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先天性肺胞蛋白症(遺伝子異常が原因の間質性肺疾患を含む。)

せんてんせいはいほうたんぱくしょう (いでんしいじょうがげんいんのかんしつせいはいしっかんをふくむ。)

Congenital alveolar proteinosis

告示番 号1
疾病名先天性肺胞蛋白症(遺伝子異常が原因の間質性肺疾患を含む。)
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概要

遺伝性間質性肺疾患(Hereditary interstitial lung disease: HILD)は、遺伝子変異が主因となって起こる稀な間質性肺疾患である。胸部X線写真あるいはCT画像上のびまん性間質性陰影と呼吸障害を呈する。家族性間質性肺炎、先天性肺胞蛋白症および小児期発症の間質性肺炎を代表とする遺伝子異常に起因する疾患群であるが、成人になって発症するもの、新生児期から発症するものがある。責任遺伝子が明らかになっていないものも存在する。診断の際には、感染症、先天性心疾患、染色体異常を含む奇形症候群、呼吸器の形態異常、骨系統疾患、神経筋疾患、重症新生児仮死による新生児遷延性肺高血圧症、早産や子宮内炎症に起因する慢性肺疾患などの疾患・病態を除外する。

疫学

HILD がどのくらいの頻度で存在するのかは不明であるが、極めてまれな疾患群である。先天性肺胞蛋白症は肺胞蛋白症の1%程度を占める極めて希な疾患群である。後方視的検討の結果からは、日本における先天性肺胞蛋白症の罹患率は出生10万人あたり0.07-0.09人と推定された。現在、新生児・乳児期発症の遺伝性間質性肺疾患の前方視的サーベイランス事業および診断支援事業を展開中である。

原因

既知の原因としては、サーファクタント蛋白(SP-)B欠損症、SP-C異常症、ATP 結合カセット輸送蛋白 A3(ABCA3)異常症,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)受容体のα鎖およびβ鎖異常症、NKX2.1 遺伝子の異常によるthyroid transcription factor(TTF)-1異常症、FOXF1 遺伝子の異常によるalveolar capillary dysplasia with misalignment of pulmonary veins (ACD/MPV)、ヘルマンスキーパドラック症候群がある。低ガンマグロブリン血症をともなう先天性肺胞蛋白症が報告されているが、責任遺伝子は同定されていない。また、造血系転写因子GATA2の異常のために単球減少、肺胞蛋白症および非結核抗酸菌症をきたすMonoMacと呼ばれる疾患が報告されている。

症状

出生時から呼吸窮迫症状を呈する例、乳児期に発症し急速に呼吸不全に至る例、成人期まで無症状で経過する例など症状の幅が広い。SP-B欠損症は出生時から呼吸窮迫症状を呈する。SP-C異常症およびABCA3異常症は先天性肺胞蛋白症の病態をとる場合と家族性間質性肺炎の病態をとる場合がある。GM-CSF受容体異常症は先天性肺胞蛋白症の原因となるが、その発症時期は乳児期から成人期までの幅がある。TTF-1異常症は甲状腺機能低下を伴うことがある。ACD/MPV は重篤な肺高血圧症を呈する。ヘルマンスキーパドラック症候群はアルビノ症を伴う。II型肺胞上皮細胞に発現する遺伝子の異常が原因で肺サーファクタントの分泌低下がある場合には、出生時に早産児と同様の呼吸窮迫症候群を発症する。

合併症

原因となる遺伝子異常により特有の合併症を示すことがある。責任遺伝子は同定されていないが、一部の先天性肺胞蛋白症は低ガンマグロブリン血症を合併する。MonoMacは非結核性抗酸菌症を合併する。

治療法

治療は既存の間質性肺炎に準じた治療が行われ、各遺伝子変異に応じた治療法の開発は、確立していない。予後については、生後すぐに致死的となるものから肺線維症と類似の慢性の経過をとるものまで様々である。                  

対症療法としては、酸素投与、人工換気が行われる。II型肺胞上皮細胞に発現する遺伝子の異常に起因する疾患(SP−B欠損症、SP-C異常症、ABCA3異常症)に対しては肺移植が有効である。一方、肺胞マクロファージに発現する遺伝子の異常に起因する疾患(GM-CSF受容体異常症、GATA2異常症)に対しては骨髄移植が有効である。SP-C異常症に起因する間質性肺炎の一部に対しては、ステロイド剤あるいはクロロキン製剤が奏効することがある。ABCA3異常症の一部にはステロイド剤、クロロキン製剤およびマクロライド系抗菌薬が奏功することがある。

研究班

H26-委託(難)- 一般-077
肺胞蛋白症、遺伝性間質性肺疾患に関する研究:重症難治化要因とその克服
研究代表者:国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 井上 義一
:バージョン1.0
更新日
:2015年3月18日
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