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ファロー(Fallot)四徴症

ふぁろーしちょうしょう

Tetralogy of Fallot

告示番 号88
疾病名ファロー四徴症
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概要

ファロー四徴症(tetralogy of Fallot)の四徴とは、①心室中隔欠損(VSD)、②肺動脈狭窄(PS)、③大動脈騎乗、④右室肥大を指す。発生学的には心室中隔の漏斗部という肺動脈に近い部分の中隔が前方(右室側)に偏位することによりVSDとPS(正確に言うと右室の流出路狭窄)が引き起こされる。両大血管右室起始との違いは、本症では僧帽弁と大動脈弁は線維性に連続している点である。肺動脈狭窄の程度により幅広い臨床像を示すが、不安定かつ進行性低酸素血症を特徴とする。最重症型として肺動脈閉鎖(極型ファロー四徴症)がある。外科治療なしでは生命予後は1年生存率は75%、3年生存率は60%、10年生存率は30%と言われる。死亡原因としては低酸素発作、脳梗塞、脳膿瘍で、年長児では心不全、腎不全などである。一般に手術例の長期予後は良好で術後30年の生存率は98%と報告されている。しかし、それ以降には、肺動脈弁閉鎖不全や右心機能不全で、再手術が必要になったり、心不全になったりする可能性がある。

疫学

頻度は全先天性心疾患の5~10% でチアノーゼ性心疾患の60~70% と最も多い。染色体22q11.2欠失症候群の合併が多い(15~21%)。 その他18トリソミー、13トリソミー,21トリソミー 、CHARGE 症候群、VATER連合などで本症の合併がみられる。

症状

チアノーゼ:
ファロー四徴症の基本病態である右室流出路狭窄には種々の程度があり、これによりチアノーゼの症度も異なる。チアノーゼの発症時期は、 1/3は生後1か月以内に、1/3は1ヶ月から1年で、1/3はそれ以降もチアノーゼを来さないために通常のVSD(+PS)としてフォローされる(ピンクファロー)。重症なファロー四徴症は肺動脈が低形成なため肺血流は動脈管に依存することが多い。チアノーゼが6ヶ月以上続くとバチ状指を呈する。
心雑音:
通常胸骨左縁第2-3肋間に最強点を有する駆出性収縮期雑音で、Ⅱ音は単一で亢進している。この心雑音は右室流出路狭窄(肺動脈狭窄:PS)に由来するものである。
低酸素発作:
ファロー四徴症の低酸素発作(spell)では強いチアノーゼ,興奮、易刺激性,過呼吸,失神などがみられる。重症だとSpO2は50%以下になる。多くは、生後2~3ヶ月の乳児に発症し、睡眠覚醒後などに、啼泣・排便・脱水・貧血を契機に不機嫌となり、チアノーゼの増強と多呼吸、心雑音減弱、アシドーシスなどをきたす。持続すると生命の危機がある。低酸素発作時に聴診すると,右室流出路を介しての血流が減少するため,しばしば心雑音が消失ないし非常に短く聞かれる。

診断

【心エコー図】
五腔断面で心室中隔欠損VSDとともに大動脈が両心室にまたがる形で観察される。左室長軸像でも大動脈騎乗が観察される。心室中隔の延長上に大動脈弁があり、大動脈の下半分は左室から上半分は右室から出る。右室流出路では大きなVSD(多くは三尖弁直下の膜様部欠損)と漏斗部中隔の前方偏位のため右室流出路の狭小化が観察される。肺動脈も大動脈に比して細く弁性狭窄を伴うことも多い。
【胸部X線】
心陰影は正常かやや小さい。左第2弓陥凹(肺動脈主幹部低形成)と心尖部挙上により木靴型となる。右大動脈弓が25%に認められる。肺血管影は減少する。正側面で胸腺陰影が欠如していれば 22q11.2欠失症候群を疑う。
【心電図 】
右軸偏位、右室肥大を認める。
【心臓カテーテル・造影所見】
収縮期右室圧は、左室・大動脈圧と等しい。肺動脈圧は正常ないしより低圧。右室造影で肺動脈と大動脈が同時に造影されるのが特徴である。特に肺動脈指数(PA index:左右肺動脈の断面積の和/体表面積)は心内修復術の可能性をみる際に重要である。左室造影で大動脈が造影され冠動脈異常の有無や頸部血管の分岐を観察する。また、動脈管開存や卵円孔開存なども確認する。
【心臓血管CT】
Multiditecter row CTでは3D画像が構築でき、心臓カテーテルによる圧測定や短絡率以外の形態的なデータはすべて得られる。特に気管や気管支と大血管との位置関係も分かり、ファロー四徴症に肺動脈弁欠損を合併する病態では拡張した左右の肺動脈による気管支の圧迫も観察できる利点がある。

治療

【内科的治療】
肺血流が動脈管依存性ならプロスタグランジンE1:PGE-1を使用する (肺動脈閉鎖合併例が多い)これは短絡術(Blalock-Taussig shunt)までのつなぎの意味を持つ。鎖骨下動脈と左右肺動脈を人工血管で吻合することが多く、modified BT shuntと呼ぶ。
低酸素発作に留意し、発生時には酸素投与、アシドーシス補正、鎮静、β遮断薬などを使用する。
【外科的治療】
1. 姑息術
新生児期、乳児期にチアノーゼが強い状態や、プロスタグランジン使用例では姑息術が必要となることがある。人工心肺は使用せずに、心臓拍動下での手術が可能である。BBlalock-Taussig shuntは鎖骨下動脈と左または右の肺動脈へのバイパス術である。肺動脈径が細い場合にも、肺動脈血流を増やして心内修復術が可能な状態まで肺動脈を育てる。
2. 心内修復術
チアノーゼをなくすための手術で、これによりチアノーゼや心不全が解消される。右室流出路形成術と心室中隔閉鎖術からなる。右室流出路形成術はパッチによる拡大と漏斗部筋肉切除術を行うが、肺動脈弁輪径が小さい場合には右室流出路から肺動脈までを切開して拡張する手術になる。手術時期は施設による(3カ月~1歳)が概ね、体重6‐8㎏ぐらいで実施されることが多い。

予後

外科治療なしでは生命予後は1年生存率は75%、3年生存率は60%、10年生存率は30%と言われる。死亡原因としては低酸素発作、脳梗塞、脳膿瘍で、年長児では心不全、腎不全などである。
一般に手術例の長期予後は良好で術後30年の生存率は98%と報告されている。しかし、それ以降には、肺動脈弁閉鎖不全や右心機能不全で、再手術が必要になったり、心不全になったりする可能性がある。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児循環器学会
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