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拡張型心筋症

かくちょうがたしんきんしょう

Dilated cardiomyopathy

告示番 号4
疾病名拡張型心筋症
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概念・定義

 明らかな原因が無く左室、または両心室が拡張し、収縮能が低下して、心不全を呈する疾患。組織上は心筋細胞の変性、線維化を認める。しばしば家族性を呈し、筋原線維や細胞骨格蛋白の遺伝子異常を認めることがある。突然死、うっ血性心不全、不整脈などを呈する。治療は、薬物治療、心室再同期療法、人工心臓の植え込み、心臓移植などである。治療困難で予後不良の疾患である。乳幼児など若年者ほど予後は悪い。

病因

 時に家族性を呈する。このような家系の遺伝形式は常染色体優性遺伝である。30%にミオシン重鎖、ミオシン軽鎖、トロポミオシン、トロポニン、ミオシン結合蛋白C、アクチンなどサルコメアを形成するタンパク質や細胞骨格蛋白遺伝子異常を認める。
遺伝子異常が判明しない場合には、原因は不明といわざるをえない。

疫学

 10万人に37人の発症率である

臨床症状

 易疲労、呼吸困難、体重増加不良など

診断

[理学的所見]
III音の奔馬調律、僧帽弁閉鎖不全による収縮期駆出性雑音を聴取することがある。浮腫、肝腫大など心不全所見を認める。
[胸部エックス線所見]
胸部エックス線で心拡大を認める。
[心電図所見]
左室肥大を認めることがある。ST低下など非特異的所見を認めることがある。
[心エコー所見]
左房、左室の拡大と収縮低下、拡張障害を認める。心室壁の肥厚は認めない。僧帽弁閉鎖不全を認めることがある。
[MRI, CT, 心筋シンチグラフィ]
左房、左室の拡大と収縮低下、拡張障害を認める。心室壁の肥厚は認めない。心筋シンチグラフィで心筋灌流低下を認めることがある。
[心臓カテーテル、心筋生検]
左室の拡大と収縮低下を認める。心筋生検では、心筋の変性、線維化を認める。 [確定診断]
 心エコーで診断する。心臓カテーテル、心筋生検は小児では必須ではない。冠動脈起始異常の鑑別が重要であるが、注意深い心エコー検査で鑑別可能である。鑑別不能の際には、心臓カテーテル、造影検査を行う。代謝性心筋症の確定診断も重要である

治療

1. 日常生活の管理
無症状ならDの管理区分。有症状ならCの管理区分。原則として強い運動は禁止、学校の運動部は禁止。
2. 薬物治療
有症状例には慢性心不全に対する治療をおこなう。
利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬を投与する。β遮断薬(カルベジロールなど)の投与も考慮する。
急性心不全には、利尿薬、フォスフォジエステラーゼIII阻害薬、カテコラミンの点滴をおこなう。
不整脈に対しては、抗不整脈薬を投与する。
 心室性頻拍症に対しては、アミオダロン内服や植え込み型除細動器(ICD)が適応となる。
3.デバイス治療:
心停止蘇生例に対しては、ICD植え込みが適応となる。右室と左室が同期して収縮していない例や、心電図上QRS幅が広い例では、心室再同期療法のペースメーカー植え込みが適応となる場合がある。
4.心臓移植
内科的治療に反応しない場合には、心臓移植の適応となる。その前に状態悪化が予想される時は、人工心臓の植え込みが適応となる場合がある

予後

 予後は不良である。1年生存率は63−90%、5年生存率は20−80%である

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児循環器学会
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