35

左心低形成症候群

さしんていけいせいしょうこうぐん

Hypoplastic left heart syndrome

告示番 号22
疾病名左心低形成症候群
診断手引き、医療意見書等のダウンロードはこちら

概要

左心房、左心室、上行大動脈、大動脈弓にいたる左心系の低形成と、僧帽弁、大動脈弁の低形成、狭窄、ないし閉鎖をともなう疾患。生後は、血行動態上、動脈管開存と心房間交通が生命維持に不可欠である。生後、チアノーゼ、高度心不全をともなう。手術によっても右室を体心室としたFontan手術でしか修復できないため予後不良の疾患である。頻度は先天性心疾患の1.4~3.8%で、積極的治療をしない場合、大半は1か月以内に死亡する。冠血流を含め、体血流が動脈管に依存していることから動脈管の閉鎖はしばしば致命的となる。プロスタグランジンE1によりductal shock を予防することが必要であり、これにより姑息手術まで患児を良好な状態に保てる可能性がある。手術は新生児期にNorwood手術(+Blalock-Taussig短絡術または右室—肺動脈短絡術)を施行することもあるし、両側肺動脈絞扼術+動脈管開存をプロスタグランジンE1で維持、または両側肺動脈絞扼術+動脈管にステント留置を施行する。乳児期に両方向性Glenn手術、幼児期にフォンタン型手術を施行する。長期予後は不良である。

疫学

全先天性心疾患の1.2~1.5%を占める。染色体異常例も報告されている。大動脈閉鎖+僧帽弁閉鎖の組み合わせが最も多く、以下、大動脈閉鎖+僧帽弁狭窄、大動脈狭窄+僧帽弁狭窄の順である

症状

生後まもなく、チアノーゼ、心不全、ショックなどで発症する。脈拍触知減弱、網状チアノーゼなどの末梢症循環不全、頻脈、肝腫大、呼吸障害などを呈する。聴診上はギャロップ音、非特異的心雑音を呈する。チアノーゼは心房間交通があると目立たず、SpO2は85~95%程度である

診断

【心エコー所見】
診断には心エコーが重要である。
四腔断面にて非常に小さい左室(重度低形成例では左室はスリット状または確認不能)を認める。左室は左後方に存在するが低形成で心尖部に到達しない。通常、心室中隔欠損は伴わない。大動脈弁及び僧帽弁は閉鎖または狭窄していることが本症の基本病態である。 一方、右室と肺動脈は太く、動脈管が閉鎖しない状態では肺動脈は下行大動脈と連結する。卵円孔または心房中隔欠損があることが必須で、左房から右房への短絡が生命維持に不可欠である。四腔断面が特徴的であることから出生前診断も可能である。
【胸部エックス線】
心拡大と肺うっ血を呈する。心房間交通が不良な場合にはスリガラス状で心陰影も小さい。
【心電図】
右室肥大、右房拡大を呈す。
【心臓カテーテル・造影検査】
通常行わないが、必要に応じ逆行性橈骨動脈造影や造影CTなどで大動脈縮窄所見を確認する場合がある。
鑑別診断
出生直後より重篤な心不全呼吸不全を示す疾患を鑑別する。総肺動脈還流異常症、共通肺静脈閉鎖症、三心房心など肺静脈閉塞を示す疾患や先天性大動脈弁狭窄症 (Critical AS)、大動脈弓離断症や大動脈弁狭窄縮窄症を伴う疾患などが対象となるが、心エコーで鑑別できる

治療

【内科的治療】
内科的治療として動脈管開存を確保するため、プロスタグランディンを持続静注する。また、心房間交通が不良の場合はカテーテル治療により心房間交通の拡大を図ることもある。動脈管にステントを留置することもある。
【外科的治療】
手術は新生児期に開心姑息術であるNorwood手術を行う。Norwood手術は大動脈弓の再建と心房間交通の拡大に加え、肺血流確保のため、Blalock-Taussig短絡術または右室—肺動脈短絡術を行う。新生児期に両側肺動脈絞扼術を施行し、新生児期を過ぎてからNorwood手術をする場合もある。乳児期(生後6カ月頃)に両方向性Glenn手術、幼児期(1~2歳)にFontan型手術を施行する

予後

近年手術成績は向上しているが、依然予後不良の疾患である

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児循環器学会
「小児慢性特定疾病の対象疾患について」に戻る