後不良

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児循環器学会
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