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三心房心

さんしんぼうしん

Cor triatriatum

告示番 号23
疾病名三心房心
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概念・定義

三心房心は、通常は左房性三心房心cor triatriatumを指し、左房が、異常隔壁によって肺静脈の還流する副室accessory chamberと左心耳と僧房弁口を含む固有の左房とに分けられた疾患である。副室と固有左房とは狭い開口部を通じて連絡しているか、副室が右房と直接連絡したり、別の異常な経路を通じて左房と連絡する。
病型分類はLucas-Schmidtのものが一般的であり、IA型(classic type)が最も多く、ついでIB1型が多い。外科治療は診断がついて呼吸状態が安定し次第行うべきで、隔壁の切除が主体である。

病因

肺静脈が左房の背側に取り込まれる際に異常な隔壁を残すと考えた融合異常(malincorporation)説が最も有力である。しかしこれでは説明しにくい症例も存在し、異常中隔形成(malseptation)説や取り込み異常(entrapment)説の方が形態形成を説明しやすい例もある。合併心奇形としてFallot四徴、内臓心房錯位症候群、部分肺静脈還流異常等があげられている

疫学

まれな疾患で、Keithらによれば、先天性心疾患の0.1%、女子医大心研では複雑心奇形に合併したものを除いて、入院患児10000人中13例を数える

臨床症状

臨床症状は主として肺静脈うっ血によるもので、発症のしかたや時期は副室からの流出口の大きさで決まる。多くは6歳頃までに症状が出現するが、流出口の開口面積が1.0㎠以上では年長になるまで症状を示さないことがある。乳児期の発症では多呼吸、呼吸困難、哺乳力低下、易感染性、幼児期以降では労作時の息切れ、易感染性などが主となる。通常はチアノーゼはないが、呼吸不全が進行すると認められることがある

診断

心聴診上は本症に特異的なものはなく、肺高血圧に伴うII音の亢進、肺動脈性の収縮期クリック、胸骨左縁の柔らかい収縮期雑音等である。肺うっ血に伴って、しばしば湿性ラ音が聴かれる。
胸部エックス線像では心拡大はないか、あっても中等度以下であるが、肺うっ血と肺動脈拡大には注意を要する。副室の拡張があると、右側心陰影の二重像や食道造影で通常の左房による圧排よりも高い位置での食道圧排像が認められることがある。心電図は右房右室負荷所見が主である。通常は副室側には心房筋が含まれていないため、左房負荷所見はないはずであるが、実際にはまれにみられる。心エコー図検査は本症の診断に欠かせない検査で、断層エコーで異常隔壁の存在が示され、ドプラ、カラードプラ法を併用すると副室からの流出口の位置や狭窄の程度の診断がより正確になる。心臓カテーテル検査では症状のある例では肺動脈楔入圧の高値と肺動脈圧の上昇をみる。心血管造影では肺動脈造影、または副室にカテーテルが挿入できれば直接の造影で異常隔壁の存在を確認するが、肺動脈への短時間の容量負荷は、総肺静脈還流異常の場合と同様に肺うっ血を悪化させる危険性がある。心エコー図検査で診断が確定できない場合か肺静脈の還流部位が確認できない場合等に、できるだけ造影剤を少なくして肺動脈分枝での造影にとどめるようにする。最近では通常の心エコー図検査で確定できないときは経食道心エコー、三次元CT、超高速CT、MRI等を用いて診断した報告も多い。これらの非侵襲的検査で診断上の疑問がない場合は、侵襲的検査はせずに外科治療を行うことも多くなってきた

治療

内科的治療は、積極的な呼吸管理と肺うっ血の治療で、利尿剤を中心に管理する。心拍出量を増す薬剤、肺動脈を拡張して肺うっ血を助長する薬剤は禁忌である。外科治療は診断がついて呼吸状態が安定し次第行うべきで、隔壁の切除が主体である。各病型ごとに到達法を検討して隔壁切除に適した視野を得られるように方針を確立することが重要である

予後

乳児期発症の重症例でも術前状態の悪さに比較して術後の経過は良好なことが多い

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児循環器学会
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