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気管支喘息

きかんしぜんそく

bronchial asthma

告示番 号5
疾病名気管支喘息
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概念・定義

気管支喘息は、発作性に起こる気道狭窄によって喘鳴や呼気延長、呼吸困難を繰り返す疾患である。これらの臨床症状は自然ないし治療により軽快、消失するが、ごく稀には致死的となる。組織学的には、気道狭窄は、気道平滑筋収縮、気道粘膜浮腫、気道分泌亢進を主な成因とする。基本病態は、慢性の気道炎症と気道過敏性であるが、気道炎症には好酸球、好中球、リンパ球、マスト細胞などの炎症細胞、気道上皮細胞、線維芽細胞、気道平滑筋などの気道構成細胞、および種々の液性因子が関与する。持続する気道炎症は、気道傷害とそれに引き続く気道構造の変化(リモデリング)を惹起して非可逆性の気流制限をもたらし、気道過敏性を亢進させる。

乳児喘息(2歳未満の小児における喘息と定義)の病態における特異性としては、呼吸器系における解剖・生理学的特徴が挙げられる。乳幼児は年長児に比し気道内径が狭く、肺弾性収縮力が低下している。さらに、気管支平滑筋が少なく、粘液分泌腺や杯細胞が過形成を示し、側副換気が少なく、横隔膜が水平に付着して呼吸運動が小さいことなどから呼吸困難が生じやすい。このようなことから、2歳未満では年長児と比較して気道狭窄が強く現れやすく、症状の進行が速いことが特徴である。

疫学

小児喘息の有症率は、小学生低学年13%、中学生9.6%、高校生8.3%である。学校保健で把握されている喘息児童・生徒は5.2%である。重症喘息は1.3〜1.9%と捉えられている。小児の喘息死亡率は人口10万人あたり男女とも0.0〜0.1まで減少し安定した状態にあるが、死亡前の重症度が軽症や中等症でも起こり、要因は多彩であり患者教育が重要である

病因

喘息の発症には特定の遺伝因子と環境因子の両者が相互に作用し合って関与すると考えられる。小児で多く見られるアトピー型喘息では、IgE抗体の関与する気道炎症が主である。小児喘息の病態生理、特に気道炎症については客観的指標が得られにくいため、病態生理には不明な点が多い

症状

典型的な喘息発作の症状・所見は、喘鳴や咳嗽、および呼気延長を伴う呼吸困難である。喘息発作時は呼気性呼吸困難が主体であるが、症状が進むと吸気性呼吸困難も合併してくる。このような症状が、運動や呼吸器感染症、ハウスダストなどのアレルゲンの吸入、気候の変動により反復すれば、症候学的に喘息の診断をすることは比較的容易である。
喘息で見られる喘鳴は、下気道由来の呼気性の高調性喘鳴(wheeze)が特徴的である。呼吸困難は、通常、自覚症状で定義されるが、乳幼児では自覚症状を表現することができないため、不快感あるいは苦痛を推測させる他覚所見を認めるものを含める。
発作強度は、呼吸状態と生活状態の障害程度によって判定され、小、中、大発作と呼吸不全の4段階に分類される。呼吸状態は、喘鳴の程度、陥没呼吸の程度、起坐呼吸やチアノーゼの有無、呼吸数などの項目の把握によって行われ、生活状態は、動作、会話、食欲、睡眠などの障害程度を判断する。パルスオキシメーターによる酸素飽和度(SpO2)やピークフローメーターによる最大呼気流量(PEF)は、発作程度の判定指標として参考になる。
喘息の重症度は、主に発作の程度と頻度をもとにして判定される。治療開始前の重症度は、間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型と分類し、症状を中心にした「見かけ上の重症度」と治療ステップを考慮した重症度を「真の重症度」と定義する

治療

気管支喘息の治療は、基本病態である気道炎症の抑制と気流制限の軽減に向けられ、無症状状態の早期実現、長期維持により、呼吸機能や気道過敏性の改善、QOLの向上を図り、最終的には寛解・治癒を目指すという長期管理の目標を達成することである。喘息の長期管理は、薬物療法のみで構成されるものではなく、環境整備や教育・啓発活動と一体で勧められる。

1)急性発作への対応
急性発作時には種々程度の呼吸困難を生じ、呼吸不全に至る可能性もあるため、早期からの適切な治療で速やかに治める必要がある。家庭での対応には、早期からの治療介入による発作のさらなる増悪防止、適切なタイミングでの医療機関受診の判断が含まれる。特に2 歳未満では、症状の進行が年長児に比して速い傾向があり、脱水にもなりやすく、より早期の対応が重要である。医療機関では、発作強度や合併症の把握、さらに他疾患の鑑別も行いつつ治療する。

(1) 家庭での対応
「強い喘息発作のサイン」が認められた場合には、直ちに医療機関を受診する。著明な呼吸困難や意識レベルの変化(意識低下あるいは興奮)がある場合には、救急車を要請する。吸入β2刺激薬がある場合には、医療機関までの道中で20〜30分毎に3回まで吸入してもよい。
「強い喘息発作のサイン」がない場合には、頓用のβ2刺激薬(吸入あるいは内服)を行い、吸入であれば15分後に、内服であれば30分後に、その効果を評価する。
(2) 医療機関での対応
発作強度の判定は主に喘鳴、陥没呼吸などの呼吸状態と生活状態の障害の度合いによってなされるが、客観的指標として呼吸数、心拍数、SpO2、簡易ピークフローメーターによるピークフロー(PEF)値が挙げられる。これら指標を積極的に活用することで、より適切な発作強度の判断、治療による改善の評価に結び付けるよう心がける。中発作までであれば外来で治療を始めるが、大発作以上では迅速に入院治療を行う必要がある。
発作強度に合わせて、β刺激薬吸入、反復吸入、酸素吸入、ステロイド薬全身投与、アミノフィリン点滴静注と持続点滴、イソプロテレノール持続吸入療法を行い、呼吸不全に陥れば人工呼吸管理を考慮する。

2)長期管理における薬物療法
長期管理では、喘息増悪因子を減らすための環境整備と薬物療法を適宜組み合わせて気道炎症の抑制を図り、症状のコントロールや呼吸機能の正常化を積極的に目指すことが重要である。
有症状時に発作治療薬(レリーバー)を適宜使用し早期に症状の軽減を図る必要があるが、長期管理では症状発現を予防するための長期管理薬(コントローラー)の継続使用が重要である。長期管理薬としては炎症抑制作用を有する薬剤(吸入ステロイド薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、クロモグリク酸ナトリウム)が主に用いられ、補助的にテオフィリン徐放製剤や長時間作用性β2刺激薬などが併用される。薬物療法の開始にあたっては、喘息重症度に対応する治療ステップの基本治療薬を中心に早期に治療目標の達成を図る。定期的にコントロール状態を評価するとともにアドヒアランス向上を図り、良好な状態を維持するために必要な薬物療法を継続する

予後

小児の喘息は治りやすいとされていたが、年代とともに、小学1〜6年生にかけて減少していた有症率は近年ではむしろ増加の傾向にあるとする報告が多い。海外では、いくつかの長期予後調査が実施されているが、米国での出生コホート研究では、6歳未満の乳幼児期に喘鳴の既往のある群の60%は6歳の時点で喘鳴がなくなっている。6歳の時点で喘息と診断されている群では、22歳の時点での喘息有病率は57〜72%と高率である

参考文献

日本小児アレルギー学会. 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012. In: 濱崎雄平, 河野陽一, 海老澤元宏, 近藤直実・監修, 東京: 協和企画; 2012

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
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