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エプスタイン(Ebstein)病

えぷすたいんびょう

Ebstein’s anomaly

告示番 号3
疾病名エプスタイン病
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概念・定義

エプスタイン病は、三尖弁と右室流入部の奇形で、三尖弁が変形し、かつ右室内にずれて起始し、その部分の右室心筋の形成不全を伴う先天性心疾患である。このため、右室機能不全と三尖弁機能不全が必発で、三尖弁狭窄や閉鎖不全を種々の程度に認める。

発生・病因

三尖弁は右室心筋内層より底掘れ(undermining)という行程により形成される。前尖が早期より形成され、後尖・中隔尖は遅れて完成する。
エプスタイン病は、このunderminingが何らかの原因で阻害されたために起こる症候群である。underminingが弁輪まで届かないことにより、弁尖(主に中隔尖・後尖)は壁に貼りつく(plaster)ようになり、機能のある弁尖が右室内にずれ落ちて起始するようになる。また弁尖の貼りついた右室部分は右房化右室と呼ばれ、壁が極めて薄くなる(Uhl化)。

疫学

全先天性心疾患の0.5%程度と比較的まれな疾患であるとされているが、心エコー検査の普及により、その頻度は従来の報告より多いであろうと考えられている。
男女差は認めず、家族例も報告されている。

臨床症状

三尖弁における流入障害と逆流の程度および右室の機能と構造により、臨床像は様々である。
胎児期に診断されるものは、胎児超音波検査で右心系拡大の所見で見つかることが多い。
新生児期に見つかるものは、チアノーゼで気付かれることが多い。
乳児期に症状が出現する場合は、高度の三尖弁閉鎖不全による心不全であることが多く、また無症状であるが心雑音に気付かれて診断に至ることも少なくない。
学童期では、学校検診などで心雑音に気付かれるか、副伝導路(WPW)症候群の精査で診断に至るか、である。
成人期以降では、不整脈が主要な症状となる。

診断

治療

自然歴をたどっている症例も多く、日常生活の管理指導も重要である。中等度の運動までは多くの症例が可能であるが、症状が出た時にすぐ止める本人の勇気と、周囲の子どもの理解を作ることも必要である。
抜歯や細菌感染時の際の抗生物質の使用は、脳膿瘍、感染性心内膜炎予防のために重要である。
外科治療の選択肢は、血行動態により様々である。
①右心系で肺循環を維持できないもの
出生時よりチアノーゼを呈し、肺循環が動脈管に依存するためプロスタグランジン製剤を投与し動脈管の開存を維持する。体肺動脈短絡術を施行し、Fontan循環への移行を考慮する。
②チアノーゼを生じるが肺循環は保たれるもの
生後肺血管抵抗が低下するにつれて、右室から肺への血流は増加し、心房間の右左短絡は減少する。チアノーゼが残存する場合、中心静脈圧の上昇とのバランスを十分に検討しながら、心房間を閉鎖することを考慮する。
③三尖弁閉鎖不全を主症状とするもの
弁逆流が高度で心不全を呈する場合には、弁形成術や弁置換術が考慮される。

なお、不整脈に対しては、薬物治療やカテーテルアブレーションが施行される。

予後

胎児期に心拡大で診断に至る症例の予後は悪い。
乳児期から小児期に診断される症例は、新生児期までに見つかる症例に比較すると予後はよい。無症状である症例の10年生存率は85%という報告もある。
思春期から成人期で診断される症例の予後は悪くなく、不整脈の管理が重要となる。
無症状で経過した場合に、診断されずに一生を終える症例も存在する。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児循環器学会
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